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S妻にペニバンイラマで喉奥までぶち犯されて悶絶させられた 1

その手でその手で私を汚して。何度も何度も私を壊して。
汗ばむ淋しさを重ね合わせ、眩しくて見えない闇に落ちてく。
いつか滅び逝くこのカラダならば蝕まれたい。あなたの愛で。
哀歌(エレジー)/平井堅

妻が帰ってきた。

彼女が玄関のドアの開けた時の音や早さや音程の違いで、今日一日何があったのか、いったいどういう気分で家路についたのかを察することができるようになった自分に気がついた時、ほんとに結婚したんだな、という実感が湧いてきたものだ。

ちなみに、今日はここ一年で一番ヤバい。

「お、おかえり……」

恐る恐る彼女を出迎えると、全身から憤怒の気が放つ愛咲が、

「はあ……ただいま」

いつもより一段と低い声でそう言う。

「ほんっとにムカつく。まんまとハメられたわ」

彼女が勤めている会社での新規事業の立ち上げの経緯については詳らかに聞いていた。恐らく、そのことであろう。

彼女の属している課は大きく分けて2つのプロジェクトチームがあるが、もう一方のチームが上役に取り入って、予算や人員を独り占めしているのだそうだ。愛咲のチームはその割を食ってしまい、慢性的なリソース不足に陥ってしまっている。

パンプスを脱ぎ捨てると、ドスドスと音を立ててリビングに行き、鞄をソファに放り投げた。

翻って自分はというと、ルート営業をしており、お得意さんの御用聞きをしつつ、これまで社が積み上げてきた実績と信頼関係を壊さないように現状維持に務めることを第一義としている。そのため、争い事はほとんど起こらない。それに、残業もたまにしかなく、ほとんど社員全員が定時で上がることが出来ている。
一方で愛咲の仕事はただでさえハードワークなうえに、社内での競争も激しく、残業も頻繁にある。もちろん、その分、愛咲の方が給料も地位も上だった。

「おい、服、脱げ」

愛咲が底冷えのするような低い声で僕に告げた。

「はいっ」

僕は飛び上がって、パーカーのファスナーを急いで下げ、下に履いていたズボンもパンツと一緒くたにして脱いで、愛咲さまの膝元で正座した。

どうして僕がこんな素っ頓狂な要求に従順なのかと不思議に思われるかもしれない。しかし、これは僕が本心から切望していた彼女の姿であるということを読者諸兄姉にはどうかご了承いただきたい。主従関係を結びながら結婚する「SM婚」を成し遂げるという、稀有な幸福に辿り着くことができた幸せ者なのだ。決してDVや○○ハラといった類などではない。
だから、これも、そして、これから僕の身に起こるであろうことも、僕がもがき苦しみ悶絶し、赦しを懇願して、必死の命乞いをし、それを無下に断られることでさえも、僕が本心から切に望んだことであるということを頭の片隅に置いておいて頂けると有り難い。

そのような特殊な関係であろうとも、しかし、妻の前で自分だけが裸になるのも以前はできなかったことだ。これも、愛咲さまの調教の賜物だ。僕が脱衣に掛かった秒数に10を掛けた回数の乗馬鞭を頂くという壮絶な調教のおかげで、やっと羞恥心と矮小なプライドを捨て去ることができたのだ。

ただ、調教用の扇情的な衣装ではなく、仕事用のスーツを着た妻の前で、自分だけが一糸まとわぬ裸を晒すというのには未だに慣れなかったし、慣れそうもない。心許なさと惨めさに消え入りたい気持ちになる。そして、三指をつき、愛咲さまの足元に跪き、頭を伏せた。愛咲さまはストッキングを履いた足を僕の後頭部と背中にどっかと載せた。

「夕飯は?」

「はい、できております。牛肉とキャベツのトマト煮です」

「ふうん……美味しそうじゃない?でも私はいまそんな気分じゃないの」

しばらくの沈黙の後、愛咲さまはそう言った。顔を伏せていても、視線が背中に注がれていることがその気配から感じ取られた。
「今すぐシャワーを浴びてその薄汚い身体を清めてきなさい」

「かしこまりました」

僕は立ち上がってそそくさとシャワーを浴びに行く。浴室のドアを閉めようとした時、
「ねえねえ、あ、そういやさ、お米ってもう炊いちゃってる?」
と声が掛かる。
「あ、うん、もう炊いちゃった」
と返す。
「じゃあさ、後で食べっから保温にしておいてくれるー?」
と彼女が言う。日常的な支配関係は、非日常にしみったれた平凡な日常が侵食してくることがままある。裸のまま台所に向かい、炊飯器のボタンをピッと押す。
「ありがとねー」
愛咲は僕にそう言葉を投げかける。ピリッとしたムードが一瞬綻ぶが、それもまた、SM婚の醍醐味だ、ということにしておく。

僕と愛咲は主人と奴隷という関係だが、その前に日常の苦楽を共にする生活者なのだ。

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