エルサレムのイチゴ

【日記/83】今週のアルジャジーラ〔モロッコ〕

2017年初の「今週のアルジャジーラ」。ちなみに、この「今週のアルジャジーラ」は、私が書くnoteの中で最も反響が少ないのだが(当然)、書いている本人はこれがいちばん楽しい。困ったものだ。あと、昨年のサムネイル画像が柿だったので、今年はイチゴでいこうかと思っているのだがどうだろう。

2017年最初の国として取り上げるのは、北アフリカのイスラム国家モロッコである。以下の記事には、北アフリカ大陸にあるスペイン領、メリリャという町に住む27歳の若者の話が書いてある。

Morocco's mute stowaway

このSaidくんという若者は、どうやら目が見えないようだ。映像を見ると、彼はもっぱら手話で自分の主張を伝えている。

ちなみにメリリャというのはどこにあるのかというと、スペイン領なので、北アフリカ大陸のはしっこにある(赤字)。私は昨年、スペインのアルヘシラスという港から、モロッコのタンジェ(青字)に船で渡った。私の字が下手くそでタソジェに見えるが、タソジェではなくタンジェだ。あとシャウエソではなくシャウエンである。

このメリリャというスペイン領の町から、Saidくんはヨーロッパ大陸に渡りたいと考えているらしい。目標は、ドイツに住んでいるという彼の兄に会うこと。メリリャは、アフリカ大陸から欧州へ渡ろうとする移民や難民の航行ルートの出発点となっている。Saidくんの出自が記事を読んでもよくわからないのだが、おそらく彼もそんな移民や難民の1人なのだろう。しかし、スペイン側は移民や難民の航行を厳しく管理しており、欧州の玄関はそう簡単には開かない。

参考:アフリカの欧州「飛び地」 不法入国倍増 現場で即追放

Saidくんは働いていた繊維工場が破産し、給料が払われず生活が行き詰まり、自殺を試みたこともあったという。映像にはメリリャという町の一部分が映っているが、ゴミだらけで蝿が飛び回り、スラムのような有様だ。

アフリカ大陸にあるスペインの飛び地領土は、メリリャの他にセウタという町もある。私にとっては2つとも、いつか行ってみたい場所の1つだ。しかし、入国管理はどのようにやっているんだろう。アルヘシラスからタンジェに渡ったときは、船の中でパスポートをチェックされたのだが。海を渡ってスペインから入国するときはチェックされず、陸のモロッコから渡るときはチェックされると、そういうふうになってるんだろうか? こういうことを考えていると、国境なんてつくづくデタラメだな、と思う。

(※モロッコのシャウエソ、ではなくシャウエンは、世界で最もフォトジェニックな町の1つである。しかし、寒い。)

さて、以下は前回の続き。バビロン捕囚だのアケメネス朝ペルシアだのが出てきたところで、いよいよ西暦1年、イエスの誕生である。

その前に、紀元前63年、今のイスラエルがあるあたりのユダヤ地方は、ローマ帝国の衛星国となった。当時覇権を握っていたローマ帝国としては、ユダヤ地方なんてのは辺境もいいとこで、あまり重要な土地ではなかったらしい。そのどうでもいい辺境から、世紀を変えるメシアが誕生してしまったのだから、歴史というものはわからない。

イエスの誕生や奇跡については省略するが、とりあえず、西暦1年に諸説あるがベツレヘムでイエスは生まれ、青年になるとキリスト教という(当時は)わけのわからん怪しげな新興宗教を作って、ユダヤ人に敵視され、裁判にかけられる。そして、十字架を担いでエルサレムのヴィア・ドロローサを歩き、ゴルゴタの丘で死刑になる。

聖書の世界というのは私にとっておとぎ話の世界とそう変わりはなかったのだが、昨年そのおとぎ話の世界に行ってみて、ヴィア・ドロローサだのゲッセマネだのベツレヘムだのという地名がついているところを実際に足で歩き、なんとも妙な感覚に襲われた。すごく安易な言い方をすると、「うわ、本当にあるんだ。嘘じゃなかったんだ!」という感じである。

(※イエスが荊の冠をかぶり十字架を背負って歩いたとされるヴィア・ドロローサ。実際に訪れてみると、なんの変哲もない普通の道である)

イエスの死後、中東史的に大きな事件といえば、66年から74年にかけて起きたユダヤ戦争をあげることができるかもしれない。相変わらずローマの属州であり続けていたユダヤ地方では、徐々にユダヤ人がローマ帝国への反感を育てていった。ローマ帝国が多神教の神を信仰していたのに対し、ユダヤ地方では強固な一神教信仰がある。(キリスト教は、この時代はまだ「変なカルト」扱いなので、歴史の表舞台にはあまり登場しない。)それも反感の1つの要因だったのだろう。

しかし相手はあのローマ帝国である。ユダヤ人側は奮闘はするものの、最終的には68年にエルサレムが陥落させられてしまう。同じく132年から135年にかけても「バル・コクバの乱」というユダヤ人の反乱が起きるが、こちらも制圧され、この地方に住むユダヤ人たちは世界に散らばることを余儀なくなれた。ここから、いわゆる「ディアスポラ」の時代が始まる。

次回は1/13か14の更新を予定している。


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