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デジタルヘルスでも同様:専門性が重要?(序説)

こんにちは。D3 LLCの永田です。

特に米国VC分析は、随分とマニアックで、素人には全くおもしろくないであろう記事を公開したつもりですが、多くの方に反響・感想を頂けて驚きました。

さて、誤解を呼びがちだったのは、議論してきた「ヘルスケア」は創薬バイオに限った話ではないのです。いわゆる、「デジタルヘルス」も含まれた分析であります。弊社も、創薬・バイオに加え、デジタルヘルスを投資対象としています。実は、弊社パートナー陣の中でも、私は特にデジタルヘルス分野のイノベーションを追っています。たとえば、先日も、京都大学が主催したデジタルヘルスイベントの企画運営なども、京都大学医学部附属病院黒田教授や医学部産学連携本部の鈴木先生らという、尊敬すべき先生方と進めさせて頂きました。

なぜ、デジタルヘルス領域でも、創薬・バイオ同様の性質が必要と考えられているか。今回と次回で、定性的な話で恐縮ですが、デジタルヘルスセクターの成り立ちと苦労から、解説して参りたいと思います。

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ヘルスケアxIT産業の波と苦悩。そして限界

昔から、HIT(Healthcare IT)といわれたり、医療xIT、というものはありました。古くはMicrosoft。そして、Googleも。もしくは日本の情報通信企業も。いろいろ可能性を見てチャンレンジして、それでも爆発的な成功はありませんでした。この業界長い人が理解しているのは、この、ITxヘルスケアブームは、定期的に来て、去る。そういうものでした。私も、戦略コンサル時代、TMT (Telecom Media Technology) x Healthcareの戦略・イノベーション助言を強みにしていたので、多くを学び、助言してきましたが、一筋縄には行きませんでした。

一つ大きなハードルがありました。それは、IT企業は「健康リスクのある領域に踏み込み難い」という意識です。

特に生命への介入度の高い医薬品産業はもっている感覚ですが、人体・疾患・健康、という極めて高度にバランスされたシステムに介入するには、リスク(副作用・失敗)を取らざるを得ません。そして、ここに踏み込めないと、価値が出ません。価値が出ないから、ビジネスになりません

踏み込むための勇気は、医薬品(医療機器も)企業でないとなかなか持てないものだと、戦略コンサルの経験で学びました。Medical Product開発をサイエンスと捉え、個人の不幸や命を、人類の医学の進歩の糧とします。残酷ですが、そういう狂気の世界で、命と向き合うことが、求められます。

限界:命と向き合うこと

この感覚をお伝えするのに、とてもお薦めするドラマのシーンがあります。

司法ドラマ、リーガルハイ2のスペシャル、医療裁判の話です。

引用します:

科学に必要なものはデータです、人生でも名前でもない。医学を前に進めるために必要なことは、遺族と一緒に泣くことではない、直ちに次の患者の治療にあたることだ。彼がこんなことを言っていた、「病院が潰れようと、家族がいじめに遭おうと、そんなことはどうでもいいことだ」と。そのあとにこう続けたかったのではないでしょうか、「医学の進歩に比べれば」。血も涙もとっくに捨てたんですよ。
何が、何が科学だ!科学なら人を殺してもいいのか!?
進歩と引き替えに犠牲を要求してきたのが科学だ。
その死の一つ一つが医療を進歩させてきた。現代の医療は、その死屍累累の屍の上に成り立っている。誰しも医学の進歩のためには犠牲があっても仕方がないと思っているはずだ、その恩恵を受けたいからね。しかし、その犠牲が自分や家族であると分かった途端にこう言うんだ、「話が違う!」と。なんで自分がこんな目に遭わなければいけないんだ!誰のせいだ!誰が悪いんだ!誰をつるし上げればいいんだ!
教えてやるよ、訴えたいなら科学を訴えろ!あなたのご主人を救えなかったのは現代の科学だ!
だったらせめて狂気の世界で戦い続ける者たちの邪魔をするな

このシーンは、何度みても目頭が熱くなります。私は医師ではないですが、仕事柄、患者さんの命のために、ギリギリで立ち向かっている臨床医の方、少しでも多くの患者さんを救うために、死力を尽くして創薬に向かっている研究医・製薬企業(ベンチャー含む)の方と、深い議論をさせていただきます。

この世界は狂気の世界です。私達も、投資先評価(デュー・デリジェンス)をさせていただくときに、たとえば、抗がん剤の治験結果でいえば、CR(癌完治)が何人、PD(むしろ癌が大きくなった)が何人、ADE(有害な副作用)が何人、OS(患者さん生存期間)が何日、と会話します。数字で議論しますが、n=1、一人ずつ、かけがえのない人の人生です。その方の、ご家族や仲間がいます。底をしれない悲しみがあります。それを知った上で無視をして、「狂気」のもとに、未来に向かうのが、Medical Products開発。それを生む生業は、業が深く、覚悟がいる仕事です。

ちょっと、本題に入る前に、前座が過ぎましたね。本題は、次回にします。ただ、これは、重要なポイントです。

ビジネスができること

脱線ついでに、私が尊敬している、国立がんセンターの臨床研究医のKOL(Key Opinion Leader)から、直接頂いたメールの抜粋をご紹介します。

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若手の頃、コンサルタントの先輩に「稼ぐには、既存の儲かる定石やルールに従わなければならない。それがビジネスだ」と言われたことがあります。

私が信じているビジネスの力は、「新しい儲け方の仕組み(ビジネスモデル)を創造することで、定石やルールが変えられること。結果人の意思決定・行動が変えられること」
少なくとも、社会・対して「価値」が絶対的にあるものであれば、必ずや収益化できると信じることにしています。私が執行役員を仰せつかっているビジネスモデル学会の宣伝ではありません(笑)

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では、次回は、「デジタルヘルスでも同様:専門性が重要?」の本題に入らせてください。



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