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【インターネット白書】PDF全文無料公開―2021年版バックナンバーアーカイブ

ウェブサイト「インターネット白書ARCHIVES」で『インターネット白書2021 ポストコロナのDX戦略』のアーカイブPDFが公開され、誰でも無料で検索・閲覧できるようになった。この2021年版について、概要と主要記事のタイトル、執筆者、リード文とともに紹介する。

1996年創刊号からのアーカイブを公開

インターネット白書ARCHIVES」では、インターネット黎明期(1996年)からの歴史を年鑑として発行し続けている『インターネット白書』のバックナンバーをデジタル化し、無料で検索・閲覧できる。発行後1年を経過した『インターネット白書』は、アーカイブとしてPDFが公開される。

同サイトは、インターネット協会(IAjapan)、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)、日本レジストリサービス(JPRS)、そしてインプレス・サステナブルラボが共同で運営している(共同運営者の詳細はこちら)。

2021年版のテーマは「ポストコロナのDX戦略」

インターネット白書2021』の副題は「ポストコロナのDX戦略」。2020年から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界を襲い、社会経済活動を維持するためのインターネットの役割が再認識されたのをきっかけに、DX(デジタルトランスフォーメーション)が急務であるという認識が高まった。

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2021年版では、ウェブ会議システムの急速な需要増をはじめとするテレワークの台頭、GIGAスクールの動きを前倒ししたオンライン教育の動き、音楽ライブ配信やオンラインゲームが活況を呈したオンラインエンターテインメント、非接触で決済ができるペイメントシステムの市場拡大など、コロナ禍における旧システムの混乱とデジタルテクノロジーを活用した新様式(ニューノーマル)への急速な移行のニーズ、それらの課題について、ビジネス、社会、技術分野における44人の専門家が解説している。

以下に、主要記事のタイトル、執筆者、リード文を掲載する。インターネットに関する広範囲な論点を取り上げているので、皆さんが興味・関心を持つ記事もきっと見つかるはずだ。ぜひアーカイブを活用してほしい。

※執筆者の所属や肩書は発行当時のものを記載しています。

巻頭:10大キーワードで読む2021年のインターネット

執筆協力:仲里 淳●インプレス・サステナブルラボ研究員

01【減災コミュニティ】東日本大震災から10年でスマホは生活インフラに
02【非接触テクノロジー】“ディスタンス”をデジタル技術で乗り越える
03【テレワーク】コロナ禍によって背中を押された働き方改革
04【オンライン教育】コロナ禍で必要性を実感するも実現には課題も
05【オンラインエンターテインメント】イベントのオンライン化とVR活用が加速
06【改正著作権法】権利者保護と円滑利用のバランス
07【インフォデミック】深刻化する誹謗中傷や誤情報拡散への対策
08【マーケティングとプライバシー】消費者保護重視のポストCookie時代が到来
09【デジタル庁構想】既存省庁とのしがらみからの脱却
10【サスティナブルシティ】持続可能な都市の実現はICT×エネルギーが鍵に

「10大キーワードで読む2021年のインターネット」誌面イメージ

第1部 産業動向


1-1 メディア

2020年のテレビとインターネットの動き

倉又 俊夫●株式会社NHKグローバルメディアサービス デジタルセンター

コロナ禍はテレビ各局に深刻な影響を与えたが、巣ごもり需要の喚起により映像配信が好調である。デバイスを選ばない映像コミュニケーション手段として、インターネットはさらに確固たる地位を築いていく。

音楽配信サービスの動向

荒川 祐二●株式会社NexTone 代表取締役COO

ストリーミングサービスは全世界の音楽産業総売上の半分以上となったが伸び率は鈍化。ライブイベントへのCOVID-19による打撃は大きいが、結果として音楽業界のデジタルトランスフォーメーションが進む。

国内オンラインゲーム市場の動向

澤 紫臣●アマツ株式会社 チーフクリエイティブオフィサー

「巣ごもり需要」をはじめとした家計の変化やニューノーマルの生活様式は、オンラインゲーム市場をどのように変容させていくのか。さらなる発展のためにも、より安心・安全なプレイ環境の実現が望まれる。

