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2022年を振り返って:売上100億円、営業利益(Non-GAAP)10億円達成のために行った3つのこと

クラウドワークスでは今年も「Advent Calendar 2022」を行ってきました。
https://qiita.com/advent-calendar/2022/crowdworks
クラウドワークスのエンジニアやPO、マネージャーなどがその奮闘を書いていますので、ぜひご覧ください。
そして、その最終日に私も一筆取ることになりました。タイトルにあるように、今年を振り返っての取組を書いていきます。

クラウドワークスの社外取締役を務めていただいている新浪さんが人生で初めて社長を務めたのが給食会社で買収時売上10億円程度のところから5年で売上100億にしたそうです。新浪さん曰く
”提供している料理の全てに課題があったので、主食のお米・そば・うどんの美味しさに徹底的にこだわった”
とのことでした。その時のお米へのこだわりが、後に社長を務めるローソンにおけるヒット商品のおにぎりを生み出すことになります。

一方クラウドワークスは、2022年9月度でついに売上100億円を超え、
・売上        105億円(前年対比+31.3%)
・営業利益(Non-GAAP) 10億円(前年対比+62.4%)

という成績を収めることができました。
(売上が10億円を超えたのが2016年9月期ですので、そこから売上100億を超えるまで6年かかりました。新浪さんに1年及ばず、という感じです。さすが新浪さん!)

そして営業利益10億円に関して言うと、こういったスキルEC・クラウドソーシングの業界において初めてまとまった利益を出した会社と言えるのではないでしょうか。

上場しても赤字を続ける中では、友人から「もう上場したから引退すれば良いのでは」「クラウドソーシングは絶対に利益が出る構造にないよ」などと言われることもありましたが、学び続け、自己変革を続け、ようやくここまで来たという感じです。

ここまでの道のりを振り返り、売上100億、営業利益10億を超えるために「経営者」として行った3つのことをまとめたいと思います。3つのことと言っても会社経営として行った具体的な戦略・戦術はIRで色々と発表していると思うので、主に経営者個人(1人の人間)として行ったことにフォーカスしてまとめたいと思います。

売上100億、営業利益10億を超えるために、経営者として行った3つのこと

■1.自分に見切りをつける(創業経営者における自己否定の難しさ)

最近、後輩起業家(未上場)から債務超過となり資金調達もできず、会社を清算する方向だと報告を受けました。応援していた起業家だけに残念ですが、今の御時世はそういうことが容易に起きる状況でもあると私自身気を引き締めました。

多くの起業家は、自分のやり方を信じ、自分のやり方によって道を切り開いてきた経験があるわけなので、今後も自分のやり方によってなんとかしようとします。ですが、そのやり方自体が市場・会社・事業の最新状況に合致していない場合、自己否定して学ぶ必要がでてきます。これが難しいところです。

「私は今までこうやってきたんだから絶対できるはず」→「いや、このままやっているとまずいんじゃないか」→「でも今から変えても、その新しい方向では大した知識も経験も無いし、大した成果は出せないよな」→「やっぱり今の方向でなんとかしよう」というサイクル。

そもそも起業家というのはなにかの突出した熱意やスキルによって突破して成果を上げてきた人が多いので、多面的な能力を要求される状況自体に興味が持てない(=それが嫌だから起業したんだよ!)というケースもあるように感じています。

これは上場前の起業家だけでなく、上場後にも起きます。これまで扱ったこと無い規模の社員数の組織、ファイナンスやIRなどの金融知識と経験、連結決算やBS、CFのマネジメントなど上場前にはそれほど必要の無かったケイパビリティ(能力)の必要性が押し寄せ、その一つ一つに対して、自分が学ぶのか、これまでのやり方でやるのか、を迫られます。

よく言われるのは、人に任せたら良いという話ですが、結局自分が理解できていないものは「どこまでやったら成果か?」という水準を他者と合意できないので、自分が理解せずに人に任せて上手くいくことはあまり無いと私自身は感じています。クラウドワークスにおいて上手くいってないことがあれば、それは結局私自身が理解し実践する努力をしていない、という風に考えるようにしています。

それらの起業家としての葛藤の中で、どんなに浅はかなスタートラインだったとしても、自分でゼロから学ぶ覚悟を持つ、そして時として、人に頭を下げて教えを請う、という姿勢が重要だなと思います。

私がある程度の接点がある先輩経営者として新経済連盟でご一緒させて頂いている楽天三木谷さんやクラウドワークスの初期からの株主であるサイバーエージェント藤田さん、そしてサントリーの社長でありクラウドワークスの社外取締役も務めていただいている新浪さんがいますが、全員常に学び続けている、と感じます。その学んでる姿を見せる見せない、あるいは我々からは理解できる理解できない、という点ではそれぞれのスタイルがあるとは思いますが。

