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馴れ初め編 最終回

こちら↓の続き


離さなければいけなくなるまで、私たちはずっと手を繋いでいた。

NYの夜からお互い恋愛感情があるのはあきらかだったが、
これからこの人とお付き合いするのだなと確信する決定打だった。

彼はその日の夜に東京を発ち関西に帰らなければいけない。

刻一刻と日が落ちていき、丸の内で夕飯を食べることになった。

そこでも色んな話をしたが、別れが近づいていて切ない雰囲気が漂う。

ディナーも終わり、新幹線の終電に近づいているため東京駅に向かう。


そこでこんなことがあった。

当時東京駅のあたりが工事中で歩行者通路になっている狭いところが前日の雨で完全に水たまりになっていた。
おそらく2~3mの長さを水たまりの中を歩かなくてはいけない。
そんなに深さはないものだが・・

「うわ、水没してる・・」

そう私が一瞬躊躇した瞬間、彼は私をさっと持ち上げた。

そのまま水たまりを渡ってくれる。

照れて「あー重かった」などと笑う。


そして東京駅の新幹線口に着いてしまう。
もう21時前で最終列車に近い。
別れがたい空気が付き纏う。

・・・ふとここで思った。

『あれ・・?めちゃくちゃいい雰囲気だけど何も言われてない・・付き合うとかなんとか・・遠距離なのにこのままあやふやに別れてしまってよいのだろうか・・』

なんでも白黒つけたい性分の私は我慢できずに最後に言う、

「この関係ってなんなの・・?」

彼は笑って、

「もし〇〇ちゃんが良ければ・・」

語尾を濁しつつだが、はっきりと恋人同士になった瞬間だった。

「もちろん!」と答えた。

最後に私の頭をちょっと強めに触った。
この仕草、彼の実家に行ったときお義父さんがお義母さんにしていた。
やはり親子なのだなと思う。

こうして将来夫になる彼は関西へ帰っていった。

まさかここから13年間遠距離恋愛を続けるとはこの時思いもよらなかったのだが・・。

ーこれが私たちの馴れ初めー

来月新婚旅行に行く。

もちろん行き先は・・・思い出のNYだ。

あの時のステーキレストランはまだあるだろうか。


おわり



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