見出し画像

【ライブレポ】KITASAN ROLLING 2024 6/22【KEYTALK】

ずっと忘れることができない記憶になりそうです。
2024年6月22日(土)、KEYTALKが出演したのは「KITASAN ROLLING 2024」。
群馬・茨城・栃木の”北関東”3県の持ち回りで主催するという、年一回のサーキットフェスの舞台、今年は群馬県・高崎でした。
ほぼ北関東に接しているところに住んでいながら、全くこのフェスのことは頭にありませんでした。
行こうと思ったのと、存在を知ったのは恥ずかしながら同時。
それもライブの前日でした。
全ては、ベースボーカル・首藤義勝の一件があったことにほかなりません。
体調不良という理由で急遽お休みが決まり、それでも残った3人で出演するという決意に心動かされ、知ってすらいなかったこのフェスに行こうと決めたのでした。

とはいえ、このライブレポを義勝の件にことさらに絡めて書いていくつもりもありません。
あまりにそこに寄せすぎるのも、ストッパーをかけずに憶測をSNSに流してしまうことと等しいくらい御法度なことだと個人的に思うからです。
あくまで「KEYTALKマイナス1」だったときのステージの見方、こちらの感じ方を中心に書いていきます。

直前の予定が押していて、乗り換え案内と高崎駅から会場への地図を見ながらギリギリいけるかなと大宮からの新幹線に乗って高崎に向かいました。
在来線を使っていてはとても間に合いません。
駅に着いたのは17時7分。
Gメッセ群馬でのKEYTALKの出演があるのは17時25分。
会場へは歩いて10分程度なので早歩き程度でオンステージには間に合いそうだったのですが、土地勘もなくなにかと不安だったのでタクシーを使いました。

バタバタしながら入場ゲートに近づくと、ちょうどKEYTALKのリハをやっていたようで、Spring Sparkleらしき音が流れていました。
うっすら音を聞きながら、リハとはいえ珍しい曲をやるもんだなと思っていたのですが、後で他の方のレポを読むと、Spring~だと思っていたのは東京シネマだったと知りました。
勘違いするくらい焦っていたのか何なのかは今もよく分かりません。
巨匠の「次は出番なんでお願いします!」みたいな声も聞こえてきました。

彼らが一旦舞台から捌けて入ってみると、Gメッセは、普段は企業の展示会に使われそうな、国際展示場をぎゅっとしたような会場でした。
幕張のようでもあるしSSAのようでもある。
2つのステージが北側に隣り合い、椅子アリの指定席とスタンディングのその他エリアがざっくりと広く区分けされています。
KEYTALKのステージ2つの中でも入り口から遠いほうだったのでそちらに向かい、確かBブロックに入ったのだと思います。
一応最前ブロックですが、お客さんが程よく密になっているので後ろのほうでした。

気になるステージに目をやれば、恐らくサマビ用と思われるお立ち台と、マイクとギター(ベース)アンプ等があり少し高い位置にドラムセットがある、といういつもの光景でした。
いつもと違うところは、マイクスタンドと竿、そしてお立ちの数が一個少ないということです。

ほどなくして開演。
いつも通り物販が流れてきてハイテンションにメンバーが上手から登場してきました。
エモーショナルな書き方にはしたくないと前置きしたものの、これだけは書かずにいられません。
この日何度も”いつも通り”に助けられた気がします。

①②夕映えの街、今/太陽系リフレイン

センターマイクに近づき、巨匠が歌いだすと同時にスモークが起こり、照明により空気が赤っぽく染め上げられました。
まず視覚でその雰囲気を感じ取ります。
そこからワンフレーズ目。
楽器がしんとなり、耳を通じて幕開けを感じます。
「降り続け染めてく~~」
1曲目は、いつもならライブの最後のほうにやるはずの、「夕映えの街、今」でした。
物販の反応と、サビ終わりの巨匠ロングトーンでのかき鳴らしに合わせた拍手がまばらだったことから、少なくとも自分の周りではあまりバンドを知っている人はいなさそう。
こういうとき、少数ではありながらも曲に乗せて身体を動かしている、見るからにKEYTALKファンという方を近所で発見すると、かなり心強くなります。