私自身は2018年頃から、今までの自分のやり方をいったん横に置き、ゼロから自分が未熟な部分について学んで一つ一つ実践していこうと覚悟をして経営をしてきました。(今までのやり方を横においたところで、創業社長のカルチャーは強烈であり、後述する「複雑性・多様性のカルチャー」は経営の基礎として自然と残るものだと感じています。)

具体的に何を学んできたのかを、次の項目に記載します。

■2.脱デタラメ(過去の事実を収集し、成功と失敗を定義し、経営ポリシーを構築し、改善していく)

上場後2015年〜2018年ごろまでの経営方針は良い意味では何でもとにかく徹底的に挑戦していましたが、悪い意味では何も積み上がらず単に色々やっていたとも言えると思います。

その頃の私のポリシーはとにかく人がやっていないことをやる、今見えていないことに取り組む、複雑なことをやる、などといった具合で、アンチテーゼの塊みたいな経営方針で、ついてくる経営陣は大変だったとも思います。

もちろんその挑戦する姿勢があったからこそ設立から3年で上場したとも言えますし、現在の経営幹部の多くは採用における挑戦をした時期(上場時正社員29名しかいない中で1年間で100名採用をした)の入社、と考えると、複雑性に取り組むことで結果として事業や組織の多様性が生まれたとも言えるでしょう。

また、現在活躍している役員からも「カオスぶりが楽しかったから今も働いている」と言われたりするので、複雑性と多様性はクラウドワークスのカルチャーの基礎となっているのかもしれません。

その中で一つのきっかけがありました。2018年に三菱UFJフィナンシャル・グループ様と大和証券グループ様と業務資本提携を行ったのですが、そのタイミングで時価総額数兆円の、とある上場社長の方にも資本参加の検討を頂いたことがあります。

その際、その社長は初期ヒアリングとして来社され、当初1時間の予定だったのが、質問をし続けて延長し、最終的には3時間に及ぶミーティングとなりました。客観的に見れば、1時間の予定が3時間なのですから、強い興味があったように思いますが、最終的にその方は「この会社はデタラメだ」と言葉を残して去っていきました。

時価総額数兆円の会社を創り出した経営者が時間延長して3時間のミーティングの末にデタラメと言って帰る、という事態に衝撃を受けて、その社長のコンサルティング会社時代の部下である別の先輩にその話をしたところ、その先輩いわく「それはね、人材の流動化市場には強い興味があるってことだと思うのですが、吉田さんの経営が本当にデタラメだったんだと思うよ」と咀嚼して教えて頂きました。

その時に、私は2通りの選択肢があったと思います。
選択肢1.MUFGグループ様と大和証券グループ様と資本業務提携したんだから、今のやり方でどんどんやっていくしかない。認める人認めない人いるけど、認める人とやっていけば良い。(≒学ばない)
選択肢2.市場選択は正しいが経営はデタラメ、ということは、経営が改善すればその社長が創り出した時価総額数兆円のような上場企業になれる可能性があるからこれは学ぶ機会だ

私は2を選択し、その上場企業の経営企画担当役員の方にお願いをして経営のやり方を伺ったり、その会社の初期DDの質問表を用いて社内で勉強会を開き、我々の経営との差分は何かを考え始めました。

その中で創出されたのが、2019年11月から開始し、現在に至る「生産性向上ポリシー」という経営手法です。
(正確には、ディスコ様の経営手法に学ぶところや、先日退任した弊社取締役の田中優子の提案などがあるのですが、転機の主軸になったのはこの出来事だと感じています。)

そこから、「生産性向上ポリシー」にとどまらず、
・カルチャーブック  :会社の価値観
・ソリューションブック:日々の仕事の問題解決フレームワーク。過去の仕事のトラブルの解決方法を記述し、蓄積していくもの。
・営業マネジメントポリシー「6Bases」:キーエンスの営業手法を基礎として営業フレームワーク。過去の営業手法の成功事例を蓄積し、横展開・実践・改善を行う。
・M&Aポリシー    :過去のM&Aにおける成功と失敗を定義し、M&Aの成功確率を上げるための仮説を合意し、改善し続ける。
・新規事業開発ポリシー:過去の新規事業における成功と失敗を定義し、新規事業の成功確率を上げるための仮説を合意し、改善し続ける。
などなど多岐に渡って、経営のフレームワークを構築し、実践・改善を続けています。

