バリアンじゃないけど3

【日記/87】お肌がぷるぷるになってしまう病気

お肌がぷるぷるになってしまう病気、というのに罹患していた。症状に気付き、異変を感じたのは20代の中盤くらいだ。

具体的な症状はというと、なぜか日本を離れ海外旅行に行くと、お肌がぷるぷるになってしまい、そのまま帰国するハメになる、というものだった。

なんだ、いいじゃんと思われるかもしれない。もちろん悪くはないのだが、私は帰国するたびに不安になった。

私はいつも、旅先の海外で、肌に良さそうなことは何もしていない。エステにも行ってないし、マッサージもやってないし、コラーゲン鍋も食べてないし、新鮮な野菜や果物を食べていたわけでもない。それどころか、排気ガスで黒くなった道路をマスクもせずに歩いたり、変な油を使ってそうなきったねえ屋台の焼きそばを食べたり、コーラやスプライトを毎日のようにがぶ飲みしたりしていた。気候だって、砂漠地帯である中東はすべてを干上がらせるほど乾燥していたし、逆に東南アジアは布団まで湿っているほど湿気が高く、毎晩不快だった。肌に良いどころか、痛めつけるようなことばかりしていたのだ。

それなのに、旅行を何日か続けていると、決まって肌は生き生き、ぷるぷるになってしまうのである。

そんなに旅行が楽しいか、自分よ。そんなに日本の生活が嫌なのか、自分よ。そんなに日本社会で生きることがストレスなのか、自分よ。私は悲しくなった。

これが、自分でもわかるくらい、確かに日本での生活でストレスを感じているというのならわかる。嫌な上司がいるとか、ブラック企業で毎日残業しているとか。だけど、私はそうじゃない。日々接しているレベルで周囲に嫌な人はまったくいないし、残業なんて全然していないし、これ以上何かを求めるのは贅沢だと思うくらい、私は今の生活にほどほど満足しているのだ。

それなのに、一度日本を出ると、こんなに肌がぷるぷるしてしまう。無意識下で、何か自分でも認知できないようなストレスを抱えているのか? もう私の性格が根本的にクソで、日本社会では生きていくのが困難なのか? 家の方角が悪いのか? 旅行から帰ってくるたびに、私は悩んだ(冗談ぽく書いてるが、けっこう本気で)。

しかし、最近になって突如、この奇病は快方へ向かうこととなる。

きっかけは、「もう寝ないのはムリ」とはっきり自覚し、日々の睡眠時間を固定したことである。以前は午前2時くらいまでダラダラと起きていることもあったが、最近は必ず12時をまわる前にベッドに入って寝てしまう。そして、朝は休日も平日も予定がない日もある日も、きっかり6時半から7時の間に起きる。もちろん飲み会などでずれることが多少あるとはいえ、基本的にこの生活リズムを遵守することにした。

すると、どうだろう。あの、海外旅行から帰ってきた直後のぷるぷるが、100%ではないが90%くらい再現できたのである!

私は旅先の海外で、肌に良さそうなことは何もしていない。これは本当だが、しかしよく考えると、私はいちおう女性なので旅先では極力夜の外出を控え、その代わり朝早く起きてたくさん活動していた。めちゃくちゃ歩くのでヘトヘトに疲れ、夜なんて22時くらいに完全にスイッチが切れて寝ていた。原因は、日本社会のストレスでも私の社会不適合性でも家の方角でもなく、睡眠(と、運動)だったらしいと判明したのである。逆に言うと、睡眠さえしっかりとれていれば、空気が悪かろうと食事が悲惨だろうと私はどうにかなるということだ。もしくは、睡眠がダメだとエステに行っても高い化粧品を使っても効果はないということだ。一に睡眠、二に睡眠、三、四がなくて五は運動。これが私の健康を保つための最適解ではないかという結論にたどり着いたのである。

というわけで、最近の私はすっかり「睡眠原理主義者」だ。「睡眠過激派」と言ってもいい。最近どうも調子が優れないという人がいたら、その優れないのが体でも、精神でも、とりあえず就寝・起床時間を決めて7〜8時間しっかり寝る生活を1か月続けてみることをお勧めする。「寝ても特に元気にならんわ!」というケースもあるにはあるのだが(私はある)、しかし元気にまではならなくても、変に病まなくなるというか、睡眠を確保しておくとギリギリのところで踏みとどまれる気がする。

長年の謎が解け、今私は猛烈にすっきりしている。

شكرا لك!