Jリーグ10年間の収支を分析してみる。収入全体の8割を占める協賛金と放映権料の推移とは?
Jリーグは毎年の収支や事業計画書が開示されており、スポーツビジネスとして経営状況が安定しているかは常に監視の目に晒されています(平成29年度の事業計画書はこちら)。
開示資料を元に開示されている年数の範囲内で10年間の収支状況をまとめてみました。
率直にいうと2015年までのJリーグの収支は微妙と言わざるを得ない状況です。Jリーグ全体の収入の8割を占めるのは「協賛金収入」と「放映権料収入」はほぼ横ばいであり、Jリーグ全体の資産価値が上昇していないことがわかります。
収入に占める割合についてもまとめてみました。ほぼ緑と青の「協賛金収入」と「放映権料収入」です。
収益の3割を占める協賛金収入
協賛金収入とはJリーグのスポンサー企業からの協賛金としての収益であり、いわゆるスポンサー収入です。J リーグは「 J リーグパートナー」と呼び、様々な分野でのパートナーシップを結んでいます。超のつくほど優良企業群で安定した収益を占めています。
DAZNで活況する放映権収益
放映権収益は、各クラブでなくリーグである「Jリーグ」が試合を放映する放映権料として収益化しています。Jリーグの放映権料に関する歴史は、日本の放送の歴史でもありとても興味深い構造にあります。
Jリーグ発足当初はNHKと民法各局が横並びで放映していたが視聴率低迷とともに、2002年からの5年間はNHK・TBS・J SKY SPORTSの3社、2007年からの5年間はスカパー・NHK・TBSの3社が5年間の放映権を締結しています。そして当時の放映権料は5年間で1年あたり50億円程度でした。
それに加え、海外向けの放映権としてスカパーが1年あたり3億5000万円としており、直近の5倍の放映権料となっています。これにより東南アジアを中心としたJリーグのアジアでの認知度も増していくと期待されていました。
そして2017年からはイギリスのデジタルメディア企業「パフォーム・グループ」が提供する動画配信サービス「DAZN」との間で10年間で総額約2100億円の放映権の締結がなされました。これにより、1年あたり210億円と桁違いの放映権料が得られる構造になったのです。
Jリーグの支出面はどのような構造になっているか
支出に関してもJリーグが事業計画書で開示されています。その構造を以下のグラフにまとめてみました。
グラフのとおり、クラブへの配分金がほとんどを占めていることがわかります。これはプロ野球にはない制度でJリーグ全体があげた収益を各クラブに配分することでクラブは単独で交渉してはあげられない収益を得ることができる制度となっています(詳しくはこちら)。
そして、この配分金を如何に配分するかがJリーグの根幹となるのです。平等に配分して各チームの戦力を均衡化させる考え方もありますし、上位チームに傾斜をかけ戦力増強のインセンティブを与える方法もあります。
私自身は米国スポーツと欧州スポーツの特徴から分析するに、戦力均衡モデルが日本では最適と考えています。詳しくは以下の記事をご覧ください。
JリーグではDAZNマネーを以下のような配分を行うことを発表しています。
① 均等配分金
② 理念強化配分金
③ 降格救済金
④ ACLサポート
⑤ 賞金
各クラブ一律に配分される「①均等配分金」は、1クラブあたりJ1が1.8億円からほぼ倍増となる3.5億円、J2が1億円から1.5億円、J3が1500万から倍増となる3000万円が配分されることとなります。早くもDAZNマネーの効果が出ています。
そしてJリーグが戦力均衡モデルでなく強豪集中モデルを採用した最も特徴的な配分として「② 理念強化配分金」があります。今季リーグの1位クラブには18年に10億円、19年に4億円、20年に1.5億円が渡ることになり、上位チームがより資金が強化され、弱小チームは投資金額も限定的になるのです。もっとも、だからこそヴィッセル神戸が獲得したポドルスキ選手のような大型契約も実現でき結果としてJリーグ全体が潤う構造になるインセンティブが発生され、メリット/デメリットがあるところです。
そのほか、「④ ACLサポート」などACL参加の強豪チームに配分される金額も用意され、ここでも強豪集中モデルが採用されています。
ともあれ始まったJリーグのDAZNマネーの配分。早速、戦力育成に投資しているクラブも現れています。Jクラブ全体の経営が安定化し、若年層のファン層を拡大する最大のチャンスを生かしてほしいと心から思います。