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シロツメクサ 5【創作BL SM小説】

それからというもの、香月はまひるに対して噛むことを毎回のように要求するようになっていった。肩だけでなく、手や腕、お腹、内腿、首、色々なところを示して噛んでくれるように頼むようになる。

まひるは香月のそんな要求を受け入れつつある自分自身に気が付き怖くなっていった。ある時、「今日はどこを噛んでほしい?」と自分から聞いてしまったことに驚いた。香月は噛めば噛むほどに乱れ、興奮を高めていく。これ以上の力で噛んでしまったらきっとあの薄い皮膚を突き破り、肉を食いちぎってしまうだろう、というくらいの強さで噛んだ時、今までに見たこともないくらいに亀頭がパンパンに腫れ上がって我慢汁が噴き出したのを見て、まひる自身も、人生で感じたことないくらいの興奮を覚えた。

ある晩、まひるはこんな夢を見た。

まひるが香月をバリバリ食い散らかし、骨までをしゃぶり尽くす夢。

鋭い犬歯が皮膚を突き破り、肉を引きちぎり、内臓を味わい、骨までむしゃぶり尽くし、頭蓋を噛み割る。

辺り一面には噎せ返るほどの温かな血のニオイが立ち込め、それすらもまひるを昂らせる。

香月は激痛によって涙を流しながらも、幸福そうに微笑んでいる。

血飛沫に染まった笑顔が起きた後もずっと離れなかった。

「マジでやべえ……」

まひるは頭を抱えた。きっと、このままだと、俺は彼を殺してしまうかもしれない。

退屈な大学の必修の授業を受けながらも、頭の半分くらいでずっと香月のことを考え続けている。まひるは自分の心の奥にこんな醜い感情があっただなんて認めたくなかった。SMを昭和アニメの悪役コスプレなんて馬鹿にして嘲り笑っていた頃が懐かしい。自分には関係のないことだと思っていた自分に戻りたい。

香月はきっとどこまでも俺に傷つけられることを望むだろう。俺と香月の乗ってしまった列車の最終駅は死だ。香月は俺に殺されることを望んでいる。そして、俺は香月が望んでいることならなんだってしてやりたい。それは今も変わらない。だから、きっと、この列車は快速急行で終着駅に向かってしまうだろう。

そんなのはダメだ。俺はもっと違うやり方で香月を大事にすべきだ。傷つけるなんて間違っている。もし、香月自身が傷つけられることを望んでいたとしても、もし、俺の中に香月を傷つけたいという変態的な欲望が眠っていようとも、それを香月にぶつけてはならない。

俺は香月のためだったら性癖だって捨て去ることだって厭わない。だって、香月を愛しているから。愛している香月を幸せにする。それが俺の生きる目的だ。

一体、俺はどうしたらいい?香月のあの縋るような潤んだ瞳で「殺してくれ」と頼まれたら、俺は果たして断ることができるだろうか……


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豆電球の薄明かりの中で碓氷香月は湯ノ神まひるの名前を呼びながらベッドサイドで自慰をしていた。

「まひるくん…んっ……まひるくん……ごめんね……変態な僕でごめん……」

半ば押し付けるようにまひるくんに鍵を渡して、半同棲状態にしたのは他でもない僕だった。今となっては彼は下着を含む彼の服を何枚かこの家に置いている。

「数枚ぐらい服が増えたくらいなんてこと無いから」なんて言ってさ。でも、僕の本当の目的は違ったんだ。彼の服を着て、彼の体臭を身に纏って包まれて、彼の体臭が凝集されたような下着を鼻先に押し付けて、自慰をしたかったからだ。

まひるくんは僕のことを大事にしてくれるから、洗ってない性器など舐めさせることなどしない。だから、石鹸の匂いのするペニスしか知らなかった。それはきっと本来ならば喜ぶべきこと、なんだろう。

こんなに僕を大切にしてくれるのは彼が初めてだった。でも、それだけじゃ段々満足ができなくなってきた。もっと、まひるくんを感じたい。まひるくんの存在を自分に刻みつけたかった。絶対に忘れられなくなるように。

自分はきっとおかしい。それは分かっている。そして、それがまひるのプレッシャーになっていることも分かっていた。僕が感極まって「噛んで」と懇願した時に見せた怯え、それが彼の答えなんだ。彼は普通の人だ。だから、僕の歪みには耐えられない。だって「噛んで」なんて僕には大したことが無いから。こんなのはほんの入り口に過ぎないことだから。

でも、このいびつな心の形は、心の内にとてつもない大きな渦を巻き起こす。それは、理性ではどうしようもない激流だ。自分はずっとこの欲に溺れてきた。この欲望の渦動に彼も巻き込んではいけない。

でも、時々、いや、いつだって、彼もろとも欲動のスパイラルに引き摺り込みたいと思ってしまうんだ。

彼が先ほどまで履いていた下着を裏返しにして、口の中に押し込む。頬をブリーフでパンパンにした変態のできあがりだ。それで僕は愛する恋人の名前を言葉にならない声で呼び続ける。

まひるくん……まひるくん……まひるくん……ねえ、ごめんね。こんな変態でごめんね。こんな変態がまひるくんのことを好きになってごめんね。愛してる……愛しちゃってる……

我慢汁で塗れた陰茎を擦るくちゅくちゅという音と、香月の吐息に似た喘ぎ声、生臭い淫臭が薄暗い部屋に満ちていった。



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