見出し画像

デザイナーのコミュニケーションコスト

わたしたちが仕事をする時、他者とのやり取りによって案件は進行するため、必ずコミュニケーションが生まれます。コミュニケーションが生まれると、そこにコストが発生します。「コミュニケーションコスト」とは、認識を一致させるために費やす時間のことです。

物事の認識を一致させる時間は人それぞれ差があります。そのため、相手によっては伝え方を変えたり、伝える内容を増やしたりすることが必要となります。仕事でもプライベートでも、自分が話していることを相手が理解するのに時間がかかったり、相手が話していることを、自分がすぐに理解できなかったりすることはありますよね。

たとえば、ディレクターと2人のデザイナーの関係に例えてみます。ディレクターがこれからつくるデザインについて、デザイナーとブレストをしているとき、「○○のような広告のビジュアルっていいよね」と、過去に存在した広告を例に挙げて、2人のデザイナーそれぞれに説明したとします。

デザイナーAさんは、日頃から色々な広告やデザインを見ているため、ディレクターが何の広告を例に挙げて話しているか、すぐに理解できます。反面デザイナーBさんは、あまり他の広告の知識を持っていないため、ディレクターはまず、例に挙げている広告は何なのかを、1から説明をしなければなりません。

このように、ディレクターがデザイナーのAさん、Bさんへ説明のためにかける時間はそれぞれ異なるため、相手の理解度によっては、認識を一致させるために時間(コスト)を要します。実質的なお金がかかるわけではないのですが、意思疎通をするための時間がかかれば、仕事の効率にも影響が出ます。ディレクターがかかえるデザイナーが多いほど、コミュニケーションコストは増えていくことも考えられます。

そのため、デザイナーを育成するためには、案件を経験させるだけでなく、普段からデザインに関するアンテナの張り方、ブレストにおけるコミュニケーションなどのさまざまなポイントで、理解度が高くなるように導くことがコミュニケーションコストを下げることにも繋がります。デザインの良し悪しを判断するだけでなく、チームのコミュニケーションコストを下げて、生産性を高めることもディレクターにとっては重要な仕事のひとつです。

もちろん、新人のデザイナーを育成する場合は、きちんと案件や状況を説明して物事を理解させなければならないので、そのコストは必要不可欠となります。


ディレクターが施策を考える

コミュニケーションコストを下げる手段として、デザイナー自身が日頃からデザインの知識を深めることは重要なのですが、チームで計画的にデザインの勉強会をすることも効果的な施策のひとつです。

すでに発表されている広告やデザインを例にして、ビジュアルのつくり方やタイトルのフォントの使い方、色使い、企画に対するレイアウト、プロモーションの展開などについて。またはネットや街中で目についたさまざまなデザインについて、自分が何がいいと思ったか、自由に意見交換をディレクターとデザイナーで行なったり、自分がいいと思った理由をわかりやすく説明したりすることは、意見を相手に伝えるための訓練にもなります。

勉強会のために仕事以外のデザインをさせると、デザイナーの通常業務に負担になることもあるため、定期的な実施は少し難しいのですが、このようなミーティングや勉強会は意外と気軽に参加できます。複数のデザイナーがいる場合は、1回の勉強会で、1人のスピーカーが話す仕組みをとり、ローテーションを組むこともできます。発表されたサンプルのデザインについて、その後チームでディスカッションすることなども、個人の興味喚起にも繋がります。

それぞれの会社や組織によって内容はローカライズできますし、定期的にローテーションを組んで実施すれば、さまざまな角度からさまざまなデザインに着目できます。自分だけで勉強するのではなく、他者と共に行うことで情報量が増え、人による解釈の違いを知ることで、視点が複眼的になり理解力が上がります。

ここまでご紹介したのは育成に関するひとつの例ですが、コミュニケーションコストを下げるために、いきなり難しいことをするのではなく、まずはチームとして、デザインへのリテラシーを上げることがベースとなります。

そして、デザイナーに能力向上を求めるだけではなく、ディレクターも自身のデザイン力やクリエイティブの知識、コミュニケーション力を高めなければマネジメントは難しいですし、会社・組織・チーム全体としてデザイナーの育成を考えて実施することが大切ですね。

お互いが成長していけばクリエイティブ力は大幅にアップできますし、デザイン・コミュニケーション共に成長できるチームになれます。


デザイナーの育成についての情報を発信します。
たき工房には115人のデザイナーが在籍しており、日々さまざまな仕事で自己研鑽をしています。また、キャリアと適性に応じた研修・育成制度が、個々の能力向上に活用されています。
デザインには、一気に上手くなるような一発必中の魔法はありません。繰り返し反復することにより、少しずつ、デザインクオリティが上がっていきます。
このコラムでは、たき工房のデザイナーたちがどんな方法でスキルアップをしているのかをご紹介しますのでご覧いただければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?