ダッヂ丼平

https://twitter.com/d_yosoji_man/ 趣味:カフェ巡り

ダッヂ丼平

https://twitter.com/d_yosoji_man/ 趣味:カフェ巡り

最近の記事

「宗教2世」は“信教の自由“を侵害されているのか?

はじめに 2024年6月19日に共同通信が伝えたところによると、安倍晋三元首相銃撃事件で起訴された山上徹也被告は、検察側が請求した精神鑑定で「完全責任能力」があることが認められたといいます。記事は、山上被告の弁護人たちが鑑定結果を踏まえ、被告の当時の精神状態を争わない方針であることも同時に報じました。 このニュースがSNSに広まった日、X(元Twitter)上で毎日新聞カルト・宗教問題取材班のアカウントは、記事を紹介するリンクに次のようなコメントを付して投稿しました。「責

    • 毒親ブームと「宗教2世」問題

      はじめに 20世紀のイギリスを代表する宗教社会学者ブライアン・ウィルソンは、1997年に来日した際、東洋哲学研究所が開催したセミナーで世界中の新宗教が共通して直面する課題について講演した。この講演の中で列挙された問題の大半は、新宗教が社会から受けるさまざまな攻撃と関連している。いうなればこの講演録は、一般社会の敵意と偏見が引き金となって新宗教に降りかかる困難を詳細にリストアップしたものだ[ウィルソン1998]。 このリストに挙げられているものの中で、特筆すべきなのはマスメ

      • 自認か、糾弾か〜アダルトチルドレン論と毒親論の距離〜

        はじめに 20世紀が終わりを迎えようとしていた頃の日本で、アダルトチルドレンブームなるものがあったことを覚えている人もいるだろう。ジャーナリストの西山明が書いた『アダルト・チルドレン』というルポが1995年に出版されたのを皮切りに、続々とアダルトチルドレンという言葉を冠した本が刊行され、いくつかはベストセラーとなり、話題を集めていた。 アダルトチルドレン(以下、AC)とは、機能不全家族で育ったために成人しても様々な精神的な困難を抱え、生きづらさに悩む大人のことを指す。折し

        • 政教問題への「とほほ」なアプローチのすすめ〜島薗進論考「統一教会と現代日本の政教関係」を読む〜

          本稿の目的は、日本を代表する宗教学者である島薗進氏が「統一教会と現代日本の政教関係——公共空間を脅かす政教のもたれ合いと宗教右派」という論文で展開した議論について、氏の個人史的な文脈を考慮にいれて検証することにある。 2024年1月に出版された『自壊する「日本」の構造』という本に収められたこの51頁の論文は、過去1年半にわたって島薗氏がおこなってきた言論活動のエッセンスが詰まったものとなっている。そこで、この論考の検討をはじめる前に、まず島薗氏の近年の活動について簡単に触れ

          僕の宗教体験

          このnoteを投稿してから1年がたった。 この記事は、創価学会の「政治参加」について研究している浅山太一さんが荻上チキ編著『宗教2世』の問題点を論じた下掲のnoteと、それに対するチキラボの応答文を踏まえて書いたものだ。確認したところ、浅山さんの記事の公開が2023年1月14日、チキラボのレスポンスが1月21日だった。 だから書くことを思い立ってから2週間ほどでアップしたことになるのだが、今読み返しても訂正したいところは特に見つからない。むしろ日本社会の状況は、このnot

          僕の宗教体験

          「サバイバー」の起源をめぐる1972年発祥説の検討

          はじめに 「サバイバー(survivor)」とは、「生存者」とか「生き残った人」を意味する英語の名詞です。しかし現在ではこの言葉は、特にトラウマ(心的外傷)という概念と結びつけて使用される場合、単に致死的な状況から生きのびた人をさすだけでなく、より広い意味を持つようになっています。 こうした文脈ではサバイバーは、性暴力・児童虐待・事故・自然災害などの様々な要因によってトラウマを負い、それに苦しみながらもなんとか生きのびている当事者たちによる名乗りの言葉として用いられます。

          「サバイバー」の起源をめぐる1972年発祥説の検討

          【続報】カルシウム不足=イライラ説の起源についての継続調査

          皆さん、カルシウムとってますか。私は乾きものはアーモンドカルをよく食べます。 さて、以前私はカルシウム不足がイライラの原因となるという俗説の起源についてリサーチし、2つのnoteに分割して調査の報告をしました。「イライラの原因はカルシウム不足という説の起源」という記事と「川島四郎とフードファディズム」という記事がそうです。 前編にあたる「イライラ説の起源」の記事では、まずTBSテレビで2018年9月25日に放送された『この差って何ですか』という番組で紹介された説を紹介し、

          【続報】カルシウム不足=イライラ説の起源についての継続調査

          子どものしつけとエウテュプロン問題

          はじめに聞いたところでは、北海道大学の櫻井義秀教授が率いるチームがエホバの証人の信者を親に持つ人たちを対象に、2023年の8月から9月にかけて面接調査をおこなったようだ。調査への協力者を募集していたSNSアカウントによれば、「宗教2世問題」が発生した社会的・家族的背景を把握し、学問的に検討をするのが目的とのこと。 1970年に日本全国で約1万人の信者がいたエホバの証人は、それから25年間でその数を約20倍にする。去年からマスコミやメディアでこの宗教団体の2世として体験を語っ

