私の中の西洋コンプレックスー2009年4月ヨーロッパひとり旅 no10「ベルリン雑記」
*この記録は、元々2009年に作成した小冊誌の内容を、旧ブログで公開し、さらにそこから再構成したものだ。現在とは、ユーロ円の相場も、物価もかなり違う。日本でのアイフォン発売が、2008年にはじまったばかりで、スマホもなかった。ガラケーも電源を切ったまま旅行中は使わなかった。現在の海外旅行事情とは、状況が異なることを、お知らせしておきたい。
第2次世界大戦中に、ベルリンの街は、徹底的に破壊されたそうだ。
様々な過去を一掃するかのように、現在のベルリンは整然と佇んでいる。
同じように戦後の焼野原から蘇った無秩序な東京の街とは対象的である。
街の中心を横断している大通りは、統一ドイツの象徴的な存在である
ブランデンブルク門を境に名前が異なる。
西側が6月17日通りで道幅60メートル、東側はウンター・デン・リンデン大通りで、幅40メートル。
西の中心には、戦争中一部を破壊され、そのままの状態で残されているカイザー・ヴィルヘルム記念教会があり、
東の中心はネオバロック様式のベルリン大聖堂がそびえたつ。
道幅は広くどのモニュメントも巨大で 見る者を威圧するような圧迫感がある。
ゴミ一つ見当たらず、とてもクリーンな印象だ。駅の有料トイレ(0.80ユーロ)は.床、蛇口、シンク、便器など至る所ぴかぴかに磨き上げられていた。
特に便器の清潔さと言ったら、これはもう芸術の域に達する。座ってサンドイッチでも食べようかと思える位、徹底して衛生的だ。
宿泊した *ホステルは、ベルリンの中心で旧東側のミッテ地区にあった。
*「Bax Pax Downtown Hostel」宿泊、ダブル、シャワートイレ付59.40ユーロ。2009年4月現在。
モダンな赤い壁と白いベッドの部屋、フレンドリーなスタッフ、*朝食バイキングの全粒、ライ麦、トーストのパン、ガラス鉢に盛られたヨーグルト、フルーツ、サラダ、ハム、チーズ類……。
*朝食バイキング5ユーロ。2009年4月現在。
すべてがやはり、訪れたベルリンの街のように完璧で清潔だった。
それらの徹底した衛生観念と完璧さは、わたしに安全で守られているという気持ちさえ起こさせた。
ことに2006年サッカーワールドカップ・ドイツ大会に合わせて開業した、
近未来的なベルリン中央駅は、快適だった。
早朝4時半に夜行列車で着いても、カフェからコーヒーの香りが漂い、
パン屋のショーケースには、ぎっしり焼きたてのペストリーが並ぶ。
どれも手頃な値段で、1ユーロほどで、大振りのアイシングクリームが
たっぷりのったペストリーが買える。*2009年4月現在。
地下2階地上3階、全面ガラス張りの建物の通路には、ベンチが一定の間隔で配され、
わざわざカフェに入らなくても、ソーセージやパンを食すことが出来る。
食べ終わった後のゴミは、すぐ隣にある4分別に分類されている、ぴかぴかのステンレス製のゴミ箱に入れる。
ベルリンに到着した日の朝、駅のカフェに入った。*カプチーノをカウンターで注文し、ラウンジの様にテーブルをぐるりとソファが囲んでいる一角に、座りこむ。
*カプチーノミディアムサイズ 3.30ユーロ(2009年4月現在)
すでに学生のグループや、労働者風の男達で一杯だった。背の高い一本足のテーブルに、立ったまま顔を寄せて談笑していた中年の男性のグループが、
見定めるように、こちらを悪びれもせず凝視する。
こういったタイプの凝視は、ベルリンのあちこちで感じた。異質の人間を見る視線には慣れている。だが、このあからさまな好奇の視線は、はじめてだった。
パリで、ロンドンで、アムステルダムで……。人々は、その場にわたしがいないかのようにふるまう。そしてこちらが、屈みこんだり、本に視線を落としているとき、ひそやかに観察する。
まっすぐな視線には、微笑むことが出来る。だが、あたかも存在しないかの様に振舞われると、それに反応することはむつかしく、求められてもいないだろうという気がするのである。
遠慮のない視線と、清潔、ハイテクの駅舎、これが短いベルリン滞在の思い出のすべてだ。「また行きたいか」と尋ねられたら、迷うこと無く「イエス」と答えるだろう。
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