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日記ふうエッセイ【ひび】

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2023年2月の記事一覧

【日々】迷い走る、多摩川・谷保・阿佐ヶ谷・江古田|二〇二三年一月

二〇二三年一月十一日  駅前の井戸はまだ水が出ないようだ。年明けから、ポンプの故障とかでずっと水が汲めないでいる。それを尻目にちょっと急ぎ足で、新小金井駅へ。この駅はなんでもない街中を歩いていると突然現れるのが良い。住宅街に埋もれている。ひっそりと、ある。西武多摩川線を使うのはこれで二度目だけれど、なんだかたまらなく好きな路線だ。なんでもない営みの中をちいさく走る単線。人がいなくてガラガラ。古い車両の座席はふかふか。いい。  終着・是政までのわずか数駅を乗り通したら、多摩

【日々】ア・カペラがつくる静謐と、「自由」のためのバランス感覚について|二〇二三年一月

二〇二三年一月八日  合唱団瑠衣の演奏会を聴きにふたりで入谷へ。しっかりした混声合唱を生で聴くなんて、一体いつ以来だろう。鶯谷駅を南口から出て凌雲橋をわたるときのながめがよかった。また東京キネマ倶楽部でライヴとか聴きたい。  ア・カペラのうたを聴いていると、その周りにシンと湛えられている静謐が、強い存在感を持って迫ってくることに気がつく。背筋が伸びるような緊張感がある。神々しさすら感じられてくる。人間という楽器のほかに、なにものも音をつくっていない、無との厳しい対峙。その

【日々】朝帰りに浴びるお日様の光はどうしてこうも苦しいんだろうね|二〇二三年一月

二〇二三年一月四日  ふいに、いつも顔を合わせている人や家族が遠く感じることがある。言葉を投げかけてもふだんの通りにボールが返ってこない気がする。色んなことのタイミングが、いつものようにいかない。なんとなくズレていて、噛み合わなくて、心の距離が遠い。  たぶん、ちょっとした偶然のすれ違いや運の悪さが重なってそう感じるだけなのだとはおもう。でも、こういう日はすごく気持ちが悪い。周囲と自分がどんどん乖離していって、世界から取り残されていくような気分になっていく。  きょうは

【日々】あたらしいお正月|二〇二二年から、二〇二三年へ

二〇二二年十二月二十九日  街がだんだんと静かになってきている。列車の客もすこし減ってきたようだ。いつもは閑散としている時間帯でも飲食店街がかなりの賑わいをみせている。オフィスではそこここで、「よいお年を」が飛び交う……。  仕事を納めて会社を出ると、社会をはなれてひとりのはだかの人間となって帰るべき巣へ戻ってゆくような、解放感とも孤独感ともつかないようなきもちになってゆく。これから数日は、ゆっくりと時間の流れを味わいたい。宇宙のいろをした夜の空には、半分くらいのすがたを