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SDGsローカライゼーション ――「地域再生大賞」から傾向を探る

「地域再生大賞」は、全国46の地方新聞と共同通信社が運営母体となって、地域活性化に取り組む団体を表彰する催しだ。同大賞事務局では、過去の受賞団体にSDGsへの意識調査を行った。この調査内容をもとに語られた地域づくりの傾向について、3月29日に開催された「ジャパンSDGsアクションフォーラム」のSDGsローカライゼーションセッションから取り上げる。

「地域再生大賞」は、人口減少、高齢化、格差、災害など、地域の課題解決に挑む団体を応援する思いを込めて2010年度に開設された。毎年度、秋に地方新聞社などが計50の団体を大賞候補として推薦し、選考委員による書類審査と現地調査を経て、年明けに大賞をはじめとして各賞を決定する。任意団体、NPO、企業、財団・社団法人など、これまでの受賞団体数は600に及んでいる。

「ジャパンSDGsアクションフォーラム」のSDGsローカライゼーションセッションでは、地域再生大賞事務局を運営する共同通信社編集局企画委員の橋田欣典氏が登壇し、活動団体とのやりとりなどを通じて得た知見を参加者に共有した。

2020年、コロナ禍での大賞運営を検討する中で、過去の受賞団体すべてにコンタクトを取りヒアリングした橋田氏。電話の向こうからは想像以上に元気でパワフルな様子が返ってきたという。「びっくりするほど皆さん元気で、国や自治体が困ってるときに自分たちならもっと自由な発想で取り組むことができるのではないかと活動されていた」(橋田氏)

SDGs目標に関係する取り組みを行う地域団体は約9割にも

同事務局では、2020年夏から2021年初めにかけ、第1~11回の受賞550団体すべての現在の状況を取材し、電子書籍『まちづくりチャレンジ600』としてまとめた。その取材やアンケートを取る中で、地域活性化に取り組む人たちのSDGsに対する意識の高さが分かってきた。

橋田氏は「SDGsへの認識度合いはとても高く、8割の団体が何かしらのSDGs目標に関係する取り組みを行っていた。こちらから分析し、該当するSDGsターゲットを示してあげると、実際に実践している割合は9割にもなった」と想像以上の結果だったことを説明。さらに「彼らは、地域のために何ができるかを過去にとらわれずに、フラットに考えている」と加えて述べた。

また、橋田氏は、SDGsへの意識調査の結果を「データテキストマイニング」によって「視覚化」し、示した。

SDGsへの意識調査結果を「データマイニング」手法を使って示したもの。青色が名詞、赤色が動詞、緑色が形容詞。出展:「ジャパンSDGsアクションフォーラム」SDGsのローカライゼーション第三部 
地域再生大賞事務局による資料

この結果を踏まえて橋田氏は「SDGsを中心に地元の団体は”取り組む””何かをする”といった実践にものすごく傾斜している。さらに”では何をするのか””どのようにするのか”といった視点で話がどんどん回っている。特に『森林』などは一番身近なところからSDGsに触れることができるもの。そこから『観光』や『生産物』などにもつながっていく。地域の中でいろんな層を巻き込んで複合化し、コンプレックスを作っていると感じた」と感想を述べた。

セッションでは、データ内の5つの動詞「取り組む」「掲げる」「つながる」「知る」「考える」が、地域活動のキーワードになるのではないかと注目された。「掲げる」については、「発信する」「アピールする」とも置き換えられるとし、橋本氏に「発信力」についてどう見ているかの質問があった。

同氏は、「地域の団体はそもそもリモートが大変得意。もともと出張などに充てる資金が少なく、コロナ禍の前からリモートを使いこなしていた。FacebookなどのSNSに積極的に取り組んでいたところに、クラウドファンディングも活発になってきた。そこに参加することでさらにネットワークが広がってきた。この2年の動きはすごく大きいと感じている」と答えた。

「独創性」と「巻き込む力」が鍵を握る

地域再生大賞のノミネートを行う際に記者たちが重視しているのは「独創性」と「地域を巻き込む力」だと橋田氏は説明する。「地域だけでは到底できない。やはり地域間でいろいろな人が一緒に取り組まないと前に進まない。どれだけ地域の人たちを巻き込めるかが大事になってくる」「若い層の参加が急速に増えてきていること、彼らが中核となってどんどん周りを巻き込んでいっている」(橋田氏)

今後については、「最近、交流人口とか関係人口などといわれるが、皆さんの場合には共感人口、つまり『そうだよなぁ』と思う人口を増やしていると感じている。地域のメディアもつながって発信していくことで、そういった共感人口を増やしていければSDGsももっと広がっていくのではないか」と語った。

受賞団体データを集めた電子書籍『まちづくりチャレンジ600』と、「ジャパンSDGsアクションフォーラム」のアーカイブは以下のウェブサイトでそれぞれ閲覧することができる。

なお、書籍『SDGs白書2022』では、この地域再生大賞受賞団体アンケート結果を日本経済研究所の池原 沙都実氏が分析した寄稿記事を掲載している。地域でSDGsを推進する方にチェックしていただきたい。


文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:iStock.com/RomoloTavani
編集:タテグミ