見出し画像

【超短編小説】料理は愛情!

 母は日ごろから料理は愛情と言っている。でもぶっちゃけた話、母の料理は不味い。なので父や弟と、母のいない所で
「きっと僕らの事を愛していないんだね。だってこんなに美味しくないもの。ぐすん」
 と泣きまねをして笑いものにしていた。
 それがある日みつかった。
「あんたたち・・・私の料理が美味しくないって本当なの?」
 僕はしどろもどろになって
「いや・・・そんなことは・・・でも・・・」
 と。
「はっきり言って! どうなの?」
 すると父が
「お母さん。いつも作ってくれて悪いんだけど、はっきり言って美味しくないよ。ごめん」
 そう言う。
 ああ、そんなはっきり言ってしまって・・・
 しかし母は
「そっか。ありがとうね、言いにくい事言わせてしまって。私ぜんぜん気づかなかったから」
 落胆したようで、それでいてなんだかさばさばと言う。

 母がいなくなった部屋で弟と
「ああ。やってしまったな。僕ら最悪だな」
「笑いものになんてするんじゃなかった。あの顔見た?」
 と後悔の言葉しかでない。父ですら、
「俺も悪ノリがすぎたよ。注意すべき立場だった」
「いや、お父さんは悪くないよ。僕らも自分で判断できなきゃ」
「そうだよ。それよりお母さん大丈夫かな? これから料理を作るたんびに傷つかなきゃなんない」
「それは仕方のないことだ。お母さんの料理が不味いのは事実なんだから」
 はぁ・・・
 3人でため息をついた。
 だが!

「美味しい! お母さん。この料理本当に美味しい。お世辞じゃなくて」
 あれからしばらくして、母の料理がどんどん美味しくなっていった。
 得意げな母。
「そうでしょう。料理教室にも行ったし、レシピも見直した。これもすべてあなたたちに本当に美味しい料理を食べてもらいたいからこそ! いまこそ言える、料理は愛情! そうでしょう?」
 僕らは感動していた。
 まさに料理は愛情! その意味を知った気がして。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?