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教室と大人世代をつなぐ Vol.02 「明日は今日より良くなる」とはかぎらない

冷静に”いま”を見つめる高校生


意思決定の場に高校生を参加させるべき理由はまだあります。私はもうすぐ60歳になりますが、働き始めて数年でバブルを迎えました。そのころは何もしなくても売れる時代。先輩たちが敷いてくれたレールを同じように走るだけで、何も考えなくても売れました。その結果として、毎年、給料は大きく上がり、年収も増え続けていました。そのころの私は、「明日は今日よりも必ず良くなる」と簡単に信じられた最後の世代なのかもしれません。そんななかでは、いまのやり方が間違っているなどとは、考えたこともありませんでした。
その後に続く失われた30年に働き始めた世代は、逆にコストカットと非正規雇用という時代のなか、長い停滞の時期が続きます。何かを考えたとしても、「無駄なことはするな」といわれてきた世代だと思います。こうして日本は約30年もの間、賃金の上がらない国になったのです。
そして、いまの高校生は物心ついたころから、地球温暖化やそれに伴う気候変動などを目の当たりにして、「これまでと同じことを続けていたら、10年後は必ず好ましくない状況になる」ことがわかっている世代です。敷いてもらったレールの上を走るだけで毎年、生活が良くなることを体験した「大人世代」と、そのような体験は一度もなく、むしろいまのままでは必ず良くない未来が待っていると実感している「高校生」。エジプトのピラミッドには建設にかかわった職人たちの落書きが残っていて、「いまの若いもんは、、」といった落書きもあるそうです。世代間のギャップは古来からありましたが、いまは高校生たちの考え方を優先しなければならないのに、意思決定権を持っているのは大人世代という危うい状況になっています。

「京都」を活かせなかった大人世代


地球温暖化は20世紀末から言われてきましたが、その当時、これに対応し行動する人はまだ少数派でした。そんななか1997年に京都で開催されたCOP3で採択された文書は、「京都議定書」(Kyoto Protocol)と呼ばれ、この「京都」という名とともに、当時の環境先進国、日本は地球温暖化抑止のトップランナーとして世界中の人が注目していたのです。公害対策から始まり、省エネや自動車の排ガス規制などで先端技術を持っていた日本でしたが、21世紀に入るとどんどんほかの国に先を越され、いつの間にか先進国ではなくなりました。いまでは議定書はパリ議定書となり、欧州は国連が発表したSDGsにいち早く対応し、主導的な立場を取るようになっています。大人世代の不作為でここでも大きな重荷を背負わせることになってしまいました。

どうしたら?


世界中で発生する異常気象などを目の当たりにし、地球温暖化は誰もが考え行動しなければならない課題になっています。いまの高校生世代は『SDGsネイティブ』とも呼ばれ、その多くは地球温暖化だけでなく、あらゆる社会課題に敏感で、その解決に携わりたいと考えているといわれています。すでに行動を始めている人も少なくありません。
では、どうしたら高校生世代を、企業や社会の意思決定の場に同席させることができるでしょうか?


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