"デッキ"の響きに恋していた
この話、もう書いたかもしれないけれどどこに書いたか思い出せないので懲りずに書きますね。
カードゲームあるじゃないですか。トランプとかウノとか各種トレーディングカードゲームとか。私はゲームの類いを一切禁止されていたので、小学校時代は休み時間に教室で行われる大富豪で枯れた心を癒やしていました。結構強かったんですよ。常連の中でも勝率高めでした、少しばかり頭は良かったし(過去形なのが悲しい)、何よりあの休み時間のトランプが私に許された唯一のゲームだったので。他にいくらでも娯楽がある子達とは情熱の度合いが違いました。
当時の私の片思いの相手もめっぽう強くて、彼と大富豪の座を巡って全力でぶつかり合うこともしばしば。あの瞬間が一番幸せでした。そんな彼が、時折観客側に回って私の手札を見ては言うのです。
「お、けっこう良いデッキじゃん?」
デッキ…?デッキとは?甲板か?
遊戯王もデュエマもバトスピもポケカも知らなかった私は、話しかけられた嬉しさで思考停止してしまいその意味を尋ねることすらできませんでした。いつも生返事でごまかしていたはずです。ようやく理解したのは、なんとびっくり大2で急に遊戯王にはまってから。遅すぎます。
今考えれば私の手の中にあったのはデッキというよりただの手札なのですが、"デッキ"という、私の知っているのとは違う意味を持った短くとも魅惑的な響きの言葉が、私の心にずっときらめいていたのでした。
たった3文字の言葉にこれだけ心をときめかせていたなんて、随分おめでたいやつだと思われるかもしれません。でもこれは、人並みにいろいろなコンテンツに触れてきた人たちには分からないであろう、私だけの奇妙な輝かしい記憶です。人より薄い未成年時代を過ごした私の大事な心の拠り所なのです。
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