風の音に、いんすたはじめ、子が騒ぐ
僕が普段使う最寄駅は香椎という駅だ。
名前だけなら松本清張の『点と線』の舞台になった駅で有名かもしれない。
去年はどうだったかもう忘れてしまったけど、今この駅には至る所に風鈴が吊るしてある。
線路の上を通る各ホームへ続く通路の中を、走る風に揺らされて涼しげな音を響かせている。
その音を聴きながら毎日通勤している。
七夕の頃からあった気がするけど、まじまじと近づいて見たのは初めてだった。
「いんすた はじめました」
だそうだ。
まさか宣伝だったとは……。
多分、多分だけど、この大人が利き手じゃない方の手で書いて真似たような、こども文字まで再現しているトコロが作為的なんだけど可愛らしくて嫌いになれない。
いや、本当に子どもに書かせていたのならごめんなさい。
そうそう、子供といえば今日同じ香椎のホームに電車が入ってきたときに、大喜びして大興奮する男の子がいた。
ときどきこういう子どもは目にするけど、彼の大興奮具合は良かった。
「ついにオレは憧れに電車に乗る!最高の気分だぜ!今日は俺の日だ!」と言わんばかりのエキサイティングぶりだった。
こんな風に物事に興奮や感動出来なくなったのはいつ頃かなぁと思いつつも、いま自分が何かに感想を覚えたときは、外ではなく心の内側に同じ熱量を向かわせているだけかもしれないな、とも思った。
映画やドラマを見ては相変わらず興奮したり、喜怒哀楽に塗れたり、一応大人と言われる歳だけど割とそんな感動に塗れている。
そして心にチャージした感動はYouTubeやここnoteで吐き出す。
そう考えたら、自分もあの電車に興奮した彼とそう大差ない気がした。
だけど、彼に出くわさなければこれは考えなかったことだ。
子どもはいつも偉大だと思わされる。
てなワケなんで、今から良いマインドで仕事に迎えそうです。