夜景4

【日記/48】下品な成金、ディカプリオ

昨日、玄関を出てすぐ外で、「あら、これ何かしらー」と壁に貼り付いている見慣れないものを突っついてみたら、ヤモリだった。

私は目がめちゃくちゃ悪いのに「面倒・不経済・コンタクト怖い」という理由で裸眼を突き通しているのだが、おかげさまでいろいろなものが判別できない。シールかなんかだと思って突っついたもんがサササっと動いたので、腰が抜けるかと思った。

しかし、ヤモリは家守と書くいいやつだから、きっと縁起のいい朝だったのだろう。そういうことにして、そのまま出かけた。

マーティン・スコセッシの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を先日DVDで観たのだが、これはなかなか感銘を受けた。何にかというと、主役のジョーダン・ベルフォードを演じたディカプリオの演技にである。

ディカプリオの演じたジョーダン・ベルフォードは、小さな会社の株式仲買人から営業電話の巧さで次第に頭角を現し、年収49億円、ニューヨークのウォール街で「ウルフ」と呼ばれるほどの財力を身に付けるまでになる。しかしその栄光も長くは続かず、最終的にベルフォードは凋落の一途をたどるのだが、アメリカ映画はこういう「成功者の光と影」みたいなのをやるの好きなんだろう。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、『ソーシャル・ネットワーク』などと同系統の映画だと考えてもらってもいいと思う。

で、そんな努力型金持ち、つまり成金を演じていたディカプリオだったのだが、この俳優は成金が実によく似合う。中指を突き立てて叫んだりとか、鼻から白い粉を思いっきり吸引したりだとか、ソファをナイフでズタズタにして床に転げ回ったりだとか、ムキになって顔を真っ赤にして怒ったりだとか、いちいちテンションが高くていちいちオーバーである。たとえ演技でも、そのうち脳の血管が切れるんじゃないかと見ていてハラハラしてしまった。下品な金持ちを演じるのが、本当に上手な人である。

『グレート・ギャツビー』のジェイ・ギャツビーときは物語の設定上もう少し哀愁があったが、あれもあれで「金持ちなんだが、本当は育ちがあんまり良くない」みたいな何ともいえないみみっちさがよく演じられていて、非常に良かったと思う。私はディカプリオの映画をそんなに観ていないのだが、実はこの人、下品な成金の役をやるのがめちゃくちゃ上手いのではないか。

これは私見なのだけど、映画においては恋愛ものでヒロインのお相手をやれるイケメンより、脳の血管が切れるくらいの下品な成金を怪演できる俳優のほうが、何倍も「上」である。私は映画が好きだけど、俳優とか女優に関してはまったくといっていいほど興味がなくて、むしろ特に映画が好きなわけでもない一般の人より知識がないくらいだ。だけど、その私がすっかり感心してしまったのだから、ディカプリオという人は本当にすごい人なのだと思う。

怪演といえば、俳優の演技なんか滅多に見ていない私の頭のなかにもう1人印象に残っているのは、『冷たい熱帯魚』のでんでんさんである。でんでんさんの役は連続殺人鬼だが、そういえばこの人も高級熱帯魚の商売で成り上がった成金であった。

私はひょっとすると、映画における「成金」が好きなのかもしれない。成金は、下品であれば下品であるほど、素晴らしいと思う。

私は今後の予定として女優に転身するつもりはまったくないが、もし生まれ変わって女優、というか俳優になるとしたら、自分もディカプリオやでんでんさんのように、下品な成金の役がやりたいなあと思った。金がやたらかかっていそうな、でもセンスのないスーツを着て、足をででーんと開いて笑っていたい。気に入らないことがあったら、ソファをナイフでズタズタにしたり高級な壺を割りまくったりしながら、じたばた床を転がりたい。

冒頭のヤモリの話は、オチに使おうと思っていたのですがどうやってオチにしようとしていたのか忘れたので今日はこのまま終わりにします。

関連:園子温が苦手な私による園子温論


شكرا لك!