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スペースやモノのシェア1000円分で減らせるCO2排出量は? シェアリングエコノミー協会とICRが共同調査

シェアリングエコノミーは、資源の共有や効率的な活用が可能なことから脱炭素化に貢献するといわれている。具体的にはどのようなサービスで、どの程度の効果があるのか。シェアリングエコノミー協会と情報通信総合研究所(ICR)が共同で行った「シェアリングエコノミー関連調査 2021年度調査結果(SDGsへの貢献効果)」から取り上げる。

同協会は1月の調査報告で、2021年度のシェアリングエコノミーの市場規模は過去最高の2兆4198億円となったことを発表するとともに、2030年度予測が14兆2799億円(課題解決シナリオ)に拡大する見込みと推定した。

※関連記事:国内シェアリングエコノミー市場規模が過去最高!2030年に向けて14兆円規模に

3月10日付のシェアリングエコノミー関連調査では、この市場規模14兆2799億円の想定を基に、2030年度に予測される「CO2排出削減効果」や「資源消費削減効果」を推計している。

シェアリングエコノミーによるSDGsへの貢献効果は多方面にわたる。今回は、この中からスペースやモノに着目し効果測定を行っている。

CO2削減は年間445万トンに――宿泊業や小売業の1年分を上回る削減効果

CO2排出量の削減効果の調査結果によると、会議室などスペース(場所)のシェアサービスを活用した場合には、新築建設の減少によって351万トン、建設物解体の減少によって20万トンのC削減効果が見込めるとしている。同様に、モノのシェアサービス利用では、新品購入の減少によって63万トン、家庭ごみの減少によって11万トンの削減効果があるとしている。

これら減少値の合算は年間445万トンとなるが、これは宿泊業(351万トン)や小売業(330万トン)が1年に排出するとされるCO2排出量を上回る量になる。

シェアサービス利用増加によって建設業·製造業の生産額が減少する効果、廃棄物減少による効果から算出されている。

シェアリングエコノミー関連調査では、スペースやモノのシェアサービスの活用前と活用後の「資源消費量」も比較している。合算値で見ると、エネルギー消費では52Pcal(7.7%減)、水資源では121万リットル(9.3%減)、バイオマスでは113万m3(8.8%減)、その他の資源では1796万トン(8.9%減)と、それぞれの消費量の削減効果を出している。

例えば、エネルギー消費における削減量52Pcalは、「食品製造業」が1年に排出するとされるエネルギー消費量53Pcalと同程度となっている。

シェアリングサービス利用1000円分がもたらす効果とは

個々の利用者にとって分かりやすい指標となるのが、スペースやモノのシェアサービスを1000円分利用した場合の「資源消費量」の削減効果だろう。モノのシェアはフリマアプリなどを使った売買によるものとレンタル利用で分けて算出するとともに、普段の生活環境の中での資源利用の参考値も合わせて記載している。

例えば「水資源」においては、スペース関連の利用で83リットル、モノのシェア売買によって380リットル、レンタル活用で247リットルの削減効果があるという。参考値である一般家庭の浴槽の水量200~280リットルと比べると、その貢献効果を実感しやすい。

具体的な数値によって示された今回のシェアリングエコノミー関連調査は、シェアサービスの活用がもたらすSDGsへの貢献度を知り、考え方を理解する上で役立つ内容となっている。算出方法などを含めた詳細については「シェアリングエコノミー関連調査 2021年度調査結果(SDGsへの貢献効果)」にて確認できる。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:iStock.com/OLENA SAKHATSKA
編集:タテグミ

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