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日記ふうエッセイ【ひび】

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2023年4月の記事一覧

【日々】明日を知らない|二〇二三年四月

二〇二三年四月十五日  荒川のほとりへ。たっぷりと雨が降る。ほんとうだったら昼ごろにはここにいて、青空のもとひとりビールでもやって、屋台メシをつまみながらのんびりするつもりだったのだけど。できればスカートのステージも見たかったからなあ。まあでも、水溜まりを踏み抜くたびにふだん気にしていることが次々どうでもよくなっていく感じも案外悪くなかったし、たまにはずぶ濡れになるのもいいかもしれない。良い音楽はどこでどんなふうに聴いたって幸せになれる。でもちょっと寒いなあ。  なかなか

【日々】カッキョク、カッキョク|二〇二三年四月

二〇二三年四月四日  十分後も十年後も、同じように生きているだろうか。  聴きなれたフレーズをいつものように呑み下せなくて、舌の上でしばらくころがしつづける。さいきん、じぶんの世界が小さく狭く縮んで閉じてゆくような、漠然としたおそろしさがこころの片隅で蠢いている。じわじわと、日に日に、その輪郭が濃くなっている。でも、どうしたらいいのかが分からない。 二〇二三年四月五日  地元を歩く。母とお茶をする。変わっていくことと、変わらないこと。平日夕方、小学生のころ駆け回ってい

【日々】あたらしい、わたし|二〇二三年三月から、四月へ

二〇二三年三月三十日  一年に一度、この日に必ず聴くうたをかける。ことばが、うたごえが、いつもと違うつよさでしみこんでくる。またひとつ、あたらしいわたしになった。  あーちゃんと銀座でお茶をする。お互い、ふだんまったく縁のない街や店を、ふたりして庶民の目線でからかいながらあるく。でも、お高いティータイムもたまには悪くない。いつもはつけない高い香水も、こういうところに身を置くといつもよりなじんでいるような気がする。 二〇二三年三月三十一日  家族が出てくる、すごくいやな

【日々】消えないし、消さない|二〇二三年三月

二〇二三年三月十八日  給湯スペースで居合わせた同じフロアの女の子に振った雑談の切り口が下手すぎて、ヘンな感じになってしまう。わたしは本当にいつもそうだ。自然に生きられない。黙って並んで電子レンジ待ちするのも気まずいと思ったからちょっと無理してみたのだけれど、これなら話しかけない方がいくぶんましだった。向こうは若くてもちゃんとしているので、愛想良く振る舞ってくれてはいるけれど、それが余計に胸に痛い。「屈託ない青年」への道はあまりに遠い。 二〇二三年三月二十一日  かえり

【日々】いつか、小さなサーチライトを|二〇二三年三月

二〇二三年三月九日  きのう落合さんに褒めてもらった嬉しさがまだちょっと尾を引いている。家路を辿る中央線の車内、目線の先にいた女の子の、カーキ色が小粋なブーツカット・パンツに見惚れる。かっこいい。暗いグリーンからカーキ、イエローにまでわたる、髪色までつかったコーディネートがイカしてる。  よく寝たはずなのに、きょうはやけに頭も身体もおもたい。家に帰ると鼻水がとまらなくなった。ふつう逆じゃないかい。 二〇二三年三月十一日  十四時四十六分はきちんと見届けようと思いつつ、