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「真夜中に泰然と輝く。それは昼間も」日記

11月7日の暮れのこと。
 
ほとんど満月で、その日は地表近くを見ればきっとうっすらとした月が煌々と存在していただろう。
 
地球から見上げるとても遠い場所にある尊い瞬き。
 
 
その数時間前。
 
ぼくは月を見る余裕なんてなくて、
監査に焦っていた。片付かないデスクに積み上げられていくFAX用紙。
 
「○○×〇個、△△×〇個、□□×〇個」
「△△×〇個、△△×〇個、□□×〇個」
「○○×〇個、□□×〇個、□□×〇個」
 
それらに目を通さなければならない。
ぼくは、取引先からの要望に疑義がないかをチェックしていた。
 
△△と□□の組み合わせは悪い

今回は、△を○○に変更しよう。
とか、
□□に対して○○が多い
だから、○○は前回と同じにしよう。
と。
 
それらすべてのミスをすべて見つけ出し、先方に相談しないといけない。
しかも厄介な相手が多い、丁寧に電話をかけて、気が参っていた。
 
「わざとやっているんだよ」と怒鳴る人もいた。
それでもやらないといけない。
まあ安全の為。
 
 
だけど時間が過ぎていって、いつしか約束の時間が近づいていた。
それには流石に焦る。

過去に大ポカをして以来、失礼が許されない相手だった。

「やらなきゃ」「やらなきゃ」と逃げられない板挟みの社畜的なプレッシャーを覚えだすと、もう「自分らしさ」は消える。

気が付くと、ボクは
「仕事の為にぼくがある」という逆転の状態になっていた。

呼吸は自然と早まっている。

 
「○○からの監査をお願いします」
 そのときFAX用紙が届いて、さらに頭は混乱していった。
 
 
 
そうして夜七時に監査業務が一段落して、気がつくと夜中の高速道路を飛ばしていた。

まだ「なんで?」と頭はクエスチョンで一杯だ。
これから取引先との話し合いをしなければならない。かなり記憶は飛んでいるけれど、それでもアポイントメントは取り直していたのが不思議だった。
 
どうやってもいつもと違う。
普段通りの自分に戻ろうと思うのだけど、それができなくて。
そして一層イライラとした。

堂々巡りのように考えながら高速道路を走っていた。
 
そのとき、目の前に真っ暗闇のなかにポツンと月が煌々と浮かんでいて。

その月がぼくを救った。
 
泰然とした輝きが真っ暗闇に浮かんでいて、誰にも穢されることがない。という超自然的な存在が尊かった。

生まれたままに「在る」。

主張をするわけでもなく、ずーっと何万年も泰然とそこに輝いているのだ。
 
 
これが11月7日の言いたい事。

月食の前日で、優しくとても大きな月でした。

こんな月がいつだってぼくらの頭上には浮かんでいるのだと思うと、怖いものが消えて。

きっとこれからもぼくの仕事が忙しいし、同じことを繰り返すし、現実はこのままだけど。月もいつだって頭上で輝いている。
この心はすぐ汚いことも思ってしまうみっともないものだけど、また自分らしくいるのです。

たまに月を見上げて。

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