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ポイントはおつけしますか?

あるいは、ポイントつかいますか?と
聞かれることが、最近少なくなった気がする。
確かに賛否両論あったようにおもう。
いちいち面倒だなと感じる人が多かったのだろう。

でも僕はこの状況に深刻な危機感を抱いている。
電子決済すれば自動的にポイントが付与され、
いつの間にか溜まっていくこの社会のポイントシステムに。
全然便利じゃないぞ。

僕がなぜポイントの話なんてはじめるのか。
そこから話を進めたい。

もう10年以上、誕生日が怖い。
クリスマスなる催しも、怖い。
およそカップルと言われる二人の親密な
人間のあいだで語られる記念日というものがひどく怖い。

フラれるからだ。

奇しくもキナリ杯の締め切り日である
5月31日の48時間前、僕は、40歳になる。

今年もこの誕生日という記念日は、
失恋という誰も望まない、
受け取るにはあまりにも大きく、
重すぎる贈り物を届けにきた。

時節柄、今年の失恋は置き配だった。
届けに来たお兄さんに「どうもー」なんて言いながら、
スマイルとサインのレスポンスをするようなことすらできなかった。
40歳の節目のビッグイベントは1ヶ月前に予告なく中止になった。

コロナのバカ。

恋人がいれば誕生日が待ち遠しいはずだし、
そうあってほしい。
でもこう何度も孤独の監房にぶち込まれる誕生日が続くと、
おじさんになっちゃうなぁ、
歳を取るのは嫌だなぁ、とかそういう次元の話ではなく、
普通に、誕生日が怖くなる。やい、罪状を言ってみろ。やいやい。

受刑者がいきがるのも、
はじめの1週間がせいぜいだ。
長い在宅勤務期間中に多くの
刑務所モノドキュメンタリーを見た自分調べだ。

いかにマッチョか。いかに外で悪いことをしてきたか。
オラオラしていた奴が、ふいに、
失った自由や未来、愛、安心の大切さに
気づいた瞬間からシュン、とする。
落ち込んで、取り乱す。

僕も、シュンとしている。
今年は特にシュンとしている。

あー!フラれた!だれか!飲みに行こう!
朝まで付き合ってくれよな!喉から地が出るまで歌うぞ!
が、できないのだ。

コロナのバカ。

ひとりきりの、ほの暗い部屋に差し込む夕陽は、
ハナレグミの「深呼吸」の歌詞をより感傷的なメロディにする。

おーいおい おぼえてるよ
おーいおい わすれないよ

本来は夢を忘れそうになる、くじけそうになる自分を
奮い立たせるために歌ったもの。のはず。

でも今の僕には未練たらたらの
記念日恐怖症の男の歌に聞こえる。

ねえ、楽しかったよね?
ほら、ずっと一緒にいようって言ったよね?
おぼえてるよ。わすれないよ。

気持ち悪くていい。
受け手の解釈で楽しめばいいのだ。

そんな日々がつづく中で、
ポイントシステムのエラーに気づいた。
それがこのnote初投稿で書きたかったこと。
いつの間にか、ポイントが溜まっていることの弊害。

いや、それさ、早く言ってよ。
今度から気をつけるから。分かれば直せるから。
ごめん、ほら、美味しいご飯でも食べて
仲直りしよう!ね・・・?

気づいたときにはもう遅い。
遅すぎるのだ。

カチカン ノ チガイ マンタンデス

頼む。紙のポイントカードに、
ハンコを押していた時代に戻ってくれ。
5つめ!10こめ!すごいもう20こめ!ゴールまであとすこし!
なんて、途中経過を盛り上げてくれる
吹き出しチックな装飾が印刷されていた、
あの懐かしい紙のポイントカードの時代に。

システムエラーじゃないか。
可視化が容易ではない。
いつの間にか感のレベルが高い。
聞かれもしないから、
突然マンタン宣告される。

笑えないぞ。

生まれ育った環境が違うのだから、
2本の線をどこかで交わることができるように
お互いの歩む方向やスピードを合わせるんだ。

昔どこかのロマンチストが言った言葉だけど、
それが、恋ってもんじゃないのか。

コロナのバ…
いや、コロナのせいじゃないか。

結局、僕は相手を慮る能力が低いから、それを認めたくないから、
ポイントカードのシステムに愚痴っているだけなのだけれど。

いちど進化を遂げ、便利だとおもう人がマジョリティを占めるシステムは、
もとに戻ることはそうそうない。そもそもシステムの話でもないけれど。

だからもっと話そうよ。話したかったな。


ポイントおつけしますか?


ごめん。そこは僕の悪いところだね。

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