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夜更けの思索宮

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時には哲学を、古代ギリシャを、あるいは皮肉やのイタリアの彼氏のような、ちょっといつもの場所をはなれて遊ぶ
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#地中海世界

『地中海世界』フェルナン・ブローデル編 - 前半

 地中海世界は、従来の土着文化が、自由、人間性、理性、論理性の人間謳歌のヘレニズム(古代ギリシャ)、ヘレニズムに触発されて統制、組織化されたヘブライズム(ユダヤ・キリスト教)によって彩られたモザイク。今回は、前半のまとめとしてその変化の流れをみていこう。 陸地:「節制」を運命付けられた土地 地中海世界の成り立ちは、厳しい自然とともにあった。南にアフリカの砂漠、西に大西洋の雨に囲まれたこの領域は、消して恵まれた環境ではなかった。地中海は、移動手段がなければ、ただの障害物。浅瀬

『地中海世界』フェルナン・ブローデル編 - 空間

 前編の最後は、ブローデルの弟子エマールの『空間』。彼は、空間の中に社会的関係を空間化した『町』と、その対比である『田舎』について語る。 人の関係を表した町と人を拒絶する田舎 痩せた土と石が広がる田舎には人影がなく、そこを訪ずれるのは、遊牧者のみ。一方、町は、利害関係者の関係によって同心円の階層状に広がり人が住む。また、町の周りに広がる田園は、町によって創られるという。田園は町の人々の食を満たすために存在し、それが十分であれば自らは増殖しない。田舎と町の境界には、森と畑が広

『地中海世界』フェルナン・ブローデル - 歴史

 前半のまとめとなる章で、フローデルは安定性の本質について問う。地中海世界は、3つの文化的共同体によって成り立っている。それは、2つのキリスト教圏とイスラム文化圏だ。 ローマと西ヨーロッパを形成するローマ文化圏 今の西ヨーロッパは、ローマを中心とするキリスト教圏だ。フローデルは、もう一方のキリスト世界との違いを、『真理』という言葉から示す。ラテン語の真理、ヴェリテ(veritas)は、理性にとって確実なこと、現実を意味する。例として、キリストの磔刑に関する絵画での表現や、復

『地中海世界』フェルナン・ブローデル - 夜明け

 閉じたフェニキアと、開いたギリシャ、同じ地中海の海洋民族として活躍した民の違いに興味を持った。貿易をする以上、活動は開いているが、信仰をもとに民のアイデンティティを硬く保つものと、貨幣という経済的武器をもとに、自由に文化を開花するギリシャ。後のローマの登場で、ギリシャとオリエントはヘレニズム文化として融合する。ローマは、ここに登場した原始都市を都市に仕上げ、大きな組織を構成した。その夜明け前の地中海世界を覗いてみよう。 小アジア原始都市の誕生 各地を放浪して暮らしていた小