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【寄稿】CMV青木代表:ヘルスケア投資家の矜持を示す「インパクトレポート」

こんにちは。D3 LLCの永田です。
今回は、ヘルスケア特化のVCで、業界の機微を踏まえたそのご活動に絶大な信頼を誇るキャピタルメディカベンチャーズ(CMV)の青木代表に寄稿を頂きました! 先日、青木さんがFacebookにCMV投資活動の「インパクトレポート」についての投稿をされ、ポストに大変感銘を受けました。是非とも弊社のnoteでも紹介させてほしいと、お忙しい中無理を申して、寄稿を頂きました!(ありがとうございます!)

ヘルスケアのイノベーションに賭けるヘルスケア特化ファンド経営者としての青木さんの、投資プロフェッショナルとしてパッション・矜持が強く描かれて、業界の同志として、目線があがり、励まされる記事です。VCは悪く言われることも多いわけですが、このような投資家もいることも、起業家の皆様には是非知っていただきたいです。

ー以下、青木代表による寄稿ー

投資先の社会的なアウトカムを可視化する

ヘルスケア・ニューフロンティアファンドのインパクトレポート

キャピタルメディカ・ベンチャーズの青木です。こんにちは。
当社はヘルスケアに特化したベンチャーキャピタルとして『ヘルスケア・ニューフロンティアファンド』を運営しており、現在、ヘルスケアスタートアップ16社へ投資を行っています。

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先日、私たちの活動をまとめた『インパクトレポート』を発刊しました。『インパクトレポート』とは各投資先の事業がどのようなアウトカム(社会的な成果)を出すのか、そこに至るまでの道筋を因果関係を描いたロジックモデルなどでまとめたものです。

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社会インパクトを評価する動きは『SDGs投資』や『ソーシャルインパクトボンド』、『インパクト投資』といった言葉と共に徐々に広がりをみせているようです。ソーシャル系の投資家が集まるイベントやコミュニティも増え「社会に良い会社へ投資をしよう、その為に少し稼ぐ力が弱くてもそこは許容しよう。それよりもソーシャルグッドな事業へお金を廻すことで社会を良くするのだ。」という優しい雰囲気があります。そのようななかで投資先のインパクトレポート発行している国内VCファンドは、おそらく私たちだけかと思います。ヘルスケア領域のスタートアップは、そのサービスや技術の社会貢献性が高く、純粋な営業活動がより良い社会の創造と同義になっています。売上や利益などの会計数値だけではなく、社会的なアウトカムをまとめることは、手前味噌ながらとても有意義なことだと思っています。
と、ここまで言っておいてなんですが実は私、『インパクト投資』という言葉やその界隈の雰囲気が嫌いだったんです。「インパクトレポートなんか作って意味あんの?」とすら思っていました。

実は嫌いだったインパクトレポート

純粋にとても儲かる事業で、成長性が期待できるから投資をしているのに『インパクト投資』や『インパクトマネジメント』などソーシャル投資系の用語を使うことで「社会に良いことはやっているけど、儲ける力はちょっと・・・」って暗に伝え、半人前のレッテルを貼っている感じがしていました。自ら投資先の可能性を否定しているようで失礼な気がしたので嫌だったんです。
キャピタリストは、プロとして、儲ける力と成長が期待できるスタートアップに投資をします。ただ、私たちの投資先は本当に素晴らしい事業を行っていて、それぞれのmissionやvisionが実現できると、社会がとてつもなく良くなるので、『社会的インパクト投資』や『SDGs投資』の部類と相性が良いだけなんです。
繰り返しますが、私たちが投資させてもらっているヘルスケア系スタートアップは、単に社会的に意義のある事業領域であるだけでなく、ちゃんと商売として儲ける力を持っています。決して半人前なんかではないのです。

投資先利益の最大化とキャピタリストの矜持

スタートアップは、日々、理想と現実のギャップで苦しみ、残キャッシュを眺めながら、不十分なリソースで、やりたいことを後回しにして、泥水を啜りながら前進しなくてはならず、株主の要求を応えることに力を注いでいます。そのために信念を曲げる経験もたくさんしています。「なんで起業したんだろう・・・」、「やりたいことって何だったっけ・・・」、と目的を見失いそうなこともあるでしょう。
 私たちキャピタリストは、LPの皆様からお預かりした大切な資金を増やすことが仕事です。期待リターンが見込めるならばできるだけ早くExitできる方が良く、ともすると短い視点で収益を稼ぐことを要求してしまいます。その一方で「より良い社会を作るために頑張っている起業家を応援したい、その目標を実現する為に支援したい」という支援者の一面があります。私はヘルスケア領域での起業家が作り出す未来に全力で支援したいと思っています。LPからお預かりした資金を最大限に増やすことがその仕事のすべてではありますが、その運用方法にはそれぞれの矜持があります儲かるけど何のためにこの仕事をやっているのかわからないと嘆くチームよりも、自分達の仕事が未来を変えるのだと思って働いているチームを私は応援したいのです。

インパクトレポートは、作る度にこの矜持を思い出させてくれます。作成の中で考える目標実現のプロセスは、起業家に原体験を想起させくれますし、私が投資したいと思った初心を思い出させてくれます。当初意義が良くわからなかったこのインパクトレポート、今では全VCファンドが作成したら良いのに、色んな社会課題を解決できる個性的なインパクトレポートが増えればいいのに、とまで思うようになりました。

個性的なインパクトレポートが増える世界

最後に改めてお伝えしますが、私たちのファンドは儲かるヘルスケアスタートアップに投資します。そして、ヘルスケア領域で利益を最大化させようと思うと、しっかりとアウトカムを出し続けないといけないのです。この原則を忘れて刹那的な利益獲得に走ると、獲得利益の総量が減ることがあります。アウトカムを出すことこそ、競争優位になり利益を最大化させること直結するからです。インパクトレポートの作成は、この原点を思い出させ、投資先の収益の最大化を思考させてくれる、ヘルスケアキャピタリストにとって1年に1度の大切な仕事なんだと思います。

 是非、色んなVCファンドから、個性溢れるインパクトレポートが発刊され、社会に良い影響を与えるスタートアップがたくさん生まれるような世界になればと思っています。

ー青木代表の寄稿ここまでー

いかがでしたでしょうか。一つ一つのメッセージに強く・深く共感します。いわゆるテック系スタートアップのような速度感を得られず苦しむ事が多いヘルスケアスタートアップが、医療・社会を少しでも良い方向に変えていこうとされる起業家を焦らず信じて向き合うこと。同時に、機関投資家・ファンド経営者(General Partner)として、ファンド出資者へのリターンを最大化が職責であるから、これらのバランスを取ること。これが難しい、とされる。

しかしながら、社会への貢献とリターンはバランスではなく、同値である。この信念を青木さん/CMVはお持ちで、弊社の信念と非常に重なるところがございます。

この、長い目線でじっくり支援する姿勢は、米国のヘルスケアVCトップ10のVCが実践していたことでもあります。

起業家が信念を持ってチャレンジをされている中で、支援をさせて頂く投資家が同等かそれ以上の信念を持っているべきである。そう思わされる、青木さんの寄稿でした。青木さん、本当にありがとうございます!


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