第一章
僕がご縁をいただいたアマオケに入団したのがおよそ一年前。お誘いを受けた2022年12月の定期演奏会で、ベートーヴェン交響曲第2番を聴いたのがきっかけだった。
ベートーヴェンの交響曲9作品の中で、第2番はマイナーでありながら、革新的な第3番『英雄』が生まれる直前に位置する、意義深い作品だと思う。
古典派の演奏を主流とするこのアマオケでは、ロマン派の演奏は常に議論の的だ。定期演奏会の演目決めは、センシティブだった。
2024年6月(会場確保の関係で5月末)定期演奏会の演目が検討され始めたのは、2023年夏頃だったと思う。僕が正式に入団して半年くらいのことだった。
未知の世界だった古典派を学びながら、弦楽や合奏の楽しさに心を震わせていた。技術はもちろん必要だが、感情で弾かなければ観客には何も伝わらない。まさに若かりし頃ポリーニが悩んだ苦しみだ。
ベートーヴェン交響曲第7番が候補曲に入っていたが、12月の本番に向けて目の前の演目に集中した。『英雄』と同じEs dur、変ホ長調の難曲にして名曲、モーツァルト交響曲第39番だった。
本番の1ヶ月前ほどだっただろうか、ようやく演目が決まり、パート譜が配布された。スコアも買った。一度だけ、楽譜を見ながら聴いた。
どれくらい弾けるようになるだろうか。期待と不安を打ち消すように封印し、また39番を毎日聴いて弾いた。
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