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『SDGs白書2020-2021』で紹介した、 生活者が参加できるリサイクルプログラム

『SDGs白書2020-2021──コロナ禍の先の世界を拓くSX戦略』では、26人の専門家の寄稿と約180点の統計資料によって、ここ1~2年のSDGsの状況と国内の取り組みをまとめている。ここでは、その「産業別動向」に登場した企業の取り組みの中から、生活者に身近なリサイクルの話題をご紹介する。

ライオンの「ハブラシ・リサイクルプログラム」

ハブラシと聞いて誰もが思い浮かべる企業はライオンだろう。国内市場トップシェアを持つ同社では、口腔の健康のために、月1回のハブラシ交換を推奨している。しかし、ハブラシの交換頻度が増えるとプラスチックごみの増加につながってしまい、利用者も1か月でハブラシを捨てるのは「もったいない」という意識を持っている。

そこで同社は、テラサイクルジャパンと協働で、2015年に家庭の使用済みハブラシを回収し、その材料をもとに植木鉢などの新しいプラスチック製品をつくる取り組みを始めた。学校や団体などが事前にアカウントを登録すれば、このプログラムに参加することができる。集めたハブラシは回収事業者が引き取り、重さに応じてリサイクルポイントが付与される。このポイントは、リサイクル後のプラスチック製品(植木鉢など)と交換したり、寄付をしたりできる。

【ハブラシ・リサイクルプログラム】

自治体、学校、歯科医院など回収拠点数は2021年7月時点で871拠点、回収ハブラシは約86万本になった(同社ウェブサイトより。SDGs白書掲載時点よりも増加)。

花王とライオンによる、シャンプーや洗剤の容器の分別回収実験

ライオンはまた、同じ消費財メーカーである花王とともに、シャンプーや洗剤の使用済み詰め替えパック(フィルム容器)を分別・回収する実証実験を行っている。東京都墨田区にあるイトーヨーカドー曳舟店に専用のボックスを置いて回収し、その資源から、また同じ容器を製造する「水平リサイクル」と呼ばれる取り組みである。

花王の発表によれば、2020年10月30日から2021年6月15日までに回収したフィルム容器は約5200枚で、計画の2倍の数値だという。

【活動のコンセプトとフィルム容器の洗い方を説明した動画】

シャンプーや洗剤の使用済みフィルム容器は、回収やリサイクルが難しいとされている。分別回収の仕組み以外に容器の品質設計やリサイクル材料の活用方法、さらに生活者への普及・啓発も検討課題であり、今後多様なステークホルダーと共に社会の意識を変えていく必要があるという。

セブン&アイグループのペットボトル回収、nanacoポイントと連携

イトーヨーカドーや、コンビニエンスストアのセブン-イレブンなど、グループで約2万2500店舗を持つセブン&アイグループ。現在、重点的に取り組んでいるのはペットボトルのリサイクルで、店頭の自動回収機では、電子マネー「nanaco」でタッチしてからペットボトルを回収させると、ポイントを付与するサービスも展開している。2020年度は、グループ全体で延べ約2000万人が利用し、ペットボトル約3億3000万本が回収された。

【nanacoに対応したペットボトルリサイクル】

セブン&アイグループは再生素材を原料にした商品開発にも力を入れている。2019年6月には、日本コカ・コーラとの共同企画により、店頭で回収したものから再生したPET樹脂100%のペットボトルを採用する「一(はじめ)緑茶 一日一本」を発売した。回収したペットボトルの材料から商品をつくり、また同じ流通グループ内で販売していくという「ボトル to ボトル」の取り組みである。

【セブン&アイ・ホールディングスのプレスリリースより】

世界初のペットボトル100%使用商品

同グループでは、小売業ならでのサーキュラーエコノミーの視点を3つ挙げている。1つめは「回収拠点」としての役割、2つめは「再生素材を原料とする商品の販売」、3つめが「お客様の理解促進」である。「使い終わったものは『ごみ』ではなく『資源』と考えるよう、意識を変えていなくてはならない」と、SDGs白書で述べている。

文:錦戸陽子
インプレス・サステナブルラボ主席研究員。『インターネット白書』と『SDGs白書』の編集を担当。

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