国内インターネット広告市場の動向

齊藤 昌幸●みずほ銀行 産業調査部 調査役

Cookieレス時代の到来により、インターネット広告市場ではインフルエンサーやOMOによる新たなマーケティング手法が注目される。

ニューノーマル時代におけるデジタルサービスの利用状況の変化とこれから

高木 史朗●ニールセンデジタル株式会社 シニアアナリスト
馬 平川●ニールセンデジタル株式会社 アナリスト

COVID-19の影響で一変した生活のあり方が、新しいデジタルサービスの利用を生み出し、常態化させている。企業は、ニューノーマルを共に歩む消費者の変化を随時把握し、寄り添っていくことが重要である。


1-2 リテール・金融

リテール4.0を牽引するEコマースの拡大

田中 秀樹●株式会社富士通フューチャースタディーズ・センター 業務部門 部長

コロナ禍でEコマース市場は急成長した。2強が売上を伸ばすだけでなく、実店舗が低迷した小売大手が本腰を入れ、中小も新規参入。今後の市場は、顧客体験がより重要になる「リテール4.0」へと進化する。

決済プラットフォームの動向

多田羅 政和●株式会社電子決済研究所 代表取締役社長/電子決済マガジン 編集長

COVID-19による影響は、クレジットカード取扱高の激減や、逆にコード決済の急進などを招いた。外食産業でも非対面/ネット決済が注目される。本人認証を確実にするなど不正の防止策もより重要となった。

2020年の暗号資産の動向

岩下 直行●京都大学公共政策大学院 教授

BTCは2020年春先の低迷から一転して高騰、3万ドルの水準へ。コロナ禍による金融緩和とステーブルコインの大量増発が背景に。ICOトークンに続きXRPにも米SECの訴訟が起こされ、暗号資産内でも明暗。


1-3 その他の産業

DXの鍵を握るモビリティー

佐藤 雅明●慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任准教授

ソーシャルディスタンスを保ちつつ社会システムを維持するため、多様なサービスで急速にDXが進みインターネット上へとシフトしている。社会を支えるインフラとして、モビリティーにこそDXが求められる。


1-4 新産業

シェアリングエコノミーの現在地と今後の展望

白石 隼人●EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ディレクター

シェアリングビジネスもコロナ禍による深刻な打撃を受けたが、新しい生活様式に伴う価値観の変化に対応し、巻き返しつつある。必要なものを必要なだけ生産し共有する本質的なサービスの成長に期待がかかる。

第2部 テクノロジーとプラットフォーム動向


2-1 技術とサービス

エッジコンピューティングと産業IoTの動向

林 雅之●国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) 客員研究員/NTTコミュニケーションズ株式会社

DX、AI、IoTなどの進展による膨大なデジタルデータ流通量の加速度的な増大と5Gの商用サービス提供に対応するため、エッジコンピューティングの活用が始まっている。

VRの進化と活用動向

水野 拓宏●株式会社アルファコード

5Gやコロナ禍の影響もあり、注目されたVRの分野では、HMDなどの機器が進化をとげ、新たなプラットフォームも登場した。2021年にはコストメリットも考慮した技術革新が課題となる。

パブリックプロトコルとDAOがもたらす新しい未来の社会

鈴木 雄大●Fracton Ventures株式会社 共同創業者

注目が集まる分散型金融アプリケーションのDeFi。パブリックプロトコルとして成長を続け、UI、UX分野にも影響を広げた。2021年はさらなるプロトコルの出現、DAO化の加速に期待。

Digital CES 2021レポート

清水 計宏●有限会社清水メディア戦略研究所

「CES 2021」はマイクロソフトが構築したプラットフォーム上で完全デジタル開催。コロナ禍のライフスタイルを支援するDX、SX分野の進化が止まらない。


2-2 クラウド/データセンター事業者

クラウド/データセンターサービスの動向

三柳 英樹●株式会社インプレス クラウド&データセンター完全ガイド 編集長/クラウドWatch 記者

“ニューノーマル”でさらに成長が加速するクラウドサービス。クラウドベンダーの需要に応じて国内データセンターの建設も相次ぐ。海底ケーブル再編を視野に入れた北海道データセンターの研究会も発足。


