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【前編】クラウドサイン流 会議ガイドラインVer.1.0。なぜ会議はこんなにも多く、長いのか。会議を改革して組織を強くする方法。

この度、2023年1月30日付でクラウドサイン事業本部内で会議ガイドライン
を交付致しました。内容に関しては後編で開示しますので、是非最後までご覧ください。

実際に交付した会議ガイドライン Ver1.0。後編で中身をご紹介します。

クラウドサインという生産性を上げる事業を推進しているもあり、定期的に自らと組織の業務生産性を見直しています。その一環で、年末に自分自身の業務時間を見返してみたところ、なんと業務時間の80%を会議の時間に割いていた他、部長も70%以上、マネージャーもその時間の半数以上を会議に時間を割いていることに気づきました。

統計的にも仕事全体の20%は会議に割いており、米国の総人件費の15%程度、GDP換算で全体の8.2%ほどが会議に割かれているとのことです。そのため業務改善の最重要トピックは、会議の時間を効率化することとの結論に至りました。

会議はなぜ多いのか、の理由

会議に対する不満は「会議の数が多いこと」そして「会議の時間が長いこと」に集約されます。

世界中の統計を調査しましたが、決まって上位を占めるのは会議の数と時間が長く、生産的とは思えないとの意見です。賛同。

では一体なぜ、人を困らせる「会議」はこんなにも多いのでしょうか?


簡単な理由です。情報を伝達するには「会議」しか方法がなかったからです。思えばソフトウェア誕生以前の社内での情報伝達は大変でした。

経営会議で決定されたものが部長会議等で全国から部長が集められた際に伝達され、部長から課長に、課長から係長に、係長から社員にと伝達する必要がありました。伝達には当然それなりの時間とコストがかかり、組織全体にまで行き渡るは時間がかかるのが通常でした。島耕作でよく見かけます。

会社としての命運を分けるような重要な物事は年に一度の会社総会で直接伝達する機会もごく一部ありましたが、それ以外の多くの物事は伝達リレーにより行われ、実際には階層を経る毎に本来伝わるべき出来事が少しずつ改変され伝達されていったのでしょう。

現在でも地域毎に部長が集められ最新情報が伝達される会合は全国で行われている


だからこそ事実を正確に伝達すべき事象はそれぞれの支社の社内掲示板にて紙で交付したり、社内報を紙で作成し全国の支部で社員全員に行き渡るように工夫されてきました。

支店ごとの各係への伝達は難しいため、毎週朝会という伝達方法により部ごとにまとまって伝達する方式など、ソフトウェア誕生以前においても様々な試行錯誤により情報伝達を効率的にしていきました。

そういった仕事の方式に思いを馳せれば、経営の方針を変化させるために必要な情報伝達のために「会議」は必須であり、それしか方法がなかったことがわかります。

しかしソフトウェアの誕生により情報伝達にはSlack、Microsoft Teamsのようなチャットツール、Zoomなどのビデオ会議を用いた全社発信、イントラネットやグループウェアによって簡便に、情報のバケツリレーを生じさせず、情報のスループットが良い伝達方法が生まれてきて、全て変わるはずでした。

ソフトウェア誕生によっても変わらない会議

合理的に考えればソフトウェアの誕生により、会議の在り方は一変するはずでした。情報伝達のための会議はなくなり、起案者と決裁者により事業の意思決定が迅速に行われ、その決定は全社に隅々にまですぐに行き渡ることができる社会を思い描いていました。

しかしながら変わったことといえば生産性の低い対面会議が、生産性の低いオンライン会議になったくらいのもので、会議の頻度も参加者の人数も変わった気がしませんし、実際の統計調査によっても2020年前後で会議の時間は変わっていないことがわかります。

新しい日常として「デジタル朝会」を100名以上でやる組織も増加している

確かに会議には情報伝達以外にも、ビジネスケイデンスやチームアップ、タスク確認といった様々な要素があることは理解しています。しかしながらそれらのタスク管理、ケイデンスにも特化したソフトウェアが誕生し、チームアップに関しても懇親会や部活などの手段以外の業務時間中にこれほどまでに毎日毎日行うべきものなのでしょうか。