          子どものしつけとエウテュプロン問題

          宗教問題に取り組むにあたって隔離型という教団類型を使わないほうがいい理由

          はじめに 令和5年6月11日、東京大学の島薗進名誉教授に引用リプライをいただいた。 筆者は昨今の報道・言論状況における特定宗教団体への過剰な攻撃を憂い、ダッヂ丼平という筆名でnoteにいくつかの文章を公表している。とくに個人的な利益があるわけではない活動をおこなう動機と背景は、母親がエホバの証人の信者だった家庭に生まれ、自分自身も高校生の時期までその宗教コミュニティに所属していたということが半分、自由で民主的な社会に価値をおく自由主義者であるからが半分といったところだ。

          宗教問題に取り組むにあたって隔離型という教団類型を使わないほうがいい理由

          「他者の不合理性」を語ることの無意味さ〜櫻井義秀氏の論考に寄せて〜

          はじめに 『月刊住職』という雑誌がある。「宗派を超えた寺院住職実務情報誌」という、いわば仏の道のプロ向けの月刊誌である。仏教界の話題に限定せず、ひろく宗教に関係した記事も掲載するこの雑誌に、北海道大学大学院の櫻井義秀教授は「現代日本の宗教最前線」というタイトルの連載を持っている。連載7回目となる2023年4月号では「キリスト教信者が増えぬ日本でなぜ新宗教が教勢拡大できたか」と題し、旧統一教会とエホバの証人という2つのキリスト教系新宗教の布教戦略を比較して論じた。 筆者は母

          「他者の不合理性」を語ることの無意味さ〜櫻井義秀氏の論考に寄せて〜

          ジェンダーと「宗教2世問題」〜エホバの証人の例を中心に〜

          2022年11月24日の朝日新聞に掲載された「新興宗教と女性」と題した時評で、東京大学大学院の林香里教授はこの年の夏から注目されだした「宗教2世問題」にジェンダーの視点をとりいれて論じた。宗教2世をテーマにした菊池真理子さんのマンガを読んだ林さんは、まず次のようなことに気づく。 「それは、ほとんどの場合、母親が信仰を主導し、子どもたちに強引に活動に参加させていることだ。父親はいないか、見て見ぬふりをするか、アルコール依存症の者もいた。」 そしてこう続ける。「統計的な把握は難し

          ジェンダーと「宗教2世問題」〜エホバの証人の例を中心に〜

          子どもの権利をまもるために〜荻上チキ編著『宗教2世』の問題点〜

          このnoteでは荻上チキ編著『宗教2世』の問題点をいくつか指摘していく。 しかし本稿はその内容を批判すること自体を目的としていない。 目標とするのはこの本が映しだしている現下の社会的風潮から、このさき起こりうると予想できる事態に警鐘をならすことにある。 僕は母親がエホバの証人の信者だった家庭でそだったアラフォー男性である。 だが25年以上まえの高校生のときからその宗教コミュニティからは離れている。 これはこのnoteを執筆するおおきな動機のひとつだ。 というのも『宗教2世

          子どもの権利をまもるために〜荻上チキ編著『宗教2世』の問題点〜

          #宇宙植民2世に居住移転の自由を

          父と母の宇宙開発にかける情熱は

          #宇宙植民2世に居住移転の自由を

          国連の良心的兵役拒否のパンフレット和訳

          こんにちは。 散歩の時にキンモクセイのいい香りがする季節になりました。 さて、ロシアではプーチン大統領が兵役拒否者に厳罰を科す刑法改正案を承認したり、お隣の国の韓国では超人気アイドルのBTSのメンバーが順次兵役について再びメンバーが全員揃うのは2025年頃になりそうだとか、兵役という社会制度について世界にはバラエティに富んだ法と慣習があることが伝わってくるニュースを見聞きする昨今ですが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。 国防の一端を担うという大切な義務を果たすのは確かに

          国連の良心的兵役拒否のパンフレット和訳

          川島四郎とフードファディズム

          前回の記事では川島四郎という日本陸軍で軍用糧食の研究をしていた職業軍人の栄養学者が、戦後の1971年前後に小谷正一という当時マスコミに太いパイプを持っていた人物との偶然の出会いによって新聞やテレビなどで発言する機会を得て、その時にしゃべった根拠の曖昧な主張が日本人にカルシウム不足がイライラの原因になるという迷信を植え付けたのだ、という経緯をご説明しました。まだ下のリンク先の記事を読んでいない方は是非ご一読をいただければ幸いです。 1972年以後の川島四郎の活躍1972年の毎

          川島四郎とフードファディズム

          イライラの原因はカルシウム不足という説の起源

          この記事をお読みになっているあなたが日本で生まれ育った方ならば、人生で一度は「なにイライラしてんだよ、カルシウム足りてねぇんじゃねえの?」に類する台詞を目にしたことがあるのではないでしょうか。私が最初にイライラとカルシウム不足を結びつける説を知ったのはこの記事の見出し画像にもしているこち亀の81巻105〜123頁に収録されている797話「怒りの心にカルシウム!?の巻」でした。この回のお話は自分の怒りっぽさを反省した両さんがカルシウムをたくさん摂取して怒らないように気をつけるけ

          イライラの原因はカルシウム不足という説の起源