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ある面接官の本音

私の勤める会社では、自部門の採用だけでなく、新卒採用の際は一次面接の面接官をすることもあります。

これまでに結構な回数の面接をしてきましたので、「ある面接官の本音」と題して、選考を行う人がどういうところを見ているのかなど、就職活動、転職活動をされる方の役に立てばと書くことにしました。とはいえ、あくまで個人の考えですので世の面接官の誰もが同じ考えとは限りらない点、ご承知おきください。

”働く”とは何か

「なんで働くの?」と聞かれたら大抵の人は「生きていくためにお金が必要だから」と答えるんじゃないでしょうか。私も同じです。生きていくのに不自由のないお金があれば、お金を稼ぐためには働きません。就活をしている方もやはり必要なお金を稼ぐためというのがほとんどだと思います。

働くことでなぜお金を得ることができるのでしょうか?
1分程考えてみてください。

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「自分が働くことで会社の商品やサービスの売上に繋がるから」
実際にはやったことはないですが、1分だとこう答える方が多いのではないでしょうか。

では、商品やサービスはなぜ買ってもらえるのでしょうか?

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「その人にとって商品やサービスに価値があるから」
ここまでくると、ほとんどの方がこう答えるのではないでしょうか。

では、なぜ価値があるのでしょうか?

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「その人にとって役に立つから」


これが働くことでお金を得ることができる理由です。会社と雇用契約を結んで働こうが、個人事業主として働こうが、誰かの役に立つことに繋がることに力を提供したから、その誰かが価値を認めた証として支払ったお金を賃金という形で手にしているわけです。つまり、お金を稼ぐという意味での”働く”という言葉は、「世の中の役に立つことで対価を得る」と言い換えることができると思っています。お金は会社からもらっているのではなく、価値を認めてくれた誰か(人や企業)からもらっているものなのですが、その本質が意外とないがしろにされているように感じることがあります。個人的にそれを一番感じるのが連休明けなどにSNS上でよく見かける「働きたくない」という発言です。先に書いた通り、「働く」=「世の中の役に立つ」とすれば、「働きたくない」=「世の中の役に立ちたくない」ということになるんですが、仮にこの世に”働く”という言葉が存在しなかったとして、「世の中の役に立ちたくない」なんていう人が連休明けにうじゃうじゃ出てくるとは到底思えないです。実際のところは、「働きたくない」というのは「辛い」「しんどい」という意味で使われていると思いますが、個人的にはあまりいい言い回しだとは思いません。

パートタイム労働形態が植え付ける誤解の種

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多くの人が自分でお金を稼ぐ経験を最初にするのは、アルバイトなのではないでしょうか。時給●●円という、時間を基準にして賃金を得る労働形態が多いと思うのですが、このパートタイム労働が良くない考え方の種を植え付けてしまっていると考えています。”働く”とは時間を提供することで対価を得ることができるものという誤解を生みやすくなっているということはないでしょうか。全ての企業がそうだと言うつもりはありませんが、パートタイム雇用している企業の方は、先に書いた「誰かの役に立つから対価を得ることができる」ということを理解してもらえるようにしているでしょうか?「個人差はあれど同じ時間で出る成果は大して変わらないんだから働いた時間に対して給料出しておけばいい」というところで止まってしまってないでしょうか。まだまだ社会を知らない若者をパートタイム雇用する時ほど、社会で働く人材を育てるという観点を忘れず、どれだけ世の中の役に立ったかをフィードバックするということをやって欲しいと思います。

面接質問1:やりがいを感じるのはどんな時?

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ほとんどの人がそうだと思いますが、自分が楽しんでやれる仕事に就きたいと考えるのではないでしょうか。では、”やりがい”を感じるのはどんな時でしょうか?面接の場でこの質問をすると色々な答えが返ってきます。自分の好きなことや得意なことをやり続けている時という方、「ありがとう」と言われた時という方、一人ではなくチームで何かをやりとげた時という方など様々です。アレンジしている部分もありますが、実際にあったやりとりを書いてみます。(求:求職者、面:面接官=私)

【不採用CASE】
求:「作ることが好きなので作る作業をしている時です」
面:「なぜ作ることにやりがいを感じますか?」
求:「自分の思い描いている形に少しずつ近づいていくところです」
面:「自分の思い描いている形になると何がいいんですか?」
求:「満足感があります」
(私の場合、この時点でほぼ不採用確定ですが、新卒採用の場合は、もう少し続けます。)
面:「例えば、ケーキを買いに行って、”パティシエが思い描いていた通りのケーキが出来ました”と書かれていて買おうと思いますか?」
求:「…思わないです」
面:「なぜですか?」
求:「美味しいかどうかわからないからです」
面:「貴方の物作りに関する満足感は誰をどう幸せにしますか?」
(これ以降は、まともな回答が返ってきてもズレた回答が返ってきてもこの質問は終わります。私は不採用判断をしますが、何かに気づけた人は別の会社の面接で活かして欲しいと思っています。)

【不採用CASE】
求:「チームで何かをやりとげた時です」
面:「なぜチームでないとやりがいを感じませんか?」
求:「チームでないとダメというわけではありませんが、チーム活動の方が色々と大変さがあるので」
面:「どんな大変さがありますか?」
求:「ぶつかる意見の落としどころを見つけたり、スケジュール調整だったり、自分の当たり前が通用しないことがあったりします。」
面:「仮にメンバーに恵まれて、そういう大変さがない環境にいるとしたら、どんな時にやりがいを感じますか?」
(やりがいは想定質問だと思いますので、学生時代に部活動やサークル活動をやっていた人は、チーム活動をアピールするためにやりがいの質問の答えに持ってくる方がそこそこいますが、私は答えとしてはズレていると思っています。いわゆるガクチカエピソードは、粘り強さ、協調性、調整力をアピールしたい質問の時に活用した方がいいです。)