現時点では日本だけが遅れているとは決して思わず、世界的にも程度の差こそあれ、同じような状況であると認識しています。

立ち上がる先端企業。会議はバグ

ソフトウェア誕生にもかかわらず現代の会議の時間の使い方に疑問符を抱く先端企業も出てきてはいます。今月話題になった報道で、Shopifyの会議改革が報道されました。

ShopifyではCEOが「会議はバグ」と言い切り、3人以上の定例会議は原則禁止、水曜日は会議をしてはならない日、50人以上の大会議は時間を限定、大人数が参加するチャットから脱却を推奨し、それにより全社で7万6500時間が削減見込みとの報道がなされました。

方法自体はこれからも改善の余地はあるのでしょうが、目をつけている点は理解でき、あまりにも現代でも業務時間の多くを会議にリソース投下している点が現代における「バグ」と思うのも当然です。

成長企業はこんなにも業務時間が逼迫してるからこそ採用を繰り返しており、にもかかわらずその業務時間の多くを社内の会議に費やしているのです。戦略の実行、顧客との時間、マーケティングの実施などの実際に事業影響を行うアクションではなく、社内調整や情報共有などに多くの時間を割いているのです。

意思決定を伴う生産性の高い経営会議、四半期に一度のチームアップも兼ねたワークショップ、新規チームや新入社員の多いチームの最初の3ヶ月に限定した会議など、実際には全ての会議が悪というわけではないのでしょうが、それは業務時間全体で言えばごく一部の例外であり、会議のほとんどは単に上司が部下のそれぞれの業務の進捗を確認し、1週間あった出来事を読み上げるようなステータスミーティングだと言われています。

「ステータスミーティングに出るくらいなら、免許センターの長い列に並んだ方がマシ」です。

クラウドサインで行った会議改革

そこでクラウドサインでは日本一生産性の高い組織に化けさせるためにステップを踏んでの会議改革に踏み切ることにしました。以下のステップで進捗することとし、現在は4段階目の、会議ガイドラインの交付段階にまで行きついています。

  1. 会議改革プロジェクトチームの発足

  2. 取締役である自分自身の改革。ドッグフーディング

  3. クラウドサイン全社員を対象とした会議アンケートの実施

  4. 会議ガイドラインの交付 ← イマココ

  5. 会議ガイドラインに基づいた部長への会議改善の提案

  6. 会議改善に基づく効果検証

  7. 会議ガイドラインの改訂

1. 会議改革プロジェクトチームの発足

年初から早急に取締役の自分直下に会議改革プロジェクトチームを、私含めて3名ほど発足し、機動的に動き出すことに致しました。デザイナーのチーフとカスタマーサクセスを行なっていた社内指示を集めやすいニューリーダーをプロジェクトチームに選抜し、同日から動くことにしました。

2. 取締役である自分自身の改革。ドッグフーディング

まずは自分自身の仮説を自らに当てはめて効果検証することには始まらず、1週間以内に、自ら参加している定例会議の廃止、週次から隔週化、1時間から30分に短縮化を行い、結果として定例会議の参加時間が半分になりました。

短縮を実施してから3週間が経ちますが、生産性にさほどの影響はなく、だとすれば2倍の時間をかけていた昨年まではどれ程の時間を無駄にしていたのだと反省している最中です。実際には30分の会議が1時間にするとアウトプットの品質は1.1倍くらいになるのでしょうが、30分になっても結局優先度の高い順に骨子を全て話していくので品質に与える影響は少ない結果となりました。

仮に会議が時間切れになったとしても、Slackを用いて非同期でのコミュニケーションが容易であり全く支障がありません。むしろ会議の時間が減ったので非同期の時間にリソースを投下し、以前よりも円滑にコミュニケーションをとることができています。会議が埋まってる決裁者は非同期への対応が遅く、だからまた会議が設定されるという会議の負のスパイラルにはまってるケースの方がほとんどなのでしょう。