※これらの一部は、当社サイト内でも公開しています。
https://cw-culture.notion.site/cw-culture/CW-Culture-CROWDWORKS-35f9dcc6b1b341f6926fe9dfff4f7704

そのお陰で、売上100億円、営業利益(Non-GAAP)10億円も突破できましたし、現在のところ24ヶ月連続単月の業績目標を達成しつつ、売上・売上総利益の30%成長を実現できていると思っています。

時価総額数兆円の上場企業経営者から学んだことにより、脱デタラメで、経営のあらゆる事に仮説を持ち、実践し、改善することで再現性を高め続ける、という経営の新しいケイパビリティを獲得しました。

これらの視点は、元々一点突破型の起業家の私にとって、特に得意分野でも無かったし、強みを活かせるとも思っていませんでしたが、その方に頂いた時間を精一杯学びに活かそうと思い、決心をして取り組みました。

ちなみに、謙虚に学ぶ姿勢を持つと良いこともあり、2019年11月から生産性向上ポリシーにより、徹底的にコストカットをして筋肉質なPLの体制を作った矢先に、2020年2月ごろにコロナが到来しました。あのまま赤字経営で続けていたら、経営が立ち行かなくなった可能性があったと思っています。

謙虚に学ぶ姿勢は、運も呼び寄せると思っています。

■3.今にフォーカスをする(過去に囚われない)

先述の先輩経営者の皆さまに感じることは一つ一つの言葉に迫力があり、時として未来を語り、人を導いていく力がある。未来がわからないのは皆同じはずなのに、なぜ未来を語る時に説得力が生まれる人と生まれない人がいるのか?という疑問です。

私自身未来を語って社員を導いていますが、そこに何の差があるのか、ということを近年ずっと考え続けていました。

その答えの一つが「今感じていることに率直である」ということだと思いました。

先輩経営者の迫力・説得力は、現在に熱狂し、現在を語っているからこそのものだなと最近痛感するようになりました。
未来は見えるとか見えないとかではなく、未来は現在の熱狂の延長にある、ということかなと。

現在の対比は「過去を基にマネジメント」することですが、過去に寄る経営の最たるものがコンプレックスだと思っています。

コンプレックスをバネに経営することは力も生みますが、過去の後悔や恐怖は他人にとってもプレッシャーとなります。会社のメンバーたちが今に集中できなくなる。

私自身は、元々起業家としてコンプレックスや恐怖心をバネに頑張ってきた傾向が強いと思っています。「負けてたまるか」「あの時はこうだったけど、今回はなんとか生き残ってやる」そんな思いでやってきました。それはパワーを生み出す部分もありますが、一方で他人に対してもバイアスを持つことになります。なぜならば、自分自身が過去の感情を基にマネジメントをしていると、人の現在の所作も過去に紐付いていると思って接する傾向が生まれるからです。(例:「あなたは本当は◯◯と思っているんだろう」)

(実際に、勉強して5年目になる成人発達理論では、人は環境の中の動物であり、過去の環境の連続の中で現在の自分がいること、社会も同じで過去の連続の中で現在があることを学びます。そういった意味では「過去の連続が現在」という認識手段も経営においては重要だと感じます。)

ですが、先輩経営者を見ていて、「他人」でもなく「過去の自分」でもなく「未来への不安」でもなく、現在の自分の仕事に熱狂していると、その経営者の周りには、現在に熱狂している人が集まってくる。そんなスパイラルを生み出しているのだなと思います。

今回退任した取締役の成田は11年勤続、田中は8年勤続です。よくこんな私と一緒にやってくれました。感謝を伝えたい。
そして、今も一緒に走ってくれている取締役野村も11年、大類が8年、月井が5年、伊藤が2年、新しい仲間が続々と参画してくれています。感謝です。
※トップの画像は、先日の成田・田中送別会にて、創業取締役だった佐々木と社外取締役を務めていただいた青柳さんが駆けつけてくれてみんなで撮った記念写真です。

こんな幸せな仲間たちに囲まれて、なにかのコンプレックスに囚われている必要はもう無い、と考えています。私は今年を機に、今に集中し、今に熱狂し、関わってくれるみんなを幸せにするべく、残りの人生と経営をやりきろう、そんな風に考えています。

2022年も残り少なくなりましたが、良いお年をお迎えください。本年も有難うございました。

流通2兆円を通してビジョン「世界で最もたくさんの人に報酬を届ける会社になる」を実現し、ミッション「個のためのインフラになる」を追求し続けますので、2023年も皆様応援のほどを何卒よろしくお願い申し上げます。

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