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介護×シェアリングエコノミー――ネットで頼める訪問介護サービス「CrowdCare」

シェアリングエコノミー協会が7月27日に開催した「シェアリングエコノミー×SDGsの取り組み最前線が分かるセミナー」から、クラウドケアが運営する介護シェアサービス「CrowdCare」を取り上げる。

訪問介護におけるスキルシェアマッチング

日本の社会保険制度の一つ「介護保険制度」は、認定を受けて被保険者になると1割(または2割)の負担で国からさまざまなサービスを受けることができるというものだ。介護を社会全体で支えることを目的として2000年に創設されたものだが、現在約674万人が要介護(要支援)認定を受け、国内で介護を必要とする高齢者を支える制度として定着してきた。さまざまなサービスが受けられるが、そこには利用制限もある。

クラウドケア取締役COOの桐山典悦氏は、「すぐに利用したいとなっても申請から認定までにどうしても時間がかかってしまう。認定された等級によっては、利用可能な時間や回数の制限がある、通院付き添いや生活支援に対応できないといった、介護保険から漏れてしまう部分でサービスを必要としている人たちがいる」と話す。

また、昨今の訪問介護員(ヘルパー)の有効求人倍率は15倍となっていて、人不足といわれている現状がある。こうした背景をもとに、介護を必要とする依頼人とヘルパーを適切にマッチングさせることが「CrowdCare」の運営目的だと、同氏は説明する。

https://www.crowdcare.jp/

CrowdCareでは、副業として、あるいはフリーランスのヘルパーが登録をし、高齢者や障がい者のニーズに合わせてサービスを提供する。

具体的には、身体介助や生活援助を提供するさまざまな”スキルシェア”のマッチングを行う。例えば、介護・介助手伝い、通院付き添い・院内介助、外出余暇の付き添い、見守り・話し相手、家事代行、その他の生活支援、認知症ケア、障害者ケア、介護施設出張ケア、買い物代行など幅広く、24時間365日、ウェブサイトから依頼できるのが特徴となっている。

桐山氏によれば「一般的に介護保険外といわれる自費サービス分野では1時間当たり5000~1万円程度と高額になるケースがあるが、同社のサービスでは税込みで2750円からと利用しやすい価格設定になっている」。これは、定期依頼などで安価になってくるそうだ。

「CrowdCare」で提供されるサービスの例 https://www.crowdcare.jp/
※「シェアリングエコノミー×SDGsの取り組み最前線が分かるセミナー」プレゼンテーション資料より

後遺症に対するリハビリや訪問音楽サービスなどこれまでの介護支援のその先へ

クラウドケアの取り組みは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」と目標11「住み続けられるまちづくりを」に該当し、そこを目指していると桐山氏は語っている。

今後CrowdCareで目指す先について「WHOが定義する健康とは『肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること』。そういった観点からは、まだまだ保険制度だけでは賄い切れないのではないか」と前置きした上で、「介護、家事、生活支援という部分はもちろんだが、それ以上に自分がやりたいことや楽しみたいことができる。最後まで住み慣れた場所で、自分らしい生活を送ることができる。そういった一人ひとりのウェルビーイングに貢献していきたいと考えている」(桐山氏)。

CrowdCareに付随する新たなサービスも次々と発表している。

「後遺症リハビリサービス」では、「脳梗塞リハビリステーション」を運営するスターパートナーズと業務提携し「脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の後遺症に対するリハビリサービスを自宅訪問にて提供する。同サービスをスキルシェア形式で提供するのは国内では初という(同社調べ)。

この分野のリハビリは、医療・介護保険制度内だけでは受けられる量が十分ではなく、リハビリをしたくてもできない「リハビリ難民」が課題化しているため、ニーズは高そうだ。

また、音楽レクリエーションの専門家を呼べる「訪問音楽サービス」も開始した。こちらはリリムジカとの提携によるもので、同社は単に演奏を聴いて楽しむという以上に「片手にまひがあるがピアノを習いたい」「歌が好きな認知症の母に、本人のペースで思いっきり歌える時間をつくりたい」などの個人プログラム依頼を受けてきた実績を基にしたサービスを提供するという。

最後に紹介したいのが、企業の福利厚生という形での活用だ。8月18日付で、法人向けの「福利厚生プラン」がリリースされた。同時に、ガイアックスが同プランを導入し、同社社員とその家族向けに介護保険外の訪問介護・家事・生活支援などのサービスを優待価格で提供するとも発表した。

企業が福利厚生として扱うことで自費サービス利用のハードルが下がれば、通常の介護保険のサービスとうまく活用していくことで「介護離職」の問題解決につながるのではないか。訪問介護専門家によるスキルシェア、そしてさまざまな分野や企業との提携による介護業界の活性化にも期待したい。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:iStock.com/hisa nishiya
編集:タテグミ

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