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|独り言|異次元空間のチョット先を曲がった所にある奇妙な湯治場の流離譚。

それは、とある通りすがりの老婆からのそでから渡された紙切れに書かれたものだった……

わたしは、それが気になりながらもシカトして歩んでいた。何故か、不思議で不気味な雰囲気が、その一連のやり取りにまとわりついていたからです……

ふと、紙切れに目を向けると、変な漢字や、梵字、子どもの落書きのような不思議な図形が細かくも、乱雑に描かれていたのです……

わけもわからないなりに、それでも直感による閃きに赴くまま、紙切れのメッセージを読み取ろうとした結果……

なにやら不思議な通行路が思い浮かんだのです……………。

ふと、見廻すと………あたりは、いつの間にやら、祭ばやしが小気味よく響き渡り、祭りの期間中に開かれる屋台の群れが、そこかしこにひらかれていました………。

その祭りの喧騒の中、なにやら銀色のアメーバー、のような、スライムのようなヌメヌメベトベトした不思議な生き物の様なものがそこかしこに表れては消え、表れては消えを繰り返していたのです…………

不思議に、何故かそのアメーバみたいなのに
ついていきたい衝動に駆られ……トボトボと、
その、かれらの後をついて行ったのでした…

そこは……戦前からあるような、もう、とうの昔から使われていない古煉瓦で造られた崩れそうなトンネルの入り口でした。

恐る恐る真っ暗闇のトンネルの中を歩いていくと、怖かったけど、一粒、二粒凄く冷たい水滴が頭や首筋に落ちてきて、わたしは少しばかり恐怖しました……

かなり、長い間暗闇のなか洞窟らしきトンネルを歩いていき、やがて光が見え、何かの光景が目の前に広がっていきました……………。

それは……白日夢のような真っ白な光につつまれたひなびた山奥の村落のようなものでした
……………

江戸時代、……か、明治時代の様な日本の東北地方や、九州地方の山奥のような…………、一瞬、これが噂に聞いた隠れ里か、と思いひらめいたものです…………

幾つかの通りがあり、かなり年季の経ったのであろう古民家が立ち並び……不思議にも人の気配が一切ありません………まれに、格子窓の奥に老婆とおぼしき気配を見ますが、そのうちスッと消えていきます………

道道では何人かの子供達が子供用のお祭りのお面を被って、かごめかごめをやったり、縄跳び遊びをやっておりました……ただ、わたしが奇異に、不思議に思ったのは、その子供たちの中に大人や老人達が同じくお面を被って
、遊びに興じていたのです………まるでわたしこと、大人の気配など感じないとでも言わんばかりに……………それは、一種異様でもあり奇妙な光景でもあり、なにがしか白日夢のような幻想がありました…………

その通りの突き当り、T字路の奥に古い大きな酒蔵らしきものがあり、らしきものというのは、酒蔵らしからぬ再建建築の跡が見て取れるからです。

とりあえず酒蔵の門をくぐり薄暗い建物内に入っていきました。

わたしは………驚いて飛び退きました…冷や汗をかきながら……。

なんとそこは中世西洋式建築の重厚な内装になっており、10メートルを超える西洋の甲冑を着て巨大なサーベルを脇に突き立てどっしりとした巨人の西洋の騎士が重厚な椅子に座ってこちらを観察していたからです…………

何処から来たのか…………?

…………………………………………。

なんの目的で…………………?

…………………………………………。

貴様は、何者なのだ………?

…………………………………………。

西洋の騎士の質問、詰問は重々しいものでした……わたしは、尋問を受けているようで、何も答えることは出来ませんでした。

ただ、横にいた異様に身体の小さい老婆は口が軽いらしく、小声でぶつくさぶつくさと、なにやら独り言を呟いておりました…………

曰く……

……ここは……異世界の…湯治場なのじゃ……
行って帰ったものなど一人としておらぬ……魔道の湯治場なのじゃ……あらゆるもの、形あるもの、形なきもの全てが消えて無くなる………
恐ろしい湯治場なのじゃ………よほどの命知らずでも来ようとせん………地獄の温泉湯治場なのじゃ……

その後の事は、正直言って記憶が無くなっておりました……ですが、何故がその後記憶が跳び気づけば脱衣所に………

脱衣所には、ハッキリ言って異形の者たちが
、ひしめいておりました。
何人かは人間でしたが、大半の者たちは人としての形がなしていないというか、有るものは後頭部に角が生えていたり、また別の者には魚のような尾ビレが尻に生えていたりとか
みな、それぞれ互いの異様な姿に違和感を覚えていない様でした………

風呂場に入ったまでの記憶はなく、入って驚いた衝撃は覚えています。そこは……何故か、
古代ローマの公衆大浴場であったという事……
……………………………!!

浴場には、妖怪変化、怪物、化け物、恐竜、などなど………いろいろな存在が、あるものは身体を洗い、また、あるものは入浴し、ま た、あるものは温泉のお湯を飲み、飲泉で身体の健康を保っているようでした………………

わたしは、このままでは気が変になると想いつつも、ジッとあたりを観察しておりました
。湯治場の化け物達は、わりかし平和な化け物達でした。何も喋らず、何も話さずただ、淡々と湯に浸かり、身体を洗っておりました

その時でした……
何故か浴場の窓から……聞き慣れた、音が、リズム感が、音色が………
それは、最初に聞いた祭ばやしの音頭だったのです………

湯煙の中、わたしはいつしか記憶を失っておりました………あの、悪い夢を見、悪夢にうなされるようなうねりを感じたり、全身汗だくになって身体がバテてくるような感じは、ハッキリ覚えています。他は………あんまり……
あやふやというか………………


気づけば、最初の頃のように、いつしか着物姿でわたしはお祭りの場所でボーッと突っ立っておりました………

目の前のお好み焼きの親父さんに言われました。

「あんた!さっきからなんでそこでボーッとつったんてんの!! あんた気は確かよ?!」

あれは……何だったんでしょう?

夢まぼろしのようなものだったんでしょうか

それとも、記憶を失っていた間に見た錯覚かなんかだったのでしょうか?

ただコレだけは言えます。わたしは異次元のポケットのようなものの中に………スッポリと入っていたのだということを………………。


     ひとりごとおしまい。またね!




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