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路瑠の恋愛



路瑠は情が移り易く、人の顔色を伺いながら相手に合わせる癖がある。
好きな人なら尚更、嫌なところには見ないふりして、
良いところだけを見て、盲目的に好きになろうと努力する。
よく言うと『相手に合わせる人』悪く言えば『自分がない人』

路瑠が初めて付き合った元彼は、甘えん坊だった。
ふと見せる淋しそうな仕草に、何故だか互いに惹かれあった
ふたりで空っぽの心を埋めようと
子猫のように恋をした。

「いつか結婚しようね」と彼が囁く言葉も心地よかった。
手足が細っそりと長く、腰に手をまわすとまるで女の子のように痩せて
いた。薄い顔立ちは、透き通るような白い肌。
彼が路瑠を見つめている。

こちらもまるで女の子を見るように彼を見つめると
細く繊細な指先が優しく頬にふれ、髪を撫で、路瑠の肩にもたれてくる。
路瑠も彼に身体を寄せる。

ゆっくりと解ける氷菓子のような静かな甘い時間が過ぎていく。
身体の奥から疼くような感覚、でも

本当はここまででよかった。
本当はこれ以上の行為を路瑠は好きではなかった。
このまま時が過ぎてくれたらと願っていた。

彼は、女の子のような容姿でいて、やっぱり心は男の子の彼に
路瑠は時々戸惑う時があった。

それでも『身体が心を繋ぐ』と勘違いしていた。
それに『いつか結婚しようね』の囁きも効いていた、
わたし達は互いに離れられない、いつかきっと結ばれると信じていた。

いつからか「生活費が足りないからお金を貸してくれる」とねだる彼に
身体だけでなくお金を貸すことも許してしまった。

ストンと路瑠の懐に入ってきた
気がつくと彼のなすがままになっていく。

だけど、だんだんこちらの生活も苦しくなり「お金を返して欲しい」と
切り出すと、彼の心は冷たく態度は素っ気ないものに変わっていった。

路瑠は彼の心を引き留めようとしたけれどダメだった。

ある日、家まで送ってもらう帰り道、車中で些細なことで口論になり、
突然車を道路の端に止めた彼は、
路瑠の腕を強く掴み、強引に車から降ろし、暗い夜道にそのまま路瑠をひとり残し、車を走らせて去っていった。
何度も通って知っている道だけど、行き交う車も多く、歩道もない、
最寄りの駅まではまだ遠いい、心細くトボトボと歩く府中街道。

もう、ふたりの関係は戻らない。

悔しいからお金は意地でも返してもらった。

でも、捧げた心と身体は傷ついた…しばらく落ち込んで涙がとまらない。

何がこんなにわたしを不幸にするの?
何で?何で?と悩んで出した答えは

始めから本音をぶつけ『嫌』なことははっきり言おう、
もう『我慢はしない』
それで上手くいかなかったら、最初から付き合わなくてもいい。

相手の様子を伺ってしまう路瑠には、思う以上に大変なチャレンジ。

でも、次にお付き合いする人とは絶対に対等に付き合いたい。






『僕の中に路瑠がいる』の執筆過程でカットした文章の一箇所です。

この後、路瑠にはどんな出会いがあったのか。
どんな青春を送ったのか。結婚、出産、倒産、そして
病に倒れた夫のこと。家族の愛を書いています。

これは家族に恋した、恋愛小説です(と思って投稿しました。)

↓  『僕の中に路瑠がいる』 ↓


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