もともとこの曲は巨匠が一人で歌いきるものなので、そこでの違和感は全くないのですが、歌声はいつにも増してどっしりとしていました。
楽器はじめ低音の響きがよく、対角線上の一番遠いエリアまでしっかり響いているのではと思うほど伸びてきます。
2番では武正”が”ツーステ。
一人欠けている事実を抜きに、あえてこれまでと違うところを挙げるとすれば、心なしかテンポがゆっくりな気がしました。
一つずつ確かめながら音を鳴らしているような気がします。

そして2曲目の「太陽系リフレイン」。
これまた他を寄せ付けない、硬質なロックです。
この選曲も心強かった。
武正のギターソロ、冒険をしながらも安定感に満ちていました。

③④BUBBLE-GUM MAGIC/DROP2

「今日は完全体ではないけれども」
たしかこのブロックに入るときだったか、巨匠が話し出します。
この日初めてのMCです。
「イレギュラーを楽しみたい」
巨匠は多少の歌詞間違い程度でしたが、八木氏はどうやらそこそこのミスをしたらしく、そこで笑いが起きていました。
「いつもはツインボーカルだったから色々考えて二人に歌ってもらうことも考えてたんだけど」といって巨匠が武正と八木氏を振り返ると、八木氏は喉を触って準備万端の合図を出します。
「けど返金しないといけなくなるから」
そういってずっこける2人。
つくづく思うのは、KEYTALKは面白さをかなり提供してくれているように感じます。
どんなときも何があっても明るく。
ポジティブなオーラは、周りに伝染します。
この日も自分が見た限りでは、そもそも事情を知らない人が多かったかもしれませんがネガティブな雰囲気は全くありませんでした。
よくあるフェスの、一光景です。

「踊れる人は踊って下さい!」
そういって始まったのが「BUBBLE-GUM MAGIC」。
食ったイントロでの武正の入り、八木氏によく指摘されているらしいですがこの日は合っていたのでしょうか。
先ほどまでの硬めの音とは違い、洒脱なメロディーが広がると会場の雰囲気もどこか緩やかになります。

「DROP2」では頭のフレーズ終わり、間違いなくいつもの「ワンツー!」が聞こえてました。
メンバーではなく、恐らくファンの誰かが叫んだのだと信じています。
初めはさほどだったフロアの熱が、後ろのほうにまで伝わってきました。

⑤⑥黄昏シンフォニー/東京シネマ

「義勝のことはきのう知って、3人でこれでもかってくらい話し合ったんだけど」
再び巨匠。
「音を止めないって決めてやってきました」

拍手、歓声に指笛が起こります。
音を止めない。
コロナ禍はじめ、躓きそうなタイミングでよく口にしていた言葉です。
この言葉に、KEYTALKの矜持が詰まっている気がしました。

そうして始まった「黄昏シンフォニー」。
眩しいくらいの照明がふっとオレンジ一色に変わります。
思えばこの曲、しっとり系であるにも関わらず大規模フェスでかかる頻度がわりかし多いような気がしています。
すうっと大きく息を吸い込み、着実に鳴らされていく音を感じていくと、空の広さとか世界の大きさだとかごくごく当たり前のことを思い知ります。

「この先君を待つ いくつもの未来を」
音数が減り、ボーカル一色になったラスサビ前のパートで、八木氏がスティックを持った右手で拳を作って天に掲げているのが見えました。
小高くなったステージど真ん中から見えるそれは祈りのようであり、決意のようでもありました。

「東京シネマ」は強力な応援歌だと思っています。
「マキシマムザシリカ」とともに、熊本から上京してきた巨匠の描く「大きな夢を抱いてやってきた若者」シリーズの歌。
KEYTALKの魅力を形づくる青臭さが込められていて、「君は確かにこの世界の真ん中」と歌ってくれるこの曲は、何かあったときのお守りになってくれる存在だと思うのです。

好みは変わっていっても普遍的な歌。
これからの人生でもバイブルというか指針になってくれる気がします・

元から好きな曲でしたが、ここ最近は個人的に「アオイウタ」くらい好きになっている曲で、アコースティックツアーなどでやってくれないかなと思っていましたが、まさかこういう形で披露されるとは思いませんでした。
夕映えしかり巨匠オンリーの曲なので、恐らく一件がなければセットリストには入ってこなかったのかもしれません。

