好奇心から探究、そして課題解決へ
こんにちは、システムデザイン研究所(SDL)のともです。
20世紀は科学技術の世紀であり、人類がそれによって様々な恩恵を受けたことは衆目の一致するところだと思います。様々な工業製品、そして大量生産することによって起こる価格の大幅な低減は人の暮らしを根底から変えました。これらの大きな変化は、多くの人々が発明や発見を重ねることによって得られた結果です。エジソンのように発明王と称される人もいますし、アインシュタインが見出した相対性理論のように極めて基礎的な研究成果が文化や社会に大きく影響を与えたものもあります。
でも不思議なものです。こうした発明や発見(、そしてイノベーション)はどのように人間の中で行われているのでしょうか。
こうした疑問に対する考え方として、人にはシステム思考に基づく発明発見の回路が備わっているという説があります。それを平易に示してくれている書物と出会ったのでここに紹介します。
ザ・パターン・シーカー(サイモン・バロン=コーエン著、篠田里佐訳、岡本卓・和田秀樹監訳)という著作で、その中にこのような記述があります。
言われてみればその通りです。様々な知覚機能で人間は事象を捉えることができます。しかし、そうした事象から何らかの出力(ここでは発明や発見)を演繹するためには関数的な何かがなければ、ただの情報の寄せ集めに終わってしまいます。疑問を持ち、その疑問に対する仮説をたて、その検証を行い、修正と改良を繰り返す、そのプロセスが全ての人間に備わっていると説きます。
シンプルですが、とてもわかりやすく、毎日の暮らしの中で皆が使っている能力だと言えるでしょう。
しかし、同時にこうも思います。
「そうはいうものの、エジソンみたいに電球発明できないよ。」とか、「誰でもノーベル賞なんてわけにいかないでしょ。」
そりゃあそうですよね。無理はありません。皆がノーベル賞級の発見を進めたら、ノーベル賞財団もうれしい悲鳴を超えて本当に悲鳴をあげそうです(笑)。
ちょっと俯瞰的に見てみましょう。歴史を紐解いてみると、ガリレオ・ガリレイ、アイザック・ニュートン、そしてレオナルド・ダビンチなど、それぞれの時代に発明発見を行なった人がいて、それらを活用した工業製品が社会に広がり、生活に変化が起き、経済や政治そして文化にまで影響が現れます。新たな発明や発見を受け止め、それを咀嚼して利用したりするという作業も、システム化された発見プロセスの一つという見方もできるのではないでしょうか。それぞれの時代に発明されたものを手に取り使ってみる、という作業はアクティブな創造性の高い活動だと言えそうです。
私たちレヴィは、構造化による創造性の高いコミュニケーション手法の普及と実践を推進すべく日々活動をしているのですが、システム思考実践のワークショップなどを見ていると、お客様の中でも、水を得た魚のようにどんどんと構造化を進めていく方もいらっしゃれば、「どうも苦手だなあ、なんか上手くいかないなあ」と少し苦しんでしまう方もいらっしゃいます。おそらく構造化の得手不得手はあると思われます。(皆がエジソンにはなれないのは明快ですし、そのようなことを望んでいる人もいないと思います。)面白いのは、そうしたちょっとした差がある中でも丹念にグループワークを続けていると、構造化が得意な方がシステム思考的な構造を描いてくださった瞬間に、不得手な方々も、「なるほど、そういうことなのだなあ」と理解が進み、そうした創造的なコミュニケーションに取り組んでいかれる様子を見ることができます。
ザ・パターン・シーカーの中で著者は、ヒトの能力には、システム化能力を図るSQ (Systematic Intelligence Quotient:バロン=コーエンが開発した「システム化指数」)によって測られるシステム化能力と、EQ(Emotional Intelligence Quotient:他者の感情を察知し、対応をとる能力)が内在していると説明しています。この理論を当てはめれば、グループの中で創造的な活動を高めていくような構造は以下の図に示すような流れであれば理想的だと言えるでしょう。
このような構造であれば、それぞれの立場の違いや得手不得手をむしろ相補的に扱うことができるはずです。大切なのは、それぞれがこういうシステム化されたモデルの中で創造的活動に参加しているという自覚なのだと思います。
21世紀に生きている私たちは、先述の通り20世紀の遺産を受けてとても快適な暮らしを実現しています。その傍らで、地球温暖化などの大きな課題に直面しています。もはや時間の猶予はありません。皆が考え、対話し、モデル化を図ることで、人類の持つシステム化能力を最大化するべき時期にいるのだと考えています。その一翼を担えるよう私たちはコラボレーションツールBalusを開発提供しています。
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