契約書って必要?見積書を用いてトラブルを回避するポイント-その①

 デザイナー法務小僧として、日々ご相談をお受けする中で、「契約書が大事だとは分かっているものの、難しくてよく分からない」、「契約書のひな形をネットで拾ってきて契約書を締結しようと思うが、注意点を教えてほしい」といった契約にまつわるご相談を数多く、いただきます。
そこで、このnoteでも、順次こうしたご相談に対してお応えできるような記事をアップしていければと思いますが、まず今回は「そもそも契約書って必要なのか?」という観点から、特にフリーランスの方が注意しておくべき契約の扱い方について、記事にしました。

※本テーマは、デザイナー法務小僧のツイッターアカウントにおいて発信した「見積書に書いておきたい7項目(法務面)」をnoteに合わせてブラッシュアップしたものになります。

1.契約書作成にはコストがかかる

 ビジネスの現場においては、何かにつけてとにかく契約書は大事!と言われますが(我々弁護士も言いがちですが)、きちんと契約書を作成しようと思うと、時間や費用、また時には契約交渉により少し緊張感が生まれるという人間関係的な意味でのコストを払う必要があります。
 法人として活動されている方ならともかく、フリーランスや個人事業主の方にとっては、こうしたコスト面から契約書作成はハードルが高く、全てのビジネス上の取引で契約書を必ず交わすということは現実的でないと思います。

2.内容を十分に理解せず、とりあえず契約書を交わすという最悪の一手

 以上のハードルの高さを原因として、「とりあえずひな形を探して契約を締結する」「クライアントは大企業だし大丈夫だろうと信じて先方の契約書をそのまま締結する」といった、弁護士の視点からみれば、かなりまずいやり取りをされている方が多く見受けられます。
 トラブルが起きなければ、幸いにも問題が表面化せずに終わる場合もありますが、ひとたびトラブルになると、その契約書に記載されている内容に基づいて、交渉や裁判が行われることになり、その後の結果に大きな影響を与えますので、コストが高いことを理由に理解せずに契約書を締結するのは、かなりリスクが高いと言えます。
 また、ひな形やクライアントから提示される契約書は、一見きちんとしたものに見えますが、往々にして自分に不利になっていることがあります(それっぽいひな形を探してきて契約書を締結したはいいものの、いざトラブルになったら自分に不利なことばかり書いてあったら、なかなか辛いものがありますよね…)。

 契約書という書面を交わすからにはコストがかかることは覚悟し、コストがかけられないのであれば、内容を理解できない契約書は交わさない方が幾分かマシです。
 最悪なのは記載されている内容がわからないにもかかわらず契約書に判子を押してしまい、十分に理解しないまま自分で自分を縛ってしまうことです。

3.見積書でも立派な契約になる

 では、コストをそんなにかけられない中で、コストを抑えて契約を締結するにはどうすれば良いのか?
 これに対する答えとして、見積書を活用するということが挙げられます。見積書すら作成しない取引はまれかと思いますし、よっぽど気ごころが知れた友人の依頼でもない限り(ただトラブルというのはそういうところに潜んでいたりするものですが…)、見積書や通常見積書に記載するような情報を一切クライアントに伝えずに仕事をするというのは避けるべきです。

 そもそも「契約」が成立するために契約書は必須ではありません。よくいわれる「契約は口約束でも成立する」というやつです。
 したがって、見積書に取引における確認事項を記載して出した上で、それに対してクライアントからオッケーをもらえば、それも立派な契約になります。(もちろんメールで取引内容を書いて、それに対してオッケーをもらうことでも十分です。)
 「甲、乙」とか「瑕疵」とか「責に帰すべき事由」とか難しい言葉を使わずに、自分の言葉で記載しても、客観的に意味が明らかであれば、それでも何ら問題なく有効な契約内容となります。
 したがって、契約書までは作れないという方も、見積書などに守ってもらいたいことや、必要なことを自分がわかる言葉でしっかり書いておいた上で、取引や制作に入ることがとても重要です。

※もちろんリスクの高そうな取引、初めての相手との大規模な取引、継続的な取引をする場合など取引内容によっては、きちんと契約書を作成するべき場合があることは当然であり、何から何まで見積書で足りるというお話ではありません。

4.(次回)見積書に記載しておきたいポイント

 以上を踏まえ次回の記事では、見積書に最低限書いておくべきと思われる事項について紹介していきます。


~デザイナー法務小僧とは~
我々の活動の詳細は、以下の記事をご覧ください。


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