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カーボンニュートラルに向かうデジタル基盤を支える技術 ~『SDGs白書2020-2021』より

「CEATEC ONLINE 2021」では、カーボンニュートラルが掲げられ、省電力製品や次世代電池も出展された。現在発売中の『SDGs白書2020-2021──コロナ禍の先の世界を拓くSX戦略』でも、グリーンなデジタル社会を先取りするテクノロジー企業の製品を紹介している

再エネの安定化に役立つ日本ガイシのNAS電池

素材メーカーとして100年以上の歴史を持つ日本ガイシ。長年研究が続けられてきた高度なセラミックス技術を基に、デジタル産業を支える基盤技術を数多く生み出している。

一つは、同社が世界で初めて実用化したNAS電池だ。これは、負極(マイナス極)にナトリウム(Na)、正極(プラス極)に硫黄(S)、両電極を隔てる電解質にファインセラミックスを用いて、硫黄とナトリウムイオンの化学反応から充放電を繰り返す蓄電池である。

大容量、高エネルギー密度、長寿命、自己放電をしないという特長を持ち、これまでの鉛蓄電池と比較すると約3分の1の大きさでも大容量の電力を貯めることができる。 太陽光発電や風力発電などと組み合わせれば、メガワット級の電力貯蔵システムとして長時間にわたって安定した再生エネルギーを供給できるという。

蓄電池は自然災害に対する備えにもなる。東日本大震災では既に東京電力の非常用電源としてもNAS電池が使われていたが、近年は天候条件によって不安定になる再生可能エネルギーを安定して供給できるようになることへの期待が最も大きいそうだ。

現在、同社のNAS電池は全世界200か所以上に設置されている。需要の変動を効率よく管理するスマートグリッドの構築に利用されている。


IoTデバイスに適した超小型リチウム電池「EnerCera」

日本ガイシが提供するもう一つの注目したい電池は「EnerCera(エナセラ)」シリーズだ。チップ型で、超小型・薄型のリチウムイオン二次電池としてIoTデバイスやウェアラブルコンピューティングへの活用が期待される。

電極に、同社独自の「板結晶配向セラミックス板」が使用されている。板結晶配向セラミックス板は、活物質であるセラミックスだけで構成され、電極型・薄型でありながら「高容量・低抵抗で、高温プロセスでの実装も可能」(SDGs白書)という特性がある。

IoTデバイスは、センサーとしてさまざまな場所に多数設置する必要があり、電池交換や充電といったメンテナンスからの解放が望まれる。また、高温や低温といった環境への耐性も必要とされる。同社では、そうしたIoTのさまざまなニーズに応える最適な電源として、EnerCeraの活用を提案している。

サブナノセラミックス膜によるCO₂ 分離も紹介

『SDGs白書2020-2021』の産業別動向では、油田の排出ガスからCO₂を分離することができるCO2-EOR(二酸化炭素原油増進回収法)のサブナノセラミック膜技術など、日本のガイシの先端技術や、化学メーカーによるケミカルリサイクルへの動きなど、BtoB企業の研究開発がSDGsにどうつながるかを紹介している。ぜひチェックしていただきたい。

文:錦戸陽子
インプレス・サステナブルラボ主席研究員。『インターネット白書』と『SDGs白書』の編集を担当。熊本県天草郡と横浜の二拠点生活中。

編集:タテグミ
クレジット:iStock.com/voyata

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インプレスグループの研究組織であるインプレス・サステナブルラボでは「D for Good!」や「インターネット白書ARCHIVES」の共同運営のほか、年鑑書籍『SDGs白書』と『インターネット白書』の企画編集を行っています。どちらも紙書籍と電子書籍にて好評発売中です。