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「地域のために人知れず頑張る人はかっこいい」。 新聞記者だった僕が旭川でゲストハウスを始めた話

話を聞いたオーナー

旭川公園ゲストハウス(北海道旭川市)

松本さん
旭川公園ゲストハウスのオーナー。1984年生まれ、兵庫県出身。新聞社勤務の後、家族と共に旭川市に移住。2019年、普段着の旭川が見える「旅人と住民が交差する公園のような場所」を目指して、旭川市郊外にタイニーハウス3棟の宿泊棟とカフェ兼リビングスペースのコモン棟から成る「旭川公園ゲストハウス」をオープン。

旭川公園ゲストハウスの立ち上げの経緯、松本様の想いなどをお聞かせください。

北海道には、高校生のころ興味を持ったんです。学校の修学旅行で委員をしていて、そこで修学旅行の企画をしていました。「せっかくみんなで行くのだからユースホステルに分散して泊まって、最終日に合流してどういうことをしてきたか持ち寄ろう!」と言って自分が中心になって企画していました。でも、その時は学校側と旅行会社側で既に話が決まっていて、結局普通のホテルに泊まって観光地を巡る修学旅行に落ち着いてしまって…。

悔しかったので、高校の最後に卒業旅行として「人と出会う旅」というテーマで個人的に企画をして、同級生と北海道リベンジをしました。ユースホステルのオーナーさんは個性的な方が多いですし、現地の色んな方と話すという経験は、18歳の当時の自分にとっはなかなか貴重な経験だったと思います。
人の心に、何か引っかかりや余韻を残すようなものを作っていけたらいいな、と思ったのはこの時の経験がきっかけです。

北海道に行ったときの思い出から、すぐ「北海道で何かやる!」と思ったんですか?

いえ、社会に出てからは10年ほど新聞記者として働いていました。記者として色んな方にお会いする中で、人知れずコツコツと地域のために頑張っている方々に出会っていったんですよね。派手じゃないかもしれないんですけど、かっこいいんですよ。
東京や都会にいても、自分がやったことがすぐに伝わったり目に見えて響くことってあまりなかったりする。自分が取り組んでいるという実感が湧きにくいと思うんですよね。でも、地方に目を転じてみれば無限の可能性がある。何もない地域で、あほくさく思う人もいるかもしれないけど、それぞれがそれぞれの地域で何かを取り組んでいかないと国としてもダメでしょうし。

そうやって色んな方に接しているうちに、自分も、一人のプレイヤーとしてやりたいことをやって、結果的に誰かにインパクトを与えられるような生き方をしたいと思い始めたんです。
その手段として、ゲストハウスを選びました。
どんなゲストハウスにするのかを考えた時に、スタッフがいっぱいいて忙しいゲストハウスではなく、北海道での卒業旅行で訪れた民宿のような、家族に会いにいくようなゲストハウスをイメージしました。それもあって、今は妻と子供と一緒に、家族でゲストハウスを運営しています。

ゲストハウスを開く場所となった旭川はどんな場所ですか?

皆さん、旭川といえば動物園のイメージだと思うんですけど、旭川は「押し付けず・飾らず」な魅力があります。
「暮らすこと」で考えると足りないものが何もなくて、でも過剰ではない、というのが良さです。都市と自然が調和していて、人がいっぱいいる街町や飲み屋もあって、すぐ農村が広がっています。アクセスも良くて、買い物なども困らなくて、でも自然も近い。見えるところに山もある。旭川で暮らしていると、時間的にも面積的にもゆとりがあって、満足度や幸福度がはるかに上がりました。
色んな自然の恵みを活かして生業にしている人が多いのも特徴です。

例えば、旭川は山など木に囲まれた環境なので、家具がもともと有名でした。今でも、木こりや家具職人の方がいらっしゃるので、山を見て木こりの方と一緒に木を切って、製材の過程を見て、これがどういう風に家具になるのかというのを見に行くこともできます。興味がある方がいたら、いらっしゃった際に一緒に見に行きましょう!

旭川は地元に根付いているものが多く、質の高い丁寧なモノづくりをしている人がいるので、自然や産業・歴史などに興味を持つとすごく面白いです。
旭川公園ゲストハウスでも、家具や小物・雑貨など地元のメーカーさんや作家さんのものを使っています。もちろん、地元であれば全ていいというわけではないですが、訪れた方にはここに来ないと気が付かなかったようなものに出会って欲しいので、地元の素敵なものがあれば積極的に使うようにしています。

自然が豊かなので食もおいしいです。普段自分たち家族が食べているものを、皆さんにも楽しんでもらいたいなと思っています。あまり肩ひじ張ったおしゃれなご飯というよりも、おすそ分けみたいな感覚ですかね。地元の米穀店や近くの直売所・パン屋さん・チーズ屋さんで購入した食材などを使って、カフェの方で朝ご飯を出しています。良かったら食べてください。

訪れる方に向けてメッセージをお願いします。

色々”アンテナ”を張って楽しめる人にぜひ来ていただきたいです。
旭川は都会ではないですが田舎過ぎず、適度にゆったりできる環境だと思います。観光地やわかりやすい何かを求めてくると物足りないと感じるかもしれないですが、色んな物事にアンテナを張って目を凝らすと、すごく楽しめる場所だと思います。
ゆっくりと自然の匂いや空気、星空を楽しむこともできる。家具や食品などの製造過程に興味をもって話を聞きに行ったり実際に見に行くこともできる。

また、北海道は課題先進地域だと考えているので、「持続可能な社会を作る」という観点の取り組みに向き合うにも、とてもいい地域だと思います。
自分の感覚や直観的な興味に合わせて楽しんでもらえたらと思います。
実際に来ていただいて、「こんなことがしてみたい」「こんな人に会ってみたい」「こんなことが知りたい」と思ったら、僕や地元の人がお手伝いできることもあると思うので声をかけてくださいね。


旭川公園ゲストハウス(北海道旭川市)