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水恐怖症のわたしがサウナにハマってしまった話


人間は生まれてくるまでお腹の中で水に浸かっていると言うけど、自分だけはそうじゃないと信じていた。

生まれつきとにかく水が嫌いで、プールやお風呂は当然のこと、シャワーや朝晩の洗顔が苦痛でたまらなかった。
あまりにも嫌がって、すっかり気落ちした顔でお風呂から上がってくるものだから、よく「猫か?」「ロボットか?」と笑われた。(だからわたしのSNSのIDは@Cyandroid_。非耐水性のアンドロイド)

それに加えて対人恐怖のようなものがあって、服を着ていない人間がとても怖いし、人と一緒に水辺にいると、突然後ろから突き飛ばされて沈められるのではないかという謎の妄想に取り憑かれてしまうので、プールや銭湯がどうしても苦手だった。
水泳の授業はさぼれるだけさぼったし、修学旅行のお風呂は全て仮病を使ってスキップした。
タトゥーを入れた理由のひとつは、温泉やプールを伴うイベントに今後絶対に誘われたくなかったから。

そんなわたしが菅野結以さんのインタビューを読んだところ、突如「サウナに行きたい!!!ととのいたい!!!!!!」という気持ちが爆発し、次の日にはもう近所のサウナ付き銭湯にいた。

何かが嫌い・苦手・怖いということにアイデンティティを置きたくないとわたしは常々思っていて、今までできなかったことも、死ぬまでに何らかの形で自分のものにしたいと、サウナや銭湯についてもタイミングをうかがってはいた。
それにしてもあまりにも突然の確変。
わたしをここまで駆り立てる、菅野結以とは一体何者なのか?


彼女の外見や肩書きについては検索していただければわかることなので割愛するとして、菅野結以はわたしにとって「窓」のような人だ。

わたしは「多趣味だね」と言っていただけることが多い。確かに、自分でも欲張りな女だと思う。
しかし同時にわたしにはとても臆病で自閉的なところがあって、100冊の本を読むよりも、1冊の本を100回でも200回でも読み直す。新しいものに手を出すことが苦手で、余程強く推薦されない限りは、せいぜい、好きな本の作者が書いた別の作品を読んでみる程度。音楽や食べ物もまた然り。
そんな自分を嫌いではない。同じピアスを100でも200でも繰り返して作れるからこそハンドメイド作家で在れる。
ただ、正直マンネリ化しているな、と感じていながらも新しい場所に移れず、苛々するタイミングがたまにある。
そんなときには「この人が推す作品ならわたしも好きな可能性が高い」と思える人のSNSやインタビューを読み漁り、出てきた音楽や小説、映画に思い切って触れるようにしている。
そういう、感性に信頼を置いている人がわたしには何人かいて、わたしは彼らのことを「窓」と呼んでいる。引きこもってしまうわたしを、外の世界と繋げてくれる存在。彼女は中でもいちばん大きくて採光性の高い窓のひとつで、音楽や小説の好みも生き方も、多大な影響を受けている。
その彼女がこんなにも夢中になって語るサウナなるもの、なんとしてでも味わってみたかった。


話を戻して、近所の銭湯にて(ちゃんと調べてタトゥーOKの銭湯に行ったよ♡)。
最初は他人の肉体や、常連さん同士の笑い声、タトゥーのある人間を嫌がりそうな子連れのお母さんの視線、壁の向こう側から聞こえてくる男性の声、例の妄想、何もかもが怖かったけど、ととのいたい一心で何度か通ううちに、自分に合った銭湯の使い方がわかってきた。

いちばんのポイントは、閉店1時間前の真夜中に行くこと。この時間にはもう常連とおぼしきおばあ様方もいなくなっていて、貸し切り状態で入ることができるから、タトゥーのせいで誰かを怖がらせてしまうこともないし、わたしも人を怖がらなくて済む。

サウナはわたしは短時間でじゅうぶん。82度くらいの初心者にも優しいサウナ。最初は息をするのも苦しかったけれど、身体の内側の濁りを出していくイメージでゆっくり呼吸していると、すこしずつ、熱気の圧迫感が心地好くなる。
腕にぷつぷつと汗が浮かんできたら水風呂へ。
最初はこれがいちばん苦手で、ほとんど入れなかった。冷たくて深い水。恐怖がせり上がる。おそるおそる爪先を入れて、待つ。しばらく耐えたら、冷たさが消えて、まろやかな感覚がやってくる。3回目でようやく肩まで浸かれるようになった。恐怖が引いて、頭が冴えて、最も心地好い時間。煙草を喫うとニコチンが回ってクラクラするけれど、あれの気分が悪くならずにもうちょっとゆっくりクラーン、クラーン、と回るバージョン、みたいな感覚がきて、これが「ととのう」か!と思う。
吐く息が冷たくなったら、最後に、天窓から外気が流れ込むぬるい塩風呂。足元だけお湯に浸かって、飽きるまで深呼吸する。
ああ、なんだか世界が美しい。天国みたいな青いタイル。もうちょっと生きていけるかも、という気持ちになる。

普段はどちらかというと怖いもの知らずなタイプなのだけど、銭湯にいる間は、溺れるんじゃないか、足を滑らせて頭を打つんじゃないか、サウナ室に閉じ込められたらどうしよう、などなど、あらゆる不安におそわれる。
10代の頃、死ぬならここに身を投げようと決めた海があった。わたしにとって、水は畏怖の対象。
ととのいとは、死に近付く瞬間に得られる恍惚感なのかもしれない。
死の不安の中を綱渡りして、自分が生きようとしていること、自分の持つ生命力を逆説的に自覚する。

銭湯から出ればすっかり不安も消えてふわふわ。すっきりした頭で24時間営業のスーパーに寄って、トマトジュースを飲みながら帰る。


わたしは元々お酒が飲めないし、煙草も最近はあんまり喫えないし、眠りは浅いし、社会人1年目にして気持ちを切り替える術を失っていた。だからいま、サウナには必要なタイミングで出会うべくして出会ったような気がしている。
相変わらず家でのシャワーや洗顔は大嫌いだけど、サウナは不思議と「行きたいな~」と思う。ただし、サウナに行くと次の日の夜まで爆睡してしまうので、連休初日にしか行けないけど…。うまく付き合っていけたらいいな。


わたしのQOLを爆上がりさせてくれた女神・菅野さんのインタビューはこちら。ちなみにわたしも菅野さんも千葉県船橋市出身です♡

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