2-3 スマートシティ

ポストコロナの世界を牽引するスーパーシティ構想

杉山 恒司●株式会社ウフル CDTO(Chief Data Trading Officer)

ようやく動き始めた「スーパーシティ」構想。スマートシティの課題となっていた行政や業種の壁を越え、世界最先端の日本型未来都市を実現するための仕組みづくりが進んでいる。

第3部 インターネット基盤と通信動向


3-1 ドメイン名

ドメイン名の動向

横井 裕一●株式会社日本レジストリサービス(JPRS) 広報宣伝室

全世界のドメイン名登録数は、2020年第3四半期末で約3億7070万件となった。ISOCによる「.org」のレジストリ売却案がICANNに却下されたほか、英国のEU離脱による「.eu」への影響にも注目が集まった。


3-2 IPアドレス

IPv4/IPv6アドレス利用の動向

角倉 教義●一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター IP事業部・インターネット推進部(広報担当)

IPv4アドレスは、需要が継続する一方で、レジストリからの新規分配終了が近づいている。IPv6アドレスは、ステイホーム・在宅勤務の影響で、インターネット接続サービスにおける利用率が高まった。


3-3 トラフィック

インターネットトラフィックの動向

長 健二朗●株式会社IIJ イノベーションインスティテュート
福田 健介●国立情報学研究所

2021年は、COVID-19の感染拡大をきっかけに広がったステイホームの影響で、平日も週末と同様に昼間のトラフィックが増加。今後も自宅からのインターネット利用が増えるものと思われる。


3-4 通信事業者

国内通信事業者の5G戦略

天野 浩徳●株式会社エムシーエイ(MCA) 通信アナリスト

2020年春から5Gが商用化する一方で、政府が顧客流動化の低さと携帯キャリアの高い利益率を批判。NTTドコモの「Ahamo」投入で、2021年の市場は一気に料金引き下げ競争へゲームチェンジ。

5Gをめぐる海外通信事業者の動向

飯塚 留美、三澤 かおり、藍澤 志津、裘 春暉、米谷 南海、ウェドゥラオゴ イセン アジズ●一般財団法人マルチメディア振興センターICTリサーチ&コンサルティング部

世界各国で5Gサービスが開始。普及状況は中国と韓国が先行し、欧州では加入数で英国が抜き出ている。プライベート5Gは開発実証が進展し、2021年以降に本格導入の見通し。


3-5 その他の通信インフラ

DNSの動向

森下 泰宏●株式会社日本レジストリサービス(JPRS) 広報宣伝室 技術広報担当

2020年はDNSに対する新たな攻撃手法や脆弱性情報が相次いで発表され、対応が進められた年となった。サブドメインテイクオーバーによる被害が国内でも報告され、ドメイン名・DNSの管理の重要性が改めて注目されている。


3-6 インターネットガバナンス

インターネットガバナンスの動向

前村 昌紀●一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) インターネット推進部 部長

インターネットのガバナンスに関する議論が活気を帯びている。ルートサーバーシステムに対する新たなガバナンス機構の議論をはじめ、デジタル脅威に有効なIGFのあり方や2023年IGF日本開催に注目が集まっている。

第4部 サイバーセキュリティ動向


4-1 インシデント

2020年の情報セキュリティ動向

石井 泰鷹●一般社団法人JPCERT コーディネーションセンター 早期警戒グループ 脆弱性アナリスト

COVID-19を題材としたフィッシングに加え、Emotetの感染やSSL-VPNのアカウント情報公開など、組織活動に影響を与えるインシデントが複数確認された。

フィッシング詐欺被害の現状と対策

加藤 孝浩●フィッシング対策協議会 運営委員長

フィッシング詐欺情報の届け出件数が前年の2倍以上に急増。新たな手口で被害範囲が拡大しており、金融以外でも対策が必要になっている。


4-2 プライバシー規制

海外プライバシー保護の動向

寺田 眞治●一般財団法人日本情報経済社会推進協会 主席研究員
柊 紫央璃●一般財団法人日本情報経済社会推進協会 客員研究員

COVID-19のパンデミックがあぶり出した、プライバシーに関する考え方の違い。多くの国では基本的人権であり本人の判断に委ねられるものとする一方、個人情報を国が管理する中国のような例もある。


