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「振り返り」の価値について考える

 新学習指導要領で「振り返り」という言葉が多く登場するようになりましたが、「学びを深めるための振り返りとは何か?」という疑問をもっていました。自治体によって「振り返り」を毎時間授業の終末に行うことが義務づけられているようですが、正直言ってそのような方法に疑問をもっています(実際に、以前私が子どもにそのような振り返りをさせていて思っていたことです)。今回は、振り返りについて自分なりに考えていることを述べていきます。


1 新学習指導要領における「振り返り」とは?

 「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説:算数編」を読むと、以下の文章の中に、「振り返り」という言葉が含まれています。

③算数科の学びの過程としての数学的活動の充実より(P8)
 「日常生活や社会の事象を数理的に捉え、数学的に表現・処理し、問題を解決し、解決過程を振り返り得られた結果の意味を考察する、という問題解決の過程」
「数学の事象について統合的・発展的に捉えて新たな問題を設定し、数学的に処理し、問題を解決し、解決過程を振り返って概念を形成したり体系化したりする、という問題解決の過程」

また、次のような記述の中にも「振り返り」という言葉が含まれています。

(4)数学的活動の取り組みにおける配慮事項(P20)
 友達と考えを伝えあうことで学び合ったり、学習の過程と成果を振り返り、よりよく問題解決できたことを実感したりする機会を設けること。


 上記の記述から、「振り返り」には大きく2つの種類があると考えます。
 1つ目は、学習内容を振り返る「振り返り」。これは、授業で生まれた考え方を振り返り、概念形成をよりよくするために行われる振り返りです。
 2つ目は、学習活動を振り返る「振り返り」。これは、問題解決の過程をそのものを振り返り、「学び方」を学ぶための振り返りです。


 このように学習指導要領から「振り返り」を解釈し、さらにそれぞれの価値について考えたことを述べます。


2 学習内容を振り返る「振り返り」の価値

「計算の仕方や手順を習得するという<インプット>と仲間に向かって説明したり表現したりするという<アウトプット>を繋ぐ「振り返り」が【深い学び】に結びつけている。【振り返り】<インプット⇔アウトプット>の充実無くして、【深い学び】は考えにくい。」(梶浦著「アクティブ・ラーニング時代の「振り返り指導」入門」:P27)

 これは学習内容を振り返るものだと解釈できます。例えば、わり算の筆算の計算方法を理解した後に、隣の席の友達に計算方法を説明したり、ノートに文章で説明を書いたりして、「インプット」と「アウトプット」をつなげることです。この「振り返り」によって、子どもは筆算の方法を理解を深めることができると思います。まさに深い学びです。実際の授業では、「ここが大事!」というところで、教師が意図的に「振り返り」を行うことが大切だと考えられます。

 したがって、学習内容を振り返る「振り返り」は、「知識・技能の習得」、「思考力等の育成」等につながると考えます。


3 学習活動を振り返る「振り返り」の価値

「ALでは対話や協働など多様な活動を通した学びが中心となる。活動中はどうしても活動そのものに思考の資源が使われることになる。だからこそ「活動を振り返る時間」を活動と別に確保し、活動を捉え直す認知価値が重要になる。」(梶浦著「アクティブ・ラーニング時代の「振り返り指導」入門」:P11)

 この内容から、学習の活動そのものについて振り返る時間を確保することの重要性が分かります。例えば、グループでの話し合い活動の後に、自分たちのグループの話し合いはうまくいったか、それはなぜかを考えさせる時間が挙げられます。これは、グループでの話し合いをより良いものへとすることにつながります。すなわち、「学び方」を学ぶための「振り返り」ということができ、「学びに向かう力」を伸ばすための「振り返り」と解釈できます。「○○さんのあのときの図を使った説明が分かりやすかった。」など、学習方法を価値づけることにもつながる「振り返り」です。

 このことから、学習活動を振り返る「振り返り」は、「学びに向かう力」を育てることができると考えます。


4 子どもの学びを深める「振り返り」を目指して

 今回授業における「振り返り」を2種類に分類して、それぞれの価値について考えたが、どちらも最終的なゴールは子どもの学びが深まることです。

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(梶浦著:【振り返り指導】の基礎知識:P38)

 上の図からも分かるように、子どもの学びは一直線上に深まっていかないものです。授業で子どもは、分かったつもりでいても実は理解していなかったり、自分と違う意見を聞いたら、考えに自信を持てなくなったりなど、常に「振り返り」を行う必要性は生まれています。型にはまった「振り返り」ではなく、子どもの様子を見て、適切な「振り返り」を行いながら授業をしていくことが大切だと改めて感じました。
 今回、2種類の「振り返り」の価値について考えを述べましたが、実際に授業で行う際に、「子どもの学びが深まったかどうか?」を基準に、自己評価していきたいと思います。


【引用・参考文献】
小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編
「アクティブ・ラーニング時代の「振り返り指導」入門」ー「主体的な深い学び」を実現する指導戦略- 梶浦 真 著
「【振り返り指導】の基礎知識」-質の高い授業づくりを支える理論と実践- 梶浦 真 著 監修 小林 和雄 


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