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夜更けの思索宮

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時には哲学を、古代ギリシャを、あるいは皮肉やのイタリアの彼氏のような、ちょっといつもの場所をはなれて遊ぶ
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#読書感想文

『地中海世界』フェルナン・ブローデル - 歴史

 前半のまとめとなる章で、フローデルは安定性の本質について問う。地中海世界は、3つの文化的共同体によって成り立っている。それは、2つのキリスト教圏とイスラム文化圏だ。 ローマと西ヨーロッパを形成するローマ文化圏 今の西ヨーロッパは、ローマを中心とするキリスト教圏だ。フローデルは、もう一方のキリスト世界との違いを、『真理』という言葉から示す。ラテン語の真理、ヴェリテ(veritas)は、理性にとって確実なこと、現実を意味する。例として、キリストの磔刑に関する絵画での表現や、復

『地中海世界』フェルナン・ブローデル - 夜明け

 閉じたフェニキアと、開いたギリシャ、同じ地中海の海洋民族として活躍した民の違いに興味を持った。貿易をする以上、活動は開いているが、信仰をもとに民のアイデンティティを硬く保つものと、貨幣という経済的武器をもとに、自由に文化を開花するギリシャ。後のローマの登場で、ギリシャとオリエントはヘレニズム文化として融合する。ローマは、ここに登場した原始都市を都市に仕上げ、大きな組織を構成した。その夜明け前の地中海世界を覗いてみよう。 小アジア原始都市の誕生 各地を放浪して暮らしていた小

『地中海世界』フェルナン・ブローデル - 海

地中海の唯一の豊かな漁はまぐろ漁 学生の時、訪れたギリシャで食べたのは、ヤギのチーズとオリープがたくさんのったサラダとムサカだった。海に囲まれているのに、魚が少ないと感じたことを思えている。「水産資源としての地中海は貧しい」とブローデルはいう。それもそのはず、google mapが示す地中海は深く、魚が好むプランクトンなどの餌がない。そのため、限られた種類の、少量の魚しか取れないのだ。 道としての地中海 一方、「交通路」として地中海は、地中世界の「富のための道具」である。今

『地中海世界』フェルナン・ブローデル - 陸地

先日、FBで安西さんが読書会をすると話していて、それも題材は欧州の文化に関する本フェルナン・ブローデルの『地中海世界』だと知り、合流することにしました。その最初の一章を1000文字制限でお送りします。 ~~~~~~~~~~~~~~ 「節制」を運命付けられた土地 地中海というと何を思う浮かべるだろうか?アマルフィのアッズーリ色に染まる空、海はブル・カプリ。イタリアには青緑色を語り色に地名が多く使われている。それらに彩られた豊穣の光景を浮かべるのではないか。  しかし、ブ