東京パフォーマンスドール「SHINY LADY」

曲の始まりを告げる「チャイム」の音。イントロのこの音を聴きながら、メンバーの誰かが曲名を告げる、そんなライブの情景が浮かんでくる。同時に、ライブが終わりに差し掛かっている感覚も受ける。ライブのアンコールや、本編ラストなど後半に挟まれることの多い、重要な立ち位置の曲である。

当てのない苛立ちを スルーしてくように
街は Noisy Noisy ヘッドフォン塞いで

リーダー、高嶋菜七さんの歌いだしから始まるこの冒頭、ここですっかり曲の世界観に入り込む。高嶋さんの安定感は抜けており、この歌に限らず没入しやすい。また、あくまで個人的なイメージなのだが、高嶋さんの目にはひきつけられるものを感じる。オンラインライブでも、それは明確に感じた。表情というより、目なのである。メインボーカルを張っていることへの矜持が目に宿っているような感じを受ける。

TPDのメンバーがより「SHINY LADY」になれるように。そんな思いも込められた「応援歌」のような曲なのだと思うが、男であっても共感できる部分がある。高嶋さんソロパートのここの歌詞も、日々の苛立ちをなんとなく言葉にしてくれている。都内の大学院に通っていたせいもあってか、ここの部分を聴くといつも地下鉄の雑踏や電車の近づいてくる音が聴こえてくる気がしている。実際、研究室をモヤモヤした気持ちのまま出てこれを聴くと、そのモヤモヤがふっと安らぐ。

一方、2番同じ箇所の歌いだしは脇あかりさん。ここでは目というより彼女の顔に注目する。

好き?嫌い?また曖昧 不安と希望を混ぜ
空も Cloudy Cloudy 泣き出しそうで

脇さんは高嶋さんとは対照的に、表情の豊かさが真っ先にくる。彼女が表出する感情は振れ幅が大きい。TPDのメンバーの中でも特に「笑顔」の印象が強い脇さんだが、この曲の冒頭では泣き出しそうな表情で歌う。まさに不安と希望の混在を体現したかのような表情である。いつもの笑顔とのギャップは、高嶋さんとはまた違う魅力である。

Bメロ以降も他のメンバーのソロ(ソリ)がもれなくあったり、曲全体としても良い。けれどもそれ以上に、先述したAメロ2人の顔がこの曲においては抜けていると思っている。

TPDの魅力の一つはノンストップライブであるから、曲も1番のみ歌唱で、2番が省略されることは当たり前になっている。これは流れや時間的制約などを考えると仕方がない。けれども、個人的にはこの「SHINY LADY」はカットしてほしくない。曲は披露してくれたのに脇さんのソロが見られないのは残念過ぎる。贅沢この上ないが、この曲だけはフルコーラス願望がどうしてもあるのだ。

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