腐敗した警察との闘い レベル・リッジ (2024年製作の映画)
Jeremy Saulnierが書いて製作も編集も監督もやっている。やはりSaulnierが書いて監督したBlueRuin(2013)やGreenRoom(2015)をよく覚えている。独特でギリギリで苛烈なアクションスリラー。主要人物を絶対絶命or四面楚歌なシチュエーションへ落とし込んで、はらはらどきどきさせるのが巧い。本作でもその本領が発揮された。
現代劇だがプロットは西部劇のそれ。
足は馬ではなく自転車だったが、テリー(Aaron Pierre)は通りすがりのよそ者である。拘留されている従弟の保釈金を払いトラックとボートを買うために寄った町だったが、腐敗した警察に難癖をつけられて金を奪われる。
細部は解りにくかったが、町は署長(ドンジョンソン)が民事資産を没収をしまくって私利をむさぼり、悪事を隠蔽している。
テリーは一匹狼だったが、郡書記官秘書のサマー(アナソフィアロブ)が隠密ながら味方をしてくれる。が、金を奪われ権高な態度で足蹴にされたあげく、従弟は殴り殺されるし、サマーも薬打たれて尿検査させられるし、しまいに謀略で撃ってくるし、温柔なテリーもついに堪忍袋の緒が切れた。
テリーはいわゆるマーシャルアーツの達人。非武装で、敵の武装を解除し無力化する訓練を叩き込まれた特殊部隊の出身者である。併せて敵が警察であることが映画Rebel Ridgeのキーポイント。テリーは敵を斃すことも傷つけることもできない。だから殺そうとして撃ってくる警官隊にたいして、煙幕はって遅延させるかビーンバッグ弾でスタンさせるか徒手空拳で失神させるか──で応戦するという八面六臂&一騎当千の活躍ぶりだった。
話の持って行き方といい、シチュエーションづくりといい、たたみかける演出といい、職人技だった。
役者ではAaron Pierreの魅力爆発という感じ。巨躯でムキムキで眼光炯炯、ほれぼれするような男だった。その野獣値に対してアナソフィアロブのお嬢値が楽しいアンバランスを提供した。”セルピコ”役の黒人女警官も好印象だった。
ドンジョンソンや白人警官らもしっかり憎々しいPoor Whiteを務めあげた。
映画の設定とはいえここまで腐敗しているものだろうか──という疑問はあった。
が、かえりみて、こんなものかもしれない、と思うところもあった。
(時事をむりやり映画レビューにくっつけている、わけではなく、あるていど「なるほど」にもっていける話だと思って挙げるのだが)おりしも兵庫県知事の裸の王様ぶりが毎日ニュースを賑わせている(2024/09)がパワハラをやっているのは兵庫県知事ひとりだけだと思いますか。
個人的にはどこの知事も五十歩百歩だと思う。知事と同等ポストにある人間もおなじで、すなわちあれは権力者のパターンであり、氷山の一角と見るのが現実的だ。
であるならば、それらの俗物の配下にいて謀殺された、あるいは死まで至らずとも謀略に遭って失脚させられた人なんか幾らでもいるに違いない。
たいがい誰でも上司と揉めた経験がある。とすれば、その相手が悪ければ、死や一生のトラウマになってしまうことも容易に想像できる。
ひるがえって権力者につけこまれ、後戻りできない陥穽(おとしあな)に入り込んでしまう──ことは民主国家でも有り得るor有り触れたことではなかろうか。
わたしたちは意外に他者の悪意に晒されているものだが、現実世界でこれらの登場人物の誰になるのかは選べる。──という話。
主役はジョンボイエガが演じる予定だったのが降板でAaron Pierreになったそうだ。降板からの代役選びとCOVID-19によって、2020年に開始されたプロジェクトだったのがここまで遷延した、という。
imdb7.1、RottenTomatoes94%と82%。
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