【採用CASE】
求:「自分のしたことで人に感謝された時です」
面:「具体的なエピソードはありますか?」
求:「飲食店でアルバイトをしてるんですけど、お客さんにおすすめを聞かれることってよくあるんです。最初の頃は店でよく注文される物を言ってたんですけど、ある時賄いで食べて美味しかったメニューをおすすめした時、自分でも自信持っておすすめできてるなって思いましたし、お客さんに”お姉ちゃんの言った通り美味しかった、ありがとう”って言われて、すごく嬉しかったんです」
面:「なぜ嬉しかったと思いますか?」
求:「お客さんに感謝されたからです。」
面:「なぜ感謝されると嬉しくなりますか?」
求:「喜んでもらえたと思えるからです」
(もちろん、この質問だけで採用には至りませんが、この質問の答えとしては合格判断をします。)

人の役に立つことにやりがいを感じる人は、そのために自分に足らないことを身に付けることを当たり前のこととしてやってくれるので、その人自身の成長は早く、幅広いです。そういう観点からも”やりがい”は重要な選考基準にしています。

面接質問2:最近、誰かから指摘・注意されたことは?

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「短所は?」という質問は代表的だと思いますが、こう質問すると主観ではなく、その人に対する客観的な短所が見えたりします。ただ、この質問の意図はそこではなく、別のところにあります。質問1と同じく、実際にあったやりとりを書いてみます。

【不採用CASE】
面:「最近、誰かから指摘や注意されたことはありますか?」
求:「…」
(この質問をして、即答する人はまず居ません。仮に即答したら用意してきた答えだと判断して、あまり信用しません。ほとんどの人が、少し考えた後、自分が短所だと思っている点をもとに最近受けた指摘・注意を思い返していると推察します)
求:「”話が長い”とよく言われます」
面:「その指摘について自分でどう思いますか?」
求:「自分ではそれほどとは思っていないですし、長いと思っていない友達もいますので人によるとは思っているんですが、そう感じる人もいるのは事実ですので気を付けています」
(短所の内容自体はどうでもよく、自分を擁護する内容が先に来ているので、マイナス評価をします。ましてやこの場合、”よく言われる”にも関わらず、あまり反省はしていないんだなと受け取ります。)

【採用CASE】

面:「最近、誰かから指摘や注意されたことはありますか?」
求:「…」
求:「先日、”せっかち”と言われました」
面:「その指摘について自分でどう思いますか?」
求:「その時はピンと来なかったんですが、後で振り返って、もしかしたらなんですけど、原因的なものはあったので気を付けるようにしています」
(ここで具体的なエピソードは確認していますが、今回は省略します)
面:「なぜ原因を見つけようとしたんですか?」
求:「誉め言葉ではないと思ったので、相手を不快にしたのであれば、直した方がいいと思ったからです」
(もちろん、この質問だけで採用には至りませんが、この質問の答えとしては合格判断をします。)

この質問の意図は「謙虚さ・素直さ」の確認です。物事が上手くいかない時に周りを変えることが必要な場合もありますが、まず最初に自分が変わることで周りを変えられないかということを考える人は、周りにも同じように自己反省をさせるきっかけになり、良い影響を与えてくれる人になりますし、周りから信用される人になります。ただ、自罰精神が強すぎてもダメなので、そのバランスの見極めも必要です。

面接時の質問は他にも色々ありますが、今回は私が個人的に重要視している2つのポイントについて書かせていただきました。機会があれば、また別のポイントについて書こうと思います。

就活されている方に考えてほしいこと

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うるさいほどに「人の役に立つ」ということを書いていますが、長続きする仕事を選ぶポイントは、「何を求めている人の笑顔のためなら頑張り続けられるか」だと思います。人の役に立つことをしていたとしても、その人の笑顔を見たいわけでなければ、頑張る動機にならないので長続きしないと思います。この点を会社を選定する際に考えて、しっかり自分の腹に落とし込めれば、志望動機に関して悩むことはなくなると思います。

親御さん、教育者のみなさんへのお願い

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言い方が違うだけで真意は同じはずなんですが、「勉強しなさい」「いい学校に入りなさい」「大学は卒業しろ」というような手段を伝える言い方をしていないでしょうか。もしそうであれば、今から
「世の中の役に立つ人になりなさい」
目的を伝える言い方をしてもらえませんか?
そうすれば、役立つにはどうすればいいんだろう?自分は誰の役に立ちたいんだろう?立てるんだろう?という思考から、自分に足りないものを補うために必要になる勉強をしなければならないことがわかってくるようになると思うんです。もちろん、子供だけで考えて答えにたどり着けないなので、そこを助けることが私たち大人の役目なのだと思います。

まとめ

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■「働く」ということに関する基本的なこと
「お金を稼ぐために働く=人の役に立つことで対価を得る」である
自分の時間を提供するからお金を得ることができるのではない

■ある面接官の選考ポイント
人の役に立つことにやりがい感じるか、その実体験があるか
人の意見を謙虚・素直に受け止め、反省する習慣があるか

■就活をされている方へ
「何を求めている人の笑顔のためなら頑張り続けられるか」を考えよう

■親御さん、教育者のみなさんへ
「世の中の役に立つ人になりなさい」と言うようにしませんか


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