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生き残る事の難しさ

まず初めに、ここからはアゲハチョウやその幼虫の話があり、グロい表現等が出てくるかもしれませんので、苦手な方はご退出願います。

4月末から始まった今シーズンも、ようやくひと段落付きそうです。本日蛹化した1匹をもって今残っている全てが蛹となり幼虫はいなくなりました。

と書いておきながら例外として1匹幼虫が残っており、それがこの写真の個体です。単純な蝶の成長記録では新鮮味がないので、蝶やその幼虫の悲しい現実の一面として、この個体について紹介します。

実はこの個体、現状生きていますが既に病気にかかっている可能性が高いです。病気の種類は不明ですが、明らかに以下異常点が確認されます:

1.体全体の黒ずみが進行している
2.5齢になってから今日で20日以上経過
3.体がぶよぶよ
4.臭いを発している

1.黒ずみについて。
5齢になった際は健康的な緑色で元気だったが、明らかに黒みががかってきて元気がなくなってきている。元気については、食事の際の反応や食いつき方で明確に比較差異が確認できます。

2.日数について
私は毎シーズン各個体の各種データを採取しているが、5齢幼虫の期間は平均14日。これでも少し長めかと考えるが、この個体が5齢になったのは7/11、もうすぐ1カ月になる。明らかに長すぎる。

3と4について。
今でこそサイズは40~50位になったが、5齢になった直後から数日で約70位まで大きくなった。もちろん暴れる位葉をよく採食していたが、成長異常(成長ホルモン異常分泌)を起こすのではと懐疑的だった。その証拠、他の個体と比較して明らかに肥満(横にデカい)の体形となり、背中の柄も見慣れないものが確認されていた。予感は的中、ある時を境に急に採食量やペースが下がり、活動量も急激に落ちた。サイズダウンしたものの外側の皮は肥満時に目いっぱい拡張したままで要は余っている状態に見える。しかも日を増すごとに元気がなくなりフンの量も少なくなり、臭いを発するようになってきた。少しマイルドな正露丸のような少しつんと来る臭い、臭角のにおいとは全く違うものが漂うようになりました。

実際、サイズが小さくなっているのも採食量が激減した事による痩身に他ならないが、このまま続けば更に小さくなるだろう。でも何らかの原因でもう食べる事ができないと考える。

私のこれまでの経験より、6齢になった場合でも5齢から平均約11日後、5齢の最長期間は44日、いずれの場合も最終的には成虫になれなかったというデータがある。つまり、この個体も成虫になれる可能性はほぼゼロ、このまま幼虫として生を全うする事になる。アゲハ蝶の卵から成虫になる率は恐ろしく低い。この個体も例外ではないといえばそれまでだが、他の蛹が成虫になる姿と共に、彼/彼女の最後の姿まできちんと見届けたいと思う。
我々生物の世界は、良くも悪くも現実しか存在しないという事実を再認識した。こういう命の現実を、子供たちにもぜひ経験してもらいたい。


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