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アンチ下町人情

自分は下町人情のようなものが心底嫌いだ。

下町人情と聞くと、皆が思い浮かべるのは
ALWAYS三丁目の夕日のような、
夕飯時に地上波で流れるような、泥臭く色鮮やかで、から風の吹くようなものを思い浮かべる人が多いのかな?

ただその実は、粘度の高いコミュニティ、ネットワークの中に雁字搦めにされて、ゆっくりと瞼が落ちて、緩やかに首が締められてゆく、かなり引き伸ばされた窒息死のようなものだと私は感じる。

少なくとも、私が17年間生まれ育った街は、殆どの人間が他人の人生、他人の価値観の中を彷徨うゾンビ集団みたいな感じで、
自分の目クソ歯クソも構わずに、探偵ごっこと言わんばかりに、決まって他人の人生の噂、揚げ足取りばかりに興じている。

その内訳は、家業というものを自分の夢道半ばで継がされた人達。
結婚をし少子化に貢献することが、人生のゴールと考える人達。
右も左も分からないうちに孕んで/孕ませてしまいやむ無く母と父になってしまった人達。
理性の命令に従い、いやでもがまんして行うような義務が理想的といった、
儒教的道徳主義、カント的人格主義者の集まりなのです。

快楽を拒む侘しさを美徳とする思想
自分の人生を自由に生きていないという事が、
人の善性を蝕み、こんなにも人を嫌な奴にさせるのだと、上京して一人暮らしを始めてから身に染みている。

何か明確な誹謗中傷や、突然かまされたグーパンチより、家の階段が少し傾いている、一部分だけ軋んだ床材、そんな些細な違和感の積層が、人のかたくて大事な部分をじわじわと捻じ曲げてしまう。

その点都会は、誰も私の事を気にかけないから、本当に愛おしい。
自分のことに集中している、自分のことしか眼中に無い人が多い。
ガツガツと早足で横を通り過ぎていって、少し肩がぶつかっても目もくれない。
私はそれが、本当に好きで、涙が出るくらい安心する。というかよくそれで泣く。

だから私は都会が好き

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