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グレーゾーンのケアなら分析してみるといい

やってはいけない手法、なんて言われなくてもわかっているものが介護の世界にはよくよくある。
介護職の罪悪感を増幅させるいわゆる「教科書的な正論」に苦しむのはむしろそん「いい人」なのだろうし、そんな「いい人」が罪悪感を感じなければならないことは歯がゆさと、なにか申し訳なさも感じる。この辺、教員ぽさが抜けていない。

感情労働感情労働っていうけどさ

そんなことを考えているとやっぱり介護は感情労働の側面があるのだろう。
もちろん生活という生々しいステージで人と人が関わることで成立する介護に、感情が発生しないわけはない。
そういえば介護を始めた時、当時の上司に「介護職はアクター・アクトレスだ!」と言われたことがある。当時はそれっぽい言葉に納得はしないまでも何気なく受け止めていた。が、なんとなく後から考えたらそれっぽすぎて腹が立ってきた、なんだこれ。

新人アクターと実力派アクトレス

感情だけで戦うと最初の村でも苦戦する

いや、その側面がないとは言えないが,あくまでもニュアンス的なものに終始するだろう。
事象に対して感情が発生している以上.芝居だけではない。
とはいえ、そんなグレーゾーンのケア(それをケアと呼ぶべきかどうかはここでは考えない)に感情だけで立ち向かうにはあまりにも武器が弱すぎる。

理と利が必要そうだ。

ここでは主観的な感情とはまた違った客観的な分析を持ち出してみよう。
「客観的」とか「分析」とか、そういうワードには心が伴わないイメージを持たれそうだが、そんなことはない。動機や出発点はいつも心だ。
原因があって結果がある、2500年前に「目覚めた人」が言った。
もちろんグレーゾーンのケアだってそうだ。

グレーゾーンのケア

ざっくり言えばもちろんそれで全てが済んでしまうわけだけだ、でも意外と人間は理屈が好きな生き物で、それだけに留まっても納得しようとしない。
AND
OR
なんかを駆使しながらどんどん分析を細かくやっていくのはどこかで納得する仮定を得るための回り道なのかもしれない。
さて、グレーゾーンのケアがどんなものか?
例えば
・利用者が座っている椅子をテーブルと壁で挟んで立てなくする
・「ちょっと待って」(おなじみのアレ)
・時間で生活を細切れにする
などなど、バラエティに富んでいる。
普通に考えればいわゆる「不適切ケア」や「身体拘束」と言われるものになるわけで、本邦では厚生労働省も「それはダメ」とはっきり言っている。

原因があって結果がある。
これをあえて「グレーゾーン」と呼ぶのは「やっている側も好き好んでやっているわけではない」ということが必須条件になる。
あらゆる要因によって援助者(グレーゾーンケア提供者)も「他に打つ手がない」からしている、いや、せざるを得ないということだ。
ここで単純な講師なら「それでも身体拘束はダメです、犯罪です。現場でよくする方法を考えてください」と言ってしまう、突き放してしまうわけだ。これでは講師としての存在価値がないに等しい。

存在価値を失った講師、逆に目立っている。

結局WHY

かといって「じゃあこうしてください」とどこかの業界から持ってきた役に立つかどうかわからないスキルを伝授するのも違う。
そもそも社会保障である介護の現場で身体拘束が許されるわけでは無いが「自由というものは全てに時間において他者の存在を無視していいわけではない」という前提に立っている。
グレーゾーンのケアがなぜそこに存在するのか?
存在しなければならないのか?
主観で見えるものには限界がある。
視座、視点、視界を拡張することから対応は始まる。

ホワイトゾーンからグレーゾーンに移ったのか?
ブラックゾーンからホワイトゾーンに移ったのか?
初めからグレーゾーンだったのか?
グレーゾーンはピンポイントなのか?
それとも全ての対象者に満遍なく行き渡っているのか?

いわゆるフィードバック/振り返りというものはこういったケースの分析に欠かせない要素ではあるが、どこから振り返れば良いのか?が課題となる。

振り返っているようで振り返ってない

分析しないと情報なんてもったいないだけ

結果として「望ましくないこと」が起きているということは、言ってみればこれらグレーゾーンのケアが発生するということそのものが「事故」ともとれる。
事故(ことゆえ)なのであれば事故分析の手法をあてはめて考えてみよう。

こと介護施設ではほとんどの現場に「事故報告書」というものがある。
多いか少ないかはわからないが、それが形骸化していてなんの役にも立たない紙くず同然の代物になっていることもある。
事故はそんな雑に扱っていたら結局再発する。
100%防ぐことはもちろん困難(不可能とも)だろうけども、起きなくてもいい事故を減らせる可能性は隠れている。
さぁ、グレーゾーンに事故分析手法で切り込んでみよう。



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