4-3 有害情報対策

インターネット上の違法・有害情報への取り組み

吉田 奨●一般社団法人セーファーインターネット協会 専務理事

2019年にSIAに寄せられた情報で違法・有害と判断されたのは約5万件で、前年から1万件以上の減少となった。その中で、リベンジポルノに関する情報は増加している。

第5部 社会動向


5-1 法律

インターネット関連法律の全体動向

岡村 久道●弁護士/京都大学大学院 医学研究科 講師

電波法、電気通信事業法及びNTT法、個人情報保護法、著作権法、金融商品販売法、割賦販売法などが改正。環境変化に対応し、特定高度情報通信技術や特定デジタルプラットフォーム関連法律が制定された。

2020年改正個人情報保護法の概要

北澤 一樹●弁護士/英知法律事務所

個人の権利では請求権の要件緩和や第三者提供記録の開示請求権創設、事業者の責務では漏えい等発生時の報告・通知の義務化や不適正な情報利用禁止の明確化。データ利活用では「仮名加工情報」が創設された。

2020年改正著作権法の概要

橋本 阿友子●弁護士/骨董通り法律事務所

リーチサイト運営者やアプリ提供者の責任が新たに規定され、ダウンロード違法化の対象が著作物全般に拡大するなどインターネットの海賊版対策が強化された。ユーザーの使用萎縮を防ぐ対策も講じられた。


5-2 政策

官民データ活用の動向

庄司 昌彦●武蔵大学 社会学部 教授

コロナ禍対応のため政府が民間データを利用する「BtoG」や、公共データ活用で社会課題に貢献するシビックテックの活動が活発化し、官民データ活用が本格化。政府は「デジタル庁」新設へ向け準備を進める。

IT基本法の論点──関連法令との一括改正

山田 肇●東洋大学 名誉教授

20年間、微修正にとどまってきたIT基本法を「デジタル推進法」に改正して、行政も含め、経済社会全般にわたるデジタルトランスフォーメーションに法的根拠を与える必要がある。

世界各国におけるAIの国家戦略

一般財団法人マルチメディア振興センター

Society 5.0の基盤技術でもあるAIについては、各国で戦略が策定され国際的なガイドラインも公開されている。同時に、経済だけではなく倫理・法制度といった社会的価値観の確立も求められる。

デジタルプラットフォーム規制の動向

寺田 眞治●一般財団法人日本情報経済社会推進協会 主席研究員
柊 紫央璃●一般財団法人日本情報経済社会推進協会 客員研究員

各国で進むデジタルプラットフォーム規制について、問題意識と規制対象の違いがあることに加え、思惑が大きく異なることで経済的・政治的な分断に拍車をかけかねない危険性も見えてきた。


5-3 防災

災害への対応とインターネット──東日本大震災から10年を迎えて

佐藤 大●一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART)代表理事/東北医科薬科大学病院

日本で初めてインターネットを活用した災害支援が広く行われた東日本大震災の発生から10年。この間の災害支援の変遷を振り返り、情報支援体制のあり方や新型コロナウイルス対策など今後の課題を整理する。


5-4 働き方

DX時代におけるテレワークの可能性と課題

大内 伸哉●神戸大学大学院 法学研究科 教授

コロナ禍を機に非接触で働けるテレワークが浸透した。デジタル変革(DX)が進み、働き方が雇用型から請負型へとシフトするアフターコロナにおいては、テレワークが標準的なものとなるだろう。


5-5 教育

「GIGAスクール構想」の概況とコロナ禍でのオンライン教育の高まり

関島 章江●株式会社電通 トランスフォーメーション・プロデュース局

「GIGAスクール構想」で全国1人1台端末と校内ネットワーク整備が進む中、コロナ禍での学びを保証するオンライン教育に関心と期待が高まっている。


5-6 メディアと社会

深刻化するフェイクニュース

平 和博●桜美林大学 教授

新型コロナウイルスの世界的大流行で、デマや陰謀論も国境を超え拡散した。フェイクニュース問題の発端となった米大統領選では、社会の分断を背景に、海外からの介入より国内発の情報混乱が目立った。

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