巨匠はマイクにしがみつくように、時々首を振りながら無心に歌っているようでした。

⑦⑧Summer Venus/MONSTER DANCE

ラストのブロックは定番曲。
安心感は絶大でした。
武正は控えめながらも「ぺーい」四連発。
八木氏は椅子から立ち上がりドラムスティックをくるっとさせます。

サマビの間奏、長尺のクラップで巨匠はTシャツを脱ぎだし、プッシュアップしだしました。
拍手はそのまま筋トレを煽るような構図に。
去年のツアーでやり出したときには一部で「遠くからだとあまり見えなくなるからやめてほしい」と言われていた気がするのですが、そんな声を無視していつものをやり切ったのには頼もしさすらありました。

いつもと変わらないそんな光景を目にすると、やはり笑ってしまいます。
「ロックだから」を盾に、変にカッコつけないところ。
ここもKEYTALKの魅力だと思います。
好きになったころから何も変わっていない、ちょっとばかりのおふざけをしてキャッキャ笑う、そんな彼らのキャラクターがあったからここまで追いかけて来たのです。

いつもよりややギュッとした配置で、3人は互いを見ながら時に笑い、時に確かめ合うようにして音を鳴らしていました。
通ってきた学校こそ違いますが、その様子は同級生のセッションそのものでした。
利害とか邪なもののない、この上なく純粋な会話を見たように思います。
自信に満ちたようなときもあれば、フロアから元気を貰っているようにも見えたりしました。

裸になった巨匠が武正の方に手を置いていたのも印象的でした。
アンプのところに吊るされていた紫色のモンスター、これは義勝の分身ですが、最後は巨匠がモンスターにベースを弾かせてあげて終了。

終わってみれば、3人であることの違和感は少なく、手負いの中で何とか乗り切ったというふうではない、完成されたステージでした。
恐らく人によっては、MCで巨匠が事情を話すまでは3ピースバンドだと思った方もいるかもしれないと思うくらい、ごくごく自然なまま、40分の出番は終わりました。

去年の札幌でのツアー、巨匠がファンに向けてこんなことを言ったのを思い出します。

「生活の事情とかでなかなかライブに来られない時があるかもしれないけど、俺たちはライブハウスで待ってるから」

今はこういう状況でこそありますが、彼らはライブを放棄せず、音を止めずにステージに立ってくれました。
正解などはなく、強いて言えばメンバーが出した結論が正解なのだと自分は思っていますが、出してくれたのはこれ以上ないほど誠実な答えではないでしょうか。

FC配信を観て、この日のライブを観て思いました。
現場を観てみないことには何も分からない。
これは、ライブに行く者のほうが発言権があるとか強いとかいう意味ではありません。
SNSの発信と、生でみるメンバーとの間には大きなギャップがあります。
それと同時に知ったのは、客観的な意見を得るにはSNSはあまりに主観や悲観にまみれているということ。
現場を観たとて知り得ないこともたくさんありますが、まずもって憶測は何も生まないと思います。

ライブの行き帰りや会場外の出店で買ったスイーツを食べているとき、KEYTALKファンの会話が聞こえてきました。
勝手に耳を挟むなんて趣味の悪いことをして恐縮ですが、内容はバブルガムを久しぶりに聞いたとかローモバがどうとかそういう気楽な、明るい話題ばかりでした。
悲観的なSNSとは違って、リアルタイムで流れていくその場の空気はとりとめもないものなのです。

あるいは舞台裏やステージをハイライトみたく映した、いつものインスタのリールを見れば分かるかもしれません。
出ていく間際に、左側に重心の寄った義勝の誇張モノマネをした八木氏であったり、ステージをはしゃぎながら走り回る姿は、本当にいつもの光景でした。

一件があったその日に配信があり、また翌日に(飛び入り参加もしようと思えば可能な)ライブがあったのは、こういう言い方が適切なのかも分かりませんが不幸中の幸いだったかもしれません。

久しぶりにライブレポを書こうと思ったのは、ほとんど使命感に駆られたところもありました。
良くはない報に触れ、暗い感情にばかり支配されている方がこれを観て現場のポジティブな空気感を少しでも知ってもらえたら。
そういう気持ちで書きました。
どこかで悲しんでいる方に届けばいいなと思っています。


この記事が参加している募集

#イベントレポ

26,215件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?