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【日記/81】今週のアルジャジーラ〔シリアに幸あれクリスマス〕

3連休初日、明日はクリスマスイブという最高に浮かれ気分な金曜日だが、「今週のアルジャジーラ」は今週も硬派にアラブ・イスラム世界のニュースを考察する。一応サムネイル画像に用いた画像は私が8年前にオーストリア・ウィーンを訪れたときのもので、よく見ると右端にクリスマスリースが飾ってある。いつものいかにもどうでも良さげな柿(なぜ柿)の画像からちょっとおめかしである。

さて、今週私がアルジャジーラが配信した記事の中で気になったものはこれだ。シリア政府が、アレッポを制圧したという内容の記事である。

Syria's government recaptures all of Aleppo city

なぜシリアが現在こんな状況になっているかは、以前の「今週のアルジャジーラ」に書いた。チュニジアに端を発する「アラブの春」が波及し、内戦状態に陥っていたのである。アサド政権と反体制派が争っていたが、アサド政権側がロシアの援護などもあり、この戦いに一応の勝利を収めたらしい。

しかし、これによってシリアにどういった変化が訪れるのかは、私は素人なのでちょっとよくわからない。東アレッポから撃退された反体制派は、今後どこに向かうのだろう? また、反体制派の去ったアレッポの街は今後修復されていくのか、それとも後回しにされるのか、イランやロシアとの関係はどうなるのか。シリアのニュースは、今後も追っていきたいところである。

話題を変えて、先週何気なく「中東の歴史をどこから知りたいか?」という疑問を投げかけてみたら、ありがたいことにみなさんから「紀元前から!」という声をたくさんいただいた。実は私も自分のために、紀元前から一度整理して書いてみたいと思っていたところだ。なので、今回はイスラエルを中心に、紀元前からこの地域の歴史を振り返ってみることにしたい。クリスマスはイエスの生誕を祝う機会なのだから、ここでそのイエスが生まれた中東の歴史を振り返るというのはGoodすぎるタイミングである。「今週のアルジャジーラ」は、硬派なクリスマスを送るみなさんを応援しています!

まず、この地域の歴史をそれなりに一生懸命やろうと思うと、当然話は旧約聖書から始まるだろう。旧約聖書はユダヤ教、キリスト教、イスラム教、3つの宗教共通の聖典である。アダムとイブの物語、ノアの方舟の物語などは、この3つの宗教の信者でなくとも、一般常識として世界中の人が知っている。

旧約聖書にはいろいろなエピソードが入っているけれど、これらはすべて、唯一神ヤハウェとその神に選ばれしイスラエルの民との交流を描いたものだ。天地創造に始まり、バビロン捕囚まで、その物語は続いている。

が、旧約聖書の内容を事細かに解説しているとキリがないので、詳しく知りたい人は、私がいつもこの手の話を書くときに辞書代わりに用いている便利本があるので、これを読むといいと思う。この本は地図付きで場所がイメージしやすく、文章もわかりやすいので、私はいつも大変助けられている。

図説 地図とあらすじでわかる!聖書 (青春新書INTELLIGENCE)

さて、異教徒の身からするとぶっちゃけ疑問に思うのは、この旧約聖書や新約聖書の内容がどこまでマジなのか、ということではないだろうか。いくらなんでも処女が妊娠するのは嘘だろう。しかし、出エジプトのエピソードなどは「海が真っ二つに分かれたとかいうのは嘘だろうけどエジプトで奴隷にされてたとこまではホント?」などちょっとわからなくなってくる。これに関しては、専門家でも「今調べてるところですっ!」という感じらしいので、我々は「嘘かもしれないし本当かもしれない」というスタンスで臨むしかないのだが、仮に嘘だったとしても、なぜそのエピソードが誕生したのかという背景を考えると非常に面白いので、「どうせ神話でしょ」などという態度で一蹴するのは損である。

というわけで、まずはこの『出エジプト』あたりから話を初めてみようと思う。アダムとイブやバベルの塔の話も興味深いけれど、歴史という観点で考えると、重要になってくるのはこのあたりのエピソードからだ。紀元前1250年頃、パレスチナに住んでいた古代イスラエル人は飢饉に苦しみ、豊穣なエジプトに移住する。だけど、そこで今度は新たなエジプトの王に、古代イスラエル人は奴隷にされてしまう。そんな古代イスラエル人のピンチを救った英雄が、モーセだ(が、モーセがマジで実在したかどうかはちょっと怪しいらしい)。

モーセは奴隷にされていたイスラエル人を連れてカナンの地(パレスチナのあたり)を目指して逃げるが、エジプトの追っ手も彼らをタダでは逃さない。そこで、まるで神の導きがあったかのように、モーセの目の前で海が二つに分かれ……というのが有名なエピソードだ。ちなみに私は、このエピソードがもとになっている「モーセの奇跡ポーチ」が欲しい。これかわいい。

しかし、イスラエル人がエジプトに移住していた間に、パレスチナには他の民族が新たに住み始めていた。「だってあんたたち留守だったじゃん……」というのが他の民族の言い分だろうが、ヨシュアという人物が中心になって、イスラエル人はカナンの地を取り戻す。で、この後も本当はいろいろなエピソードがあるのだけど、とりあえず「イスラエル、パレスチナ周辺の民族とめっちゃ戦争する」と覚えておけばいいかなと思う(もちろん、これはかなり雑な考え方だが)。

話はとんで、紀元前598年だ。カナンの地を奪還したイスラエル王国は紆余曲折あり、南北に分かれていた。北はアッシリアの支配下にあったが、南はなんとかユダ王国として独立を保っていたのである。が、このユダ王国も、新バビロニア王国の支配下に入ってしまう。王族を含む約一万人がバビロンに強制連行され、これを「第一回バビロン捕囚」という。しかし結局、北も南も紀元前550年になると、大国アケメネス朝ペルシアに吸収される。そしてこのアケメネス朝ペルシアも、紀元前330年頃に、マケドニアのアレクサンドロスに滅ぼされてしまう。(このナントカ朝ナントカのあたり、私が苦手な世界史の部分なので、間違ってたらごめんなさい)そして紀元前63年、この近辺はローマ帝国の属州となる。そろそろ、イエスが生まれる頃だ。

ようするに、紀元前からイスラエル人のご先祖様はずっとこの近辺をうろうろしていたのであって、それくらい因縁の土地なんですよ、ということだ。しかしここらへんの歴史、私は大学を卒業してからも何回も勉強しているはずなんだが、やっぱり難しくてすぐにごちゃごちゃになるなあ。

来週12月30日は、年末ということでお休み。「今週のアルジャジーラ」、次回は年明け1月6か7日あたりを予定している。次回はこの続き、イエスが誕生するあたりから話を続けられればなと思う。

شكرا لك!