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【超短編小説】百物語

 友人たちと百物語をやろうという話になった。
 百物語とは怪談話を一人ずつ語り、100話目になると本物の物の怪があらわれるという、昔ながらの催し物である。別に100人集まらなくてもできるらしい。
 僕らは10人の男女の友人たちの集まりで100話を語りだす。
「むかしむかし・・・」
 そんな調子で次々と怪談話を語っていく。
 そして、100話を語り終えた
「何かおきた?」
「うーん。なにもおきないなあ。こんなのやっぱくだらない迷信なのか。つまらない」
 その時、
「あ! ちょっと達夫君体が透けてる!」
「え? あ! そういうおまえだって!」
「てゆーか、みんなだよ。みんななんか透けてる」
 あ・・・そうか。僕はようやく思い出す。
 僕らは百物語を行おうと集まった、人里離れた雪山の別荘で、大雪に降られ閉じ込められ、そのまま死んでしまったのだった。
「そうか・・・僕ら自身が物の怪だったというオチか」
「でも、これでようやく命が終わっている事に気づけた。やっと天国へ行けるね」
「ああ。そうだな。よかったなホント」
「親父たち元気で暮らしてるのかな? どれくらいの時間がたったのだろう」
「わからないけど、案外もう知ってる人たちはみんな先に天国に行っちゃってたりしてね」
「それ、ウケるな。」
「さあ、そろそろ俺らも行くぞ」
 そうやって僕ら10人はわいわいと騒ぎながら、その場から離れた。

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