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【日々】吸血鬼な日々|二〇二三年五月




二〇二三年五月二十二日

 なんとなく身体が熱を帯びて重たい。陽射しはからだを焼き、すいこむ空気も熱と水分を帯びて呑みくだしづらい。ジャケットはもうクリーニングに出してしまってもいいかもしれないなとおもう。夜まで体力がもたなくて、残業案件を体調を理由にやんわり断って、そそくさと家路につく。すすめられるままに、変わり者の先輩がなぜかデスクにしまっていた体温計で熱を測ると、ほんのすこし体温が高い。




二〇二三年五月二十三日

 元気が出そうにないのでギリギリまで眠る。なにもしたくない。ぱらぱらと雨が降る。なんだ、ずいぶん肌寒いじゃないか。ジャケットはやっぱり、まだ下げられそうにない。




二〇二三年五月二十四日

 家を出ると白くまばゆい陽射しとさわやかな風。おもわず呻く。弱っているときの五月晴れはむしろ心身をむしばむ。

 きょうは会社を出てもまだ、おひさまが残っている。ホームのコンクリートから強烈に照り返す白い光を、うつくしいとおもった。帰り道のおひさまは、わたしを削りとっていかない。神々しさすら感じる。仕事をこんなに早い時間に終えて帰るのは、いつ以来だろう。地元に戻ってきてもまだ、空は明るいまま。気づかない間に、昼の世界はこんなにも長くなっている。





二〇二三年五月二十七日

 しろい陽射しと緑がきょうもまぶしい。木々がつくる影もうっすらとしたグレイで、すこし葉の緑がにじんでいるような気さえする。それがさわやかな風にあわせて路面で揺れている。傍らをさあっと気配がとおりぬけて、自転車がわたしを追い越してゆく。のっている女の人の、空気をたっぷり含んで広がったワンピース。水いろと白のストライプ。ちょっと黒がまじったあかるい黄金色の髪。休養はとったけれど、まだこういう爽やかさが栄養にできない。わたしのからだは半分くらい、吸血鬼のまま。







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