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障害を持って生まれた天才ジャズ・ピアニストに涙する理由

人が感動するときというのは、期待値と実際の経験が、大きくプラスに乖離した場合に起きる。
それは製品でもサービスでも同じだけど、今日お話するのは、私が一番好きなジャズ・ピアニストである、フランス出身のミシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani)の話。

見てもらうと分かるように、ミシェル・ペトルチアーニは生まれつき「骨形成不全症」という病気で骨がもろく、身長は1mくらいしかなかった。
1962年12月生まれで、医者には20歳くらいまでしか生きられないと言われていたらしいけど、36歳までトップレベルの演奏を続け、1999年1月に急性肺炎で亡くなった。

最初に私は耳で演奏だけを聞いたんだけど、「すごい!」と思った。
正確で力強いタッチから、チック・コリアかキース・ジャレットのような姿を想像していた。
このときの感動は、自分が知らないピアニストでこんな人がいたのかという驚きだ。

ところがその後、初めて彼のライブ動画を見たとき唖然とした。
手は普通だけど、胸が鍵盤にくっつきそうだし、足は床に届かないから、ペダル踏み機を使っていた。
全身全霊を込めて弾く姿に、どこからこんなエネルギーが出てくるんだろうと、驚愕しているうちに涙があふれ出てきた。

このときの感動は、想像していた姿との大きなギャップからきたもので、初めて聞いたときの感動よりも大きかったんだ。

もし、彼が健常者の姿だったら、あるいは障害者でも普通のレベルのピアニストだったら、ここまで感動しなかっただろう。
ミシェル・ペトルチアーニは超一流のジャズ・ピアニスト。だから涙があふれ出てきたに違いない。
障害を克服したストーリーだけでも感動はするけど、彼には才能があったと思うし、ギャップの大きさがMAXなのだ。

もしもあなたが逆境にいても、何かをどうしてもやりたいという熱意があって、自分にはできるはずだと思うなら、何であれ、やればよい。
やり遂げたときのギャップは大きくなり、自分自身の幸福感と、人に感動を与えられるものを手に入れることができるはずだ。

YouTubeにソロ以外にもたくさん上がっているので、もっと聞きたかったら探してみるといいよ。


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