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2020年のロマンス詐欺感想(ネタバレあり)

辻村深月さんの本を読むのは、琥珀の夏に続いて2冊目。
嘘つきジェンガというタイトルから、どんな暗い話かと心して読んだら意外と爽やかな読後感でした。個人的にはすごく好きなお話です。

山形から上京してきたのにコロナの影響で孤独な学生生活を送る耀太と、モラハラ父親が支配する家で鬱屈した思いを抱える一華。2人はお互いに自分とは違う人物を名乗り、嘘をついたままメールのやり取りを重ねる。メールのやり取りのなかで、所々に漏れる本音が2人を繋ぎ、ラストでは2人の未来は明るいと思わせてくれる。

私は、このお話は現代版の塞翁が馬だなと思いました。
耀太は、コロナで学生生活はままならないし、お金もないし、友達に誘われたバイトで犯罪まがいのことをやらされるし、挙句の果てには人を殴って逮捕される。踏んだり蹴ったり、泣きっ面に蜂状態。これだけ聞くと、この先の人生なんて何も良いことがないように思えます。

でも、この犯罪まがいのバイトに巻き込まれなければ一華と出会うことはなかったし、逮捕されなければ部屋で犯罪組織の先輩に襲われて無事では済まなかったかもしれない。
そう考えると、一華の母親がロマンス詐欺に引っかかったことも含めて、一見不幸に思えるできごと全て、一華と耀太が出会う為に全て必要なことでした。

コロナに限らず、理不尽でついてなくて、つらい思いをすることはたくさんある。でもそれは、未来の幸福のために必要なことかもしれない。だから大丈夫だよ、というメッセージのように思います。


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