同時に入っているSlackのチャンネルも半分にしました。Slackの良さは、すぐにまた入り直せることもあり、一旦半分退出し、結局3週間後1つも再加入していません。最初から必要なかった可能性が高いです。

3週間後の今、優先度の高い会議を1つだけ発足したのみです。事業は緊急度と重要度が刻々と変わるのだから、思えば都度会議を廃止したり新設すればよく、緊急な時も平時の時も同じ時間を投下する定例会議は生産性が低いのだと感じました。

ここら辺から倒すべきは「会議」ではなく「定例会着」、特にステータスミーティングなのだと気付いてきました。ドッグフーディングの成果。

3. クラウドサイン全社員を対象とした会議アンケートの実施

クラウドサイン全社員を対象とした会議満足度アンケートを取ったのですが、様々な面白い事実が明るみになりました。その一部の結果をオープンにします。

会議アンケートサマリの一部抜粋。他にも会議中に他の作業をしている割合調査などを実施

生産性にいつも気を配っているクラウドサインでも実に70%以上の社員が会議の数が多い不満を抱いています。その一方でこれだけの数の会議をしているにもかかわらず、「人によって知っている情報に差がある」との不満結果が最上位にきました。これだけの数の会議をしているにもかかわらず…。

マネージャーからの不満とメンバーとの不満で色分けしており、メンバーの方が人数が多いので対比で言えばメンバーからの意見が多数派になるのは必然ですが、それにしてもこの不満の類型のみが圧倒的な割合でメンバーからの不満が多い結果を産んでいます。

実際に割合で見ても、マネージャーは自ら設定した会議に満足しながらも、それに巻き込まれるメンバーからは満足度が低い結果になっています。

これは自社組織のクラウドサインだから自分の責任でこうして開示できていますが、恐らく程度の差こそあれ、全国の組織においても同じような症状が起きているのだと推察しています。改善できる自信があるからこそ、こうしてアンケート結果を開示することとしています。

もちろん社員には匿名情報としてサマリ内容は全ページ内容を開示しています。この結果をまた会議で伝達していたら自虐的で楽しかったのでしょうが、Slackで資料を共有しました。

4. 会議ガイドラインの交付

こうしている間にもプロジェクトチーム内では会議に関する様々な議論を飛びかわせました。エンジニア、デザイナーなどのクリエイターや、経営者から見た会議、マネージャーやメンバーなど様々な階層から見た会議の是非、正しい在り方を議論しました。

他社のオフィスに訪問し、経営者と会議の在り方インタビューなども実施し、解像度を上げていっている最中です。

いくつかの論点はまだ決着つけていないながら、それはアジャイルに随時ガイドラインを改訂、加筆していけばいいので、まず現段階で実施すべき異論のない会議改革は実行していくこととしました。

そこで毎月改訂を繰り返す前提での、会議ガイドライン Ver.1.0が完成致しました。しばらくはマイナーアップデートを繰り返す予定で、たまにメジャーアップデートするかもしれません。

内容は後編で

ここに至るまで約20日間。後編では実際の会議ガイドラインの内容をオープンにしていければと考えています。

たった5つの方法で組織を改善できる具体的な方法です。近日中に公開予定です。

会議満足度調査アンケートのお願い

会議ガイドラインの改訂、その外部公表を続けていく予定のため、その参考にさせていただきたく会議満足度調査にご協力いただけますと幸いです。ソフトウェア時代の会議を再デザインする方式を一般公開していきたいと考えております。

最後に

会議改革は、生産性向上において社会全体に意味のある事象だと考えています。クラウドサインでの改革は社会全体からとってみればβ版の1つの参考事例にしていただきたく、会議改革に関して積極的に取材を受け入れる予定です。

是非取材やインタビュー、セミナー登壇を御希望の方は私のTwitter DMにお気軽にご連絡ください。


お読